3ヶ月後に「ごめん、急に消えて」とLINEが来た。私には返す言葉がなかった
フェードアウトされた彼から、3ヶ月後に謝罪のLINEが届いた。怒ることも泣くこともできなくて、ただ複雑だった。
「急に連絡なくなってごめん。元気にしてる?」
木曜の夜11時、そのLINEが来た。差出人は田村という名前。着信音が鳴るまで、3ヶ月間忘れていたことに気づいた。
忘れていた、は嘘かもしれない。3ヶ月前、最初の2週間は普通に傷ついた。でもその後、もっと面白い人が現れたし、仕事も忙しくなって、気づいたら記憶の引き出しの奥に入っていた。完全に忘れたわけじゃないけど、引っ張り出してまで傷つきたくなかった。
田村とはwithで出会った。初デートは三軒茶屋の小さなバー。2回目は中目黒の川沿いを歩いた。3回目は彼の家で鍋を食べた。次また会おうと言って別れた日から、連絡が途絶えた。
LINEを既読にしたまま、スマホを置いた。
返しなよ、と一回思った。でも何を返せばいいのかわからなかった。怒るべきなんだろうか。でも今さら怒る気力もない。許す、という感じでもない。「元気だよ」と返すのが正解なのかもしれないけど、正解を返したくない気分だった。
次の日の昼休み、会社の給湯室でコーヒーを入れながら、そのLINEのことを考えていた。なんでこのタイミングで謝ってきたんだろう。3ヶ月経って急に。何かあったのか。罪悪感が積み重なったのか。それとも新しい恋愛がうまくいかなくて、過去の人に連絡しているのか。
謝罪には動機がある。動機によって、その謝罪の意味が変わる。田村の動機が何なのか、わからなかった。
夜、返信した。
「元気です。急にどうした?」
短い返事が来た。「連絡なくしてごめん。ちゃんと話せなかったことを後悔してた」
ちゃんと話す機会なんて、3ヶ月前にあったはずだった。でも今更それを言っても意味がない。
「なんで消えたの」
聞いた。
少し時間が空いて、長めの返信が来た。「正直に言うと、別に好きな人ができたわけじゃなかった。ただなんか、真剣に考えたら怖くなった。このまま進んだら、うまくいかなかった時に傷つかせるって。だから逃げた。最悪の選択だったと今は思う」
読んで、スマホを置いた。
怒りが来ると思ったけど、来なかった。胸のどこかがじわっとした。怒りとも悲しみとも違う、うまく名前のつけられない感覚。
「傷つかせるのが怖くて逃げた結果、傷つけてるじゃん」
送った。
「……そうだよな。最悪だった」
「最悪だったね」
「怒ってる?」
少し考えた。怒ってるかどうか。わからない。怒ってないとは言えないけど、怒ってるとも言いにくい。
「怒ってるかどうかわからない。複雑すぎて感情が追いつかない」
「そうか」
「でも謝ってくれたのは、意外とありがたかった。ずっとなんだったんだろうって思ってたから」
「そうか」
「もうちょっと早ければよかったけど」
「……ほんとそうだな」
その後、しばらく他愛ない話をした。互いに元気かどうか、仕事どうかとか。でも1時間もしないうちに話題が尽きた。
「じゃあ」
「うん、じゃあ」
それで終わった。
次の日の朝、起きたらそのLINEのことは頭になかった。コーヒーを作って、窓を開けて、今日持って行く弁当のことを考えていた。
後から振り返って、謝罪のLINEが来てよかったかどうかを考えた。よかったのかもしれない。少なくとも、なぜ消えたのかがわかった。理由がわかれば、引きずるものが少し減る。
でも謝罪は傷を修復しない。傷が終わったことを確認させてくれる手続きでしかない。
田村のことは、もう特別好きでも嫌いでもない。でも3ヶ月前の中目黒の川沿いの風は、今でも時々思い出す。あの夜だけは、良い夜だった。それだけは変わらない。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。