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恋愛体験談Pairs

猫と犬の飼い主が初デートで写真を見せ合った話

プロフィールに書いた猫の一言が、彼からの最初のメッセージを引き寄せた。ペットの話だけで3日が過ぎた。初デートに持参したのは、スマホの写真フォルダだった。

25歳・女性の体験
·橘みあ·5分で読める

Pairsのプロフィールに書いた一文が、すべての始まりだった。


「茶トラの猫と暮らしています。名前はシナモン。性格は塩対応。」


それだけ。長々と自己紹介を書くのが恥ずかしくて、好きなものを3つ並べた中の一つ。食べ物と読書と、シナモンのこと。


マッチして最初に来たメッセージが、これだった。


「シナモン、めちゃくちゃ名前いい。うちはポメラニアンのきなこです。シナモンときなこ、スパイスつながりですね」


思わず声が出た。笑いが。


「スパイスつながり気づいたんですか笑 すごい」


「毎晩考えてるんで笑 犬の話できる人、なかなかいなくて」


「お気持ちわかります。猫の話は人を選ぶ」


「飼ってない人には伝わらないやつですよね。『うちの子、今日ここで寝てて』って写真送っても温度差が……」


「わかる!! めちゃくちゃわかります!!」


その夜だけで、LINEのトーク欄が50件を超えた。シナモンがご飯を無視した話。きなこが靴を食べた話。動物病院で「うちの子だけ体重減らない」と嘆いた話。ペット可のマンションを探したら家賃が2万上がった話。


彼——Ryoさん、26歳、三軒茶屋在住——は、文章のテンポが自分と似ていた。返信が速い。絵文字は少なめ。でも「笑」がちょくちょく入る。自分と同じ。


3日目の夜。


「会ってみませんか」


直球だった。こっちが踏み出すより先に来た。


「行きます」


0.3秒で返した。


待ち合わせは吉祥寺の駅前。土曜の午後2時。12月の空気が澄んでいて、コートのポケットに手を突っ込んで改札口で待っていたら、黒いダウンを着た人が足早に来た。プロフィール写真より少し背が高かった。目が優しい形をしている。


「シナモンのお母さんですか」


彼が言った。


「きなこのお父さんですか」


握手のかわりにそう言い合って、二人で笑った。吉祥寺の人混みの中で、見知らぬ者同士とは思えないくらい自然に。


井の頭公園の脇を歩きながら、「じゃあ」と彼がスマホを取り出した。「この子が問題児のきなこです」。画面を向けてくれた。


白とクリーム色のふわふわ。黒目がちな丸い目。


「かわいい……」


「でしょ。でもこれが昨日まで——」と言いながら、次の写真に切り替えた。ボロボロに噛み千切られたスニーカー。CONVERSE。「新品でした。先週買ったばっかり」


「それは……被害者ですね」


「完全に被害者。でも怒れないんですよね。目がかわいすぎて」


「理解できます。シナモンも昨日、夜中の2時に起こしてきて。ご飯皿が空になってて。でも追加で出したら、ちょっとだけ食べて去っていって」


「猫って支配者ですよね。家の中で一番偉い」


「完全に偉い。私の布団で寝てるし」


「きなこも同じ。俺の枕を占領してる。でも払いのけると傷つく顔されるから……」


「……追い出せない」


「追い出せない」


声が重なった。二人同時に。


井の頭公園の池のそばのベンチに座って、1時間くらいそのまま写真を見せ合った。シナモンが窓際で日向ぼっこしてる写真。きなこが泥だらけで帰ってきた写真。シナモンが段ボール箱に入って満足してる写真。きなこが散歩中に他の犬を無視して花を嗅いでいる写真。


「この顔。わかります、この顔」


「そうそう、この感じ。撮りたくなる顔するんですよね、絶妙なタイミングで」


日が傾いてきた。吉祥寺の空が薄いオレンジになっていた。コートの袖が触れる距離にいることに気づいたのは、公園を出て駅に向かう頃だった。


自分から近づいたんだろうか。向こうが近いのか。わからなかった。ただ、寒かった。それだけ確かだった。


「あの」


Ryoさんが言った。


「シナモンと、きなこ、実際に対面させてみたいですね。いつか」


喉が乾いた。急に。コンビニでコーヒーを買っておけばよかった、と関係ないことを思った。


「……犬と猫って、うまくいくんですかね」


「うちのきなこ、猫に弱いんですよ。実は。近所の猫に睨まれて逃げた実績がある」


「シナモンの方が強そう……」


「なら大丈夫ですね」


笑って、また歩いた。


駅の改札で別れる前、彼が言った。「また来週、会えますか」。今度は声が低かった。さっきまでのペット話の時とは、少し違うトーン。


首の後ろがじわっと熱くなった。


「シナモンに聞いてみます」


「じゃあきなこも聞いておく」


どちらも答えを決めていた。たぶん最初から。ペットをダシにして、ちゃんと本音を言っていた。


シナモンはきなこに会ったか。まだ会っていない。でも私たちは、その週の土曜も、その次の土曜も会った。


動物好きは、嘘をつかない。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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