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恋愛体験談エッセイwith

3回目のデートで泣いてしまった。彼がしてくれたことが忘れられない

withで出会って3回目、中目黒のカフェで父親の話が出て、気づいたら泣いていた。最悪のタイミングだと思った。でも彼は何も言わずにハンカチを差し出して、ただ聞いてくれた。あの沈黙で、好きになった。3回目のデート、私の話。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

泣くつもりなんて、なかった。


3回目のデートだった。withで出会って、1回目は恵比寿でご飯、2回目は下北沢をぶらぶら、3回目は中目黒の川沿いのカフェ。だんだん打ち解けてきていて、この日はもうほぼ普通に話せていた。


彼——ケンタくん、28歳——は聞くのが上手な人だった。自分から話すというより、こっちの話を引き出す感じ。「それで?」「どうしたんですか」と相槌が自然で、話している側が気持ちよくなるタイプ。


カフェモカを飲みながら、仕事の話をしていた。仕事の話から、上司の話になって、上司の話から、なぜか父親の話になった。


「うちの父も、こだわりが強くて……昔から」


そこまで言って、詰まった。


父は去年の秋に死んだ。


言わなきゃよかったと思った。でももう口に出してしまった。会ったばかりの人に、3回目のデートで話すことじゃない。気まずくなる。重くなる。彼に申し訳ない。


「……あの、ごめんなさい」


謝ろうとしたら、目の端が熱くなった。


だめだ、と思った時にはもう遅かった。


涙が出た。声は出なかった。でもカフェモカのカップを持つ手が震えて、テーブルに置いて、鼻の頭がツンとした。


どうしよう、どうしよう。消えたい。


ケンタくんが何か言うかと思った。「大丈夫ですか」とか「どうしたんですか」とか。それが普通だと思っていた。


何も言わなかった。


ただ、白いハンカチをそっとテーブルの上に置いた。自分の方に向けて。


それだけ。


「……ありがとうございます」


受け取って、目を押さえた。ハンカチから、柔軟剤のほのかな匂いがした。きちんと洗ってある。ちゃんとアイロンをかけてある。折り目がついている。


何も言わなかった、その沈黙で好きになった


「お父さん、亡くなったんですね」


しばらくして、ケンタくんが言った。断定だった。聞くわけでもなく、慰めるわけでもなく、ただ言った。


「……はい。去年」


「そうですか」


それだけ。それだけだった。「つらかったね」も「大変だったね」も言わなかった。ただ、カフェモカのカップを持ちながら、ゆっくり窓の外を見ていた。目黒川の向こうに、裸の木が並んでいた。12月に近い季節で、枝が剥き出しになった木立が、白い午後の空に細い線を引いていた。


誰かに泣いているところを見られて、こんなにざわざわしなかったのは初めてだった。みっともないとも、申し訳ないとも思った。でも、その沈黙が、妙に温かかった。


「話せますか。もし嫌なら全然いいですけど」


嫌じゃなかった。嫌じゃなかったけど、話せるかどうかは自信がなかった。でも話し始めたら、止まらなかった。


父が病気になったこと。入院して、半年で逝ったこと。最後に会ったのが夏の終わりで、その時はまだ普通に話せたこと。でも次に会いに行った時にはもう意識が薄くて、最後に「ありがとう」って言えたかどうか、今でも自信がないこと。


ケンタくんはずっと聞いていた。相槌を打ちながら。カップを両手で持ちながら。「なるほど」とか「うん」とか、短い言葉だけで。


「……すみません。こんな話」


「謝らなくていいですよ」


「3回目のデートですよ」


「うん。でも話してくれてよかった」


「普通、引きますよね」


彼は少し考えてから言った。


「引かない。……引けないっていうか、引く気にならない」


意味がすぐにわからなかった。


「引いたら、これ聞き損じゃないですか。ちゃんと話してくれたのに」


おかしな理由だと思った。でも胸の奥が、じわっと熱くなった。カフェの外からは目黒川の水音がかすかにした。店内のジャズが低く流れていた。その二つの音の隙間に、ケンタくんの言葉だけが残った。


4回目の約束が、私を少し変えた


カフェモカが冷めていた。でも飲んだ。苦かった。苦さが喉を通って、今まで詰まっていたものが少し流れた気がした。


帰りに、ハンカチのことが頭をよぎった。洗って返すのが礼儀だと思った。でもそれを口にしたら、また会う口実ができる。28歳にもなって、こんな考え方をしている自分が少し可笑しかった。


「ハンカチ、洗って返します」


「あ、いいですよ。持ってて」


「いやでも」


「じゃあ……また会う口実にしてください。返しに来る、みたいな」


声がうわずった。わかりやすすぎる返し方だと思ったけど、それがかえって、なんか、良かった。計算してない感じが。


4回目のデートの時、洗ってアイロンをかけたハンカチを持って行った。返す前に、少しだけ迷って、お揃いのものを買っておいた。紺色の、同じブランドの。返す時に一緒に渡したら、ケンタくんは「なんで2枚あるんですか」と言った。


「次に私が泣いた時のために」


「……次も泣くんですか」


「泣くかもしれないので」


「じゃあ俺がちゃんと聞きます」


その顔が、まっすぐだった。目が少しだけ細くなって、ちゃんとこっちを見ていた。嘘をつく顔じゃなかった。そういうことを、人の顔を見てわかるようになったのも、父が死んでからかもしれない。残り時間を意識するようになってから、人の表情を読む速度が少し上がった気がする。


泣いてよかった、と初めて思った。お父さんのことを、ちゃんと話せて、受け取ってもらえた日のことを。


グズグズしたままでも、誰かに側にいてもらえることがある。それを知ったのは、中目黒のカフェの、3回目のデートだった。

よくある質問

withで出会ったケンタくんとの3回目のデートはどこでしたか?
中目黒の川沿いのカフェでした。1回目は恵比寿でご飯、2回目は下北沢をぶらぶら、という流れで、3回目でだいぶ打ち解けていたといいます。
泣いてしまった原因は何でしたか?
仕事の話から上司の話、そしてなぜか父親の話になって、「うちの父も、こだわりが強くて……昔から」と言ったところで詰まってしまったと書かれています。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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