年収を50万盛った男と付き合って、3ヶ月目に気づいた
Omiaiで年収600万と書いていた彼が、実は550万だった。3ヶ月付き合って給与明細を見てしまった夜、怒りより先に来た感情は「え、それだけ?」だった。プロフィールの数字をどう受け取るべきか。
年収600万の男が、550万だった。
Omiaiで出会った彼のプロフィールには「年収600〜800万」と書いてあった。IT系のエンジニアで、渋谷の会社に勤めていて、一人暮らし。3回目のデートで付き合い始めて、そこから3ヶ月。別に年収で選んだわけじゃないけど、あの数字が頭の隅にあったのは否定できない。
給与明細が見えた夜
気づいたのは偶然だった。
彼の家に泊まった翌朝、テーブルの上に封筒が出しっぱなしになっていた。給与明細。見ようとしたわけじゃない。朝ごはんの皿を置こうとして、手が当たって中身がずれた。数字が目に入った。
額面45万。ボーナス含めて年収550万くらいだとすぐにわかった。
胃のあたりがすっと冷えた。怒りじゃなかった。「あ、嘘だったんだ」という、薄い驚き。心臓がどくどくしたのは一瞬で、それよりも「この50万をどう思えばいいんだろう」という困惑の方が長く残った。
封筒を元の位置に戻して、彼が起きてくるまでの15分間、ドトールで買ってきたコーヒーをひとりで飲んでいた。カップが熱くて、指先だけがやけに現実的だった。
「50万の嘘」は嘘なのか
その日は何も言わずに帰った。
帰りの丸ノ内線で、ずっと考えていた。600万と書いて実際は550万。50万の差。月にすれば4万くらいの差。パーセンテージにすれば8%くらいの誤差。
マッチングアプリの年収欄は「範囲選択」だ。Omiaiの場合、「400〜600万」か「600〜800万」の二択で、550万の人間はどちらを選ぶか。600万寄りの自分を見せたくて「600〜800万」を選んだのか。それとも深く考えずにタップしただけなのか。
友達の由美に電話した。「50万盛ってたんだけど」と言ったら、3秒くらい沈黙があって、「それ、盛ったうちに入る?」と返ってきた。
「いや、嘘は嘘でしょ」
「うーん、でもさ、身長170って書いてて168の人、腐るほどいるよ」
「それとこれは違くない?」
「何が違うの」
言い返せなかった。
問い詰めた夜と、彼の反応
2週間、言えなかった。
言おうとするたびに喉の奥がつっかえた。「給与明細見ちゃった」と言えば、「勝手に見たの」と返される可能性がある。そっちが先に問題になる。でも知ってしまった以上、知らないふりを続けるのも気持ち悪かった。中目黒の彼の家に行くたびに、あのテーブルの上の封筒を思い出す。
結局、言った。新宿のルミネのカフェで、ランチの後。
「ねえ、年収のこと聞いていい」
彼の手がカップの上で止まった。目が一瞬泳いだ。それで確信した。知ってて書いたんだ、と。
「……600〜800の欄、選んじゃったんだよね。実際は550くらい。ごめん」
声が小さかった。カフェのBGMに埋もれそうな声量で、でも聞こえた。耳の奥がじんと熱くなった。
「なんで盛ったの」
「400〜600だと、マッチしにくいって聞いて。友達に言われて、それで」
正直に言えば、その理由はわかった。わかってしまった。400〜600万の男と、600〜800万の男では、フィルターの時点で表示される確率が変わる。マッチングアプリの構造がそうさせている部分はある。
でも「わかる」と「許せる」は違う。
プロフィールの数字をどう受け取ればいいのか
その後、1週間くらい連絡を減らした。嫌いになったわけじゃなかった。ただ、「この人が他に何を盛っているか」を考え始めてしまったのが苦しかった。趣味は本当か。職種は本当か。一つ嘘を見つけると、全部が疑わしくなる。それが一番きつかった。
結局、別れなかった。
50万の嘘で3ヶ月の関係を壊すのは、割に合わないと思った。彼の作るカレーが好きだったし、映画を観た後の感想が長くて面白かったし、寝る前にback numberを小さい音で流す癖が好きだった。550万の彼が嫌いだったんじゃない。600万と書いた彼が少し信用できなかっただけだ。
後日、マッチングアプリに詳しい友人に聞いたら、「男は年収を盛る、女は年齢を盛る、写真は全員盛る」と言っていた。渋谷のタリーズで、コーヒーを飲みながら苦笑いした。
マッチングアプリのプロフィールは履歴書じゃない。「こう見られたい自分」を並べる場所だ。それを踏まえた上で、目の前にいるその人をどう判断するかは、自分の目でしか確かめられない。
数字の裏にある不安を読めるかどうかで、嘘の見え方は変わる。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。