めんどくさいのに続けた理由と、急に楽になった瞬間
プロフィール作りがめんどくさい、メッセージがめんどくさい、デートの調整がめんどくさい。3回やめかけたwithを続けていたら、ある日「この人だ」が来た。面倒の先にしか出会えない人がいた話。
withのプロフィール登録画面で、30分固まった。3回やめかけたアプリの話をする。
趣味、職業、年収、身長、学歴、休日の過ごし方、お酒、タバコ、結婚に対する意思——入力項目が終わらない。一つ埋めるたびに「こんなことまで書くの?」と思った。自己紹介文を300文字で書けと言われて、スマホを伏せた。
面倒だった。ただひたすらに、面倒だった。
1回目のやめかけ:プロフィール作りで心が折れた
自己紹介文を書くのに3日かかった。「はじめまして、都内で事務の仕事をしています」まで書いて止まった。自分のことを魅力的に書くという行為が、背中がゾワッとするほど気恥ずかしかった。
友達に「こういうの得意でしょ」と頼んだら、「自分で書きなよ、人柄が出ないと意味ないよ」と断られた。正論すぎて何も言えなかった。
結局「仕事は事務職で、休みの日はカフェ巡りをしています。おいしいコーヒーのお店を知っていたら教えてください」という、ありきたりな文章で妥協した。写真も2枚しか載せなかった。もう疲れていた。始まる前から。
2回目のやめかけ:メッセージの義務感
マッチしてからの方がもっと面倒だった。
「はじめまして、いいねありがとうございます」から始まるやりとりを、同時に4人とやっていた。全員に違う話をして、全員の名前と内容を覚えていないといけない。Aさんには映画の話をして、Bさんには仕事の話をして、Cさんには旅行の話をして。メモ帳に書いていた。メモ帳に「この人にはこの話題を振った」と記録している自分が、なんだか営業みたいで嫌だった。
夜、仕事から帰ってソファに座る。スマホを開く。未読4件。胃の底が重くなる。返さなきゃ。でも何を書けばいいのか、30分考えても出てこない日があった。
2ヶ月目の終わり、全員との会話が止まった。こっちからも送らず、向こうからも来ない。静かになったスマホを見て、正直ほっとした。同時に、「また最初からやるのか」と思ったら、手の甲がじんわり汗ばんだ。
3回目のやめかけ:デート調整の消耗
3ヶ月目、ようやく会いたいと思える人ができた。でもここからがまた面倒だった。
「来週の土曜日はどうですか」「土曜日は予定があって」「では日曜は」「日曜の午後なら」「何時頃がいいですか」「14時以降で」「場所はどのあたりが」「池袋か新宿あたりだと助かります」。
デートの場所と時間を決めるのに、8往復かかった。8往復。お店を探して、予約して、道順を確認して。1人分のデートの準備に、丸1日かかっていた。
これを毎回やるのかと思ったとき、心の底から「めんどくさい」と思った。普通に出会った人なら、こんな手順は要らない。「今度ごはん行こうよ」「いいね、いつにする?」で済む。アプリは全てが手続きだった。
池袋のルミネの地下で待ち合わせして、会って、話して、2時間過ごした。悪くなかった。でも「また会いたい」とは思わなかった。これだけ準備して、この結果か。帰りの丸ノ内線で、天井を見上げて息を吐いた。
4ヶ月目、急に楽になった
正直、もう退会しようと思っていた。
面倒くさい以外の感情がなかった。プロフィールを見ても誰にも興味が湧かない。メッセージを送る気力もない。惰性でスワイプだけしていた。
そのとき、いいねが来た。
プロフィールを開いた。29歳、グラフィックデザイナー。自己紹介文に「めんどくさがりなので、気軽に話せる人がいいです」と書いてあった。
——わかる。
その一言で、心臓がとくんと鳴った。4ヶ月間で初めての反応だった。
いいねを返して、メッセージを送った。「自己紹介文の『めんどくさがり』に共感しました」。正直に書いた。
返信は30分後に来た。「ですよね笑 正直プロフィール作るのも面倒でした」。
そこから会話が始まった。今までと全然違った。無理に話題を作らなくてよかった。「今日何してたんですか」「仕事終わって丸亀製麺食べてます」「丸亀いいですね、何頼みました?」「かけうどん大です」「大を頼むんですね笑」。
なんでもない会話。でもそのなんでもなさが、4ヶ月間で一番楽だった。肩に入っていた力が、すとんと抜けた感じ。声に出して「あ、これだ」と呟いた。
中目黒で会った日
デートの調整も楽だった。「来週どこかで会いません?」「いいですよ、中目黒とか」「じゃあ土曜の14時に」。3往復で決まった。8往復かかっていたのが嘘みたいだった。
中目黒の目黒川沿いを歩きながら話した。3月で桜はまだだったけれど、川沿いのベンチに座って、スタバのラテを飲みながら、2人でぼんやりしていた。
「アプリ、めんどくさくなかったですか?」と聞いたら、「めちゃくちゃめんどくさかった。3回くらいやめようと思った」と言われた。
「私も3回やめかけました」
「同じですね」
彼女が少し笑った。目尻が下がって、川の光が横顔に反射した。その瞬間、胸の奥がふわっと温かくなった。
面倒くさい。本当にそうだった。プロフィール作りも、メッセージも、デート調整も。でも面倒くさいことを全部やった先に、丸亀製麺のかけうどん大の話で笑い合える人がいた。
楽な出会いなんてなかった。面倒の先にしか、あの中目黒の午後はなかった。
楽じゃないから出会えない、のではなくて、楽じゃないから出会える人がいる。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。