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恋愛体験談Pairs

喧嘩もなく、浮気もなく、コーヒーを飲みながら別れた話

最後はドトールだった。憎しみも未練も叫びもなく、ただ二人でブレンドコーヒーを飲みながら「もう終わりにしよう」と言い合った。あの静かさが、一番つらかった。

28歳・女性の体験
·橘みあ·5分で読める

最後の日のことを、人に話すのが難しい。


「別れたの? なんで?」と聞かれると、答えに詰まる。喧嘩がひどかったわけじゃない。浮気があったわけでもない。ただ、終わりにした。二人で、静かに。


ShoくんとはPairsで出会った。28歳の冬に登録して、翌月にマッチした。1回目のデートで話が途切れなくて、2回目のデートで手が触れて、3ヶ月後に付き合った。1年と2ヶ月、一緒にいた。


問題があったとすれば、問題がなさすぎた、ということかもしれない。


喧嘩は月に1回くらいあった。でも激しくない。お互い声を荒げない。冷静に話して、冷静に解決して、翌日には普通に戻っている。良い関係、という言葉が浮かぶ。でもどこかで「これが好きな人と過ごすということなんだろうか」という疑問がくすぶっていた。


Shoくんのことは好きだった。今でも好きだったと思う。でもこの人と結婚するとは思えなかった。5年先、10年先に、隣にいる人の顔を想像しようとして、その顔がShoくんじゃなかった。


それをいつから感じていたのか。わからない。でも夏を過ぎた頃には、うっすらとあった気がする。


言い出したのは私だった。


11月の土曜の午後。Shoくんと待ち合わせた場所は、いつもの恵比寿じゃなくて、中目黒のドトールだった。意図したわけじゃないけど、チェーンの、何でもない場所を選んだ。


ブレンドコーヒーのMサイズを二つ頼んだ。いつもShoくんが頼む。今日も同じだった。


「話したいことがあって」


「うん」


すでにわかってたんだと思う。来る前から。Shoくんは驚かなかった。コーヒーのカップを両手で持ったまま、こっちを見ていた。


「私、この先のこと、ちゃんと一緒に考えられないなって思って」


「……どのくらい前から?」


「夏くらいから、少し」


「言えなかった?」


「うん……。言えなかった。ごめん」


Shoくんは少しの間、コーヒーを見つめていた。外では銀杏が黄色くなっていた。


「俺も、薄々気づいてた」


「え」


「なんか、最近のあなたが遠かった気がして。気のせいかと思ってたけど」


遠かった、という言葉が、予想外に刺さった。気づいていたんだ。気づいていて、何も言わずにいてくれたんだ。その優しさが、一番困った。


「怒ってる?」


聞いたら、Shoくんは少し考えて、「怒ってない」と言った。


「……あなたが言い出してくれてよかったと思う。俺には言えなかったから」


「なんで?」


「あなたが傷ついたら嫌だから、かな」


傷つくのは私の方なのに、私を傷つけたくなかったというその言葉が、どうしても引っかかった。この人は最後まで優しい。だから難しかったんだと、今になってわかった。


コーヒーが冷めた。窓の外で自転車が走っていった。ドトールの店内に有線が流れていた。松任谷由実の古い曲。


「元気でいてください」


Shoくんが言った。


「Shoくんも」


「うん」


立って、コートを着た。二人で出口に向かった。外は冷えていた。


「じゃあ」


「うん」


それだけだった。


帰り道の目黒川沿い。11月の枯れ葉が川面に落ちていた。


泣くかと思ったら、泣かなかった。ただ、足が重かった。コートのポケットに手を突っ込んで、ゆっくり歩いた。


ドラマみたいな別れじゃなかった。罵り合いも、嗚咽も、劇的な言葉もなかった。


それがかえって、長く、静かに、残った。


嵐は過ぎれば忘れられる。でも凪の別れは、波紋みたいにじわじわ広がって、しばらくどこかで揺れている。


1年2ヶ月を丁寧に終わらせること。それは喧嘩で終わらせることより、ずっと大人で、ずっと難しかった。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

このテーマを読む:別れ・失恋体験談

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