マッチングアプリで個人情報を守る方法——会う前にやるべき安全対策の全部
マッチングアプリで会った相手が、後日職場に電話をかけてきた——友人から聞いたこの話で、私はプロフィールの書き方を全部見直した。個人情報が漏れるのは、ほとんどが「自分から出している」ケースだ。何を出して、何を隠すべきか。全部書く。
会った後に会社にクレームが来た友人の話
友人のMさん(28歳・広告代理店勤務・女性)が、マッチングアプリで出会った男性と1回だけデートをした。
「普通の人だった」と言っていた。2時間飲んで、「またどこか行きましょう」で別れた。彼女は「2回目はないかな」と思いながら帰った。特にトラブルもなかった。
3週間後、Mさんの会社に電話がかかってきた。「○○さんはそちらで働いていますか?」という問い合わせだった。
Mさんは、デートのときに勤めている会社の名前を言っていた。業界の話になって、「どちらにいらっしゃるんですか?」と聞かれ、普通に答えた。帰り道に名刺を渡していた。
後日、その男性からMさんのアプリアカウントにメッセージが来た。「会ってくれないなら、職場に何度でも電話する」。
Mさんはすぐに弁護士に相談して、警察にも届け出た。結果として被害は最小限に抑えられたが、「あの名刺さえ渡さなければ」と今でも言っている。
個人情報は、会ってから守るのでは遅い。
マッチングアプリで個人情報が漏れるケース
個人情報が特定・漏れるパターンは大きく4種類ある。
①フルネーム・職場の直接的な提供
デートの席で名刺を渡す、勤務先の会社名を言う、フルネームを名乗る——これらは直接情報を提供している。一度渡した情報は回収できない。
②SNSアカウントから芋づる式に特定される
Instagramのアカウントを教えると、そこから職場・居住エリア・よく行く店・友人関係が特定される可能性がある。「写真に位置情報が含まれている」「タグ付けされた投稿で職場や学校の制服・ロゴが映っている」ケースも多い。Instagramの「スポット」機能で、通っているジムや行きつけのカフェの地図が表示されることもある。
③写真のEXIFデータ
スマートフォンで撮影した写真には、撮影日時・機種情報・場合によってはGPS座標が埋め込まれている(EXIFデータ)。プロフィールにアップロードする際、多くのアプリはこのデータを削除するが、LINEで直接画像を送る場合はデータが残ることがある。
④会話の中からの推測
「○○線を使っている」「△△区に住んでいる」「○○大学出身」「□□系の会社に勤めている」——これらの情報をバラバラに話していると、組み合わせて居住地・職場を絞り込まれる可能性がある。1つ1つは大丈夫でも、3〜4個重なると特定できてしまう。
プロフィールで公開すべき情報・しない情報
公開していい情報
・年齢(大体の年代でOK)
・趣味・好きなもの(具体的でOK。ただし「毎週○○公園でランニング」は居住地の絞り込みに使われる)
・仕事のジャンル(「広告関連」「IT系」程度の業界名はOK)
・居住エリア(都道府県・政令市レベルまで。「渋谷区在住」は絞り込まれやすい)
公開しない方がいい情報
・勤務先の会社名・学校名(業界名だけで十分)
・最寄り駅(「○○駅が最寄り」は居住エリアを限定する)
・フルネーム(名前は下の名前だけ、またはニックネームで)
・顔がはっきり映った写真でかつ背景に特定できる建物が映っているもの
プロフィール写真の注意点
Googleの画像逆検索にかけると、同じ写真がSNSで使われているか確認できる。アプリ専用の写真を用意する、または普段SNSで使っている写真と別のカットを使う。マッチングアプリのプロフィール写真を使うと、そこから本名SNSにたどり着かれる可能性がある。
SNSとの連携リスク
Facebook連携の落とし穴
PairsはFacebook連携でのログインが可能(現在は電話番号登録も可)。Facebook連携を選ぶと、友達リストに表示されるリスクがある。「知り合いかも」に出てくることで、職場の同僚・知人にアプリ利用がバレるケースが報告されている。
Instagram連携の注意
withやタップルはInstagramとの連携機能を持つ。「自分のインスタを見てほしい」という気持ちから連携する人もいるが、インスタには位置情報付きの投稿・顔出し写真・友人関係が凝縮されている。連携しないか、プロフィール・投稿を最小限にした別アカウントを用意した方が安全。
知り合いにバレるケース
・Facebook連携で「知り合いかも」に表示される
・使用写真が同一で、別のSNSから特定される
・共通の友人が同じアプリを使っていて、自分のプロフィールを見られる
・位置情報をオンにしていると「近くにいるユーザー」として表示されることがある
アプリに登録する前に「このアプリを使っていることを職場・家族に知られても問題ないか」を確認する。問題ある場合は、Facebook連携を使わず、写真の選定に気を使う。
会う前の個人情報保護チェックリスト
初回デートの前に確認したい項目。
相手について確認する
□ 相手のフルネームをSNSで検索してみた(本当にその人物か確認)
□ プロフィール写真をGoogle画像検索にかけた(偽アカウントでないか確認)
□ 電話番号を知っている場合、迷惑電話チェッカーで確認した
待ち合わせ場所の選び方
□ 人通りの多い駅・カフェ・明るいレストランを選んだ
□ 自分の自宅・職場から遠い場所を選んだ(生活圏を知られない)
□ 最寄り駅を教えていない(「○○あたりで待ち合わせましょう」程度に抑えた)
デート中の情報管理
□ 名刺を渡さない(職場の連絡先を教えない)
□ 勤務先の会社名・部署名を言わない
□ 帰り道に同じ方向に帰らない(最寄り駅を知られない)
□ 自宅近くのコンビニ・チェーン店に連れて行かない
デート後の確認
□ 相手のSNSに自分がタグ付けされていないか確認
□ 帰り道に誰かに後ろを付いてきていないか確認
万が一の時の対処法
ストーキング被害に遭ったら
まず証拠を保存する。メッセージのスクリーンショット、着信履歴、目撃した状況のメモ(日時・場所・状況)。
「相手にブロック・無視で対応」は基本的に正しいが、電話を何度もかけてくる・職場に現れるなどの行為はストーカー規制法の対象になる。その場合は警察署に相談、または「警察安全相談電話 #9110」へ。
会社への不審な連絡があったら
会社の上司または総務部門に報告する。「マッチングアプリで知り合った人物からの可能性がある」と正直に伝える。事実を隠すと会社側も対応できない。弁護士への相談も、早ければ早いほど選択肢が広がる。
相談先まとめ
・ストーカー被害:警察安全相談電話 #9110
・DV・ハラスメント:配偶者暴力相談支援センター(各都道府県)
・法的対応が必要な場合:法テラス(0570-078374)
個人情報は、一度渡したら取り戻せない。だから最初から渡さない。それだけで、大半のリスクは消える。
実際にやってしまいがちなNG行動と改善例
「そんなこと言わなければよかった」と後から気づく情報漏洩は、特定のシチュエーションに集中している。会話の流れで自然に出てしまうからこそ、あらかじめ「ここは言わない」と決めておく。
NGシーン1:仕事の話になった時
NG:「渋谷の広告代理店に勤めてて、チームは5人くらいで——今のクライアントがかなり大手で、そこのキャンペーンを担当してるんですよ。会社名知ってますか、○○です」
→ 業界・規模・会社名・仕事内容が一気に出ている。
改善:「広告関係の仕事をしてます。最近のプロジェクトが面白くて」と業界だけ言う。相手が「どんな仕事?」と聞いてきたら、内容は話しつつ会社名は出さない。「会社名はちょっと……(笑)」と言える空気を最初から作っておく。
NGシーン2:帰り道が同じ方向だった時
NG:「あ、私も○○線なんです!じゃあ途中まで一緒に行きましょうか」
→ 最寄り路線が伝わる。駅が同じ場合、ほぼ居住エリアが特定される。
改善:同じ方向でも、「先に用事があるので」と別れる。もし一緒に乗ることになっても、自分が降りる駅の1〜2駅前で降りる習慣をつけておく。「あ、ここで乗り換えるんで」と流す。
NGシーン3:SNSのIDを聞かれた時
NG:すぐに本名のInstagramやX(旧Twitter)を教える。
→ 本名アカウントには、職場・友人・生活圏の情報が詰まっている。
改善:「LINE交換してからにしてますね」と一旦保留にする。関係が深まってから教えるか、アプリ用のサブアカウントを持つ。
情報は、一度出たら消えない。「この人なら大丈夫」と感じた時こそ、少し立ち止まる。その一拍が、後の後悔を防ぐ。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。