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恋愛体験談エッセイPairs

猫と犬の飼い主が初デートで写真を見せ合った夜、迷っていた

Pairsのプロフィールに「茶トラのシナモンと暮らしています」と書いたら、「うちはポメラニアンのきなこです」と返ってきた。スパイスつながり。ペットの話だけで3日が過ぎ、初デートに持参したのはスマホの写真フォルダだった。Pairs体験談。

25歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。猫の話だけで2時間話すとは思わなかったけど。


「茶トラの猫と暮らしています。名前はシナモン。性格は塩対応。」


それだけ。長々と自己紹介を書くのが恥ずかしくて、好きなものを3つ並べた中の一つ。食べ物と読書と、シナモンのこと。


マッチして最初に来たメッセージが、これだった。


「シナモン、めちゃくちゃ名前いい。うちはポメラニアンのきなこです。シナモンときなこ、スパイスつながりですね」


思わず声が出た。笑いが。


「スパイスつながり気づいたんですか笑 すごい」


「毎晩考えてるんで笑 犬の話できる人、なかなかいなくて」


「お気持ちわかります。猫の話は人を選ぶ」


「飼ってない人には伝わらないやつですよね。『うちの子、今日ここで寝てて』って写真送っても温度差が……」


「わかる!! めちゃくちゃわかります!!」


その夜だけで、LINEのトーク欄が50件を超えた。シナモンがご飯を無視した話。きなこが靴を食べた話。動物病院で「うちの子だけ体重減らない」と嘆いた話。ペット可のマンションを探したら家賃が2万上がった話。


彼——Ryoさん、26歳、三軒茶屋在住——は、文章のテンポが自分と似ていた。返信が速い。絵文字は少なめ。でも「笑」がちょくちょく入る。自分と同じ。


3日目の夜。


「会ってみませんか」


直球だった。こっちが踏み出すより先に来た。


「行きます」


0.3秒で返した。


吉祥寺の井の頭公園


待ち合わせは吉祥寺の駅前。土曜の午後2時。12月の空気が澄んでいて、コートのポケットに手を突っ込んで改札口で待っていたら、黒いダウンを着た人が足早に来た。プロフィール写真より少し背が高かった。目が優しい形をしている。


「シナモンのお母さんですか」


彼が言った。


「きなこのお父さんですか」


握手のかわりにそう言い合って、二人で笑った。吉祥寺の人混みの中で、見知らぬ者同士とは思えないくらい自然に。


井の頭公園の脇を歩きながら、「じゃあ」と彼がスマホを取り出した。「この子が問題児のきなこです」。画面を向けてくれた。


白とクリーム色のふわふわ。黒目がちな丸い目。


「かわいい……」


「でしょ。でもこれが昨日まで——」と言いながら、次の写真に切り替えた。ボロボロに噛み千切られたスニーカー。CONVERSE。「新品でした。先週買ったばっかり」


「それは……被害者ですね」


「完全に被害者。でも怒れないんですよね。目がかわいすぎて」


「理解できます。シナモンも昨日、夜中の2時に起こしてきて。ご飯皿が空になってて。でも追加で出したら、ちょっとだけ食べて去っていって」


「猫って支配者ですよね。家の中で一番偉い」


「完全に偉い。私の布団で寝てるし」


「きなこも同じ。俺の枕を占領してる。でも払いのけると傷つく顔されるから……」


「……追い出せない」


「追い出せない」


声が重なった。二人同時に。


井の頭公園の池のそばのベンチに座って、1時間くらいそのまま写真を見せ合った。シナモンが窓際で日向ぼっこしてる写真。きなこが泥だらけで帰ってきた写真。シナモンが段ボール箱に入って満足してる写真。きなこが散歩中に他の犬を無視して花を嗅いでいる写真。


「この顔。わかります、この顔」


「そうそう、この感じ。撮りたくなる顔するんですよね、絶妙なタイミングで」


いつの間にか、コートの袖と袖が触れる距離になっていた。ベンチに横並びで、スマホを覗き込む姿勢のまま、気づいたら肩が近い。12月の公園の冷気の中で、その距離だけが少し温かかった。シナモンときなこの写真を交互に見ながら、声が出るたびに肩が揺れた。その揺れが伝わってくる。


ペットの話から本音へ


日が傾いてきた。吉祥寺の空が薄いオレンジになっていた。コートの袖が触れる距離にいることに気づいたのは、公園を出て駅に向かう頃だった。


「あの」


Ryoさんが言った。


「シナモンと、きなこ、実際に対面させてみたいですね。いつか」


喉が乾いた。急に。コンビニでコーヒーを買っておけばよかった、と関係ないことを思った。


「……犬と猫って、うまくいくんですかね」


「うちのきなこ、猫に弱いんですよ。実は。近所の猫に睨まれて逃げた実績がある」


「シナモンの方が強そう……」


「なら大丈夫ですね」


笑って、また歩いた。吉祥寺の駅前の雑踏が近づいてくる。人の声とBGMが混ざり合う中を、二人で並んで歩いた。ペットの話だけで一日が終わりそうになっていた。でも、それが全然嫌じゃなかった。


駅の改札で別れる前、彼が言った。「また来週、会えますか」。今度は声が低かった。さっきまでのペット話の時とは、少し違うトーン。「シナモンに聞いてみます」「じゃあきなこも聞いておく」。どちらも答えを決めていた。たぶん最初から。ペットをダシにして、ちゃんと本音を言っていた。


その後、何度か会ううちに、シナモンがきなこに初めて会った日のことを、私はずっと楽しみにしていた。きなこが先に飛びつくのか、シナモンが一睨みするのか。来週また会う約束をしながら、正直のところ、ペットの対面より人間の自分たちの方が先に距離を縮めてしまっている気がした。それはそれで、いいことだと思った。


2時間で全部わかったのに、まだ会いたかった。

よくある質問

Pairsのプロフィールにどんなことを書いたら彼からメッセージが来たのですか?
「茶トラの猫と暮らしています。名前はシナモン。性格は塩対応。」と書いた一文でした。長々と書くのが恥ずかしく、好きなものを3つ並べた中の一つだったといいます。
初デートには何を持っていったのですか?
スマホの写真フォルダでした。猫と犬の写真を見せ合う初デートで、ペットの話だけで3日が過ぎた後の再会だったといいます。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#Pairs#ペット###共通点

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