年収より先に見てほしかった。30代男性がプロフィールで誤解される話
Omiaiで年収600万と書いたら、メッセージの中身が変わった。年収を消したら、マッチングそのものが消えた。条件で判断される30代男性が、プロフィールの書き方ひとつで経験した落差の記録。
Omiaiに登録したのは32歳の秋だった。
渋谷のマークシティを出たところで、同期の結婚式の二次会の帰り道にアプリをダウンロードした。祝福する気持ちと、焦る気持ちが胃の中で混ざっていた。二次会で飲んだハイボールの炭酸が、まだ喉の奥でシュワシュワしていた。
プロフィールを作るとき、年収の欄があった。選択式で、「400万〜600万」「600万〜800万」のような幅がある。自分は600万ちょっとだったから、「600万〜800万」を選んだ。嘘は書いていない。でも、上寄りに見えるようにしたのは自覚していた。
年収600万のプロフィールに来たメッセージ
登録して最初の1週間で、いいねが42件来た。正直、驚いた。写真は普通だし、自己紹介文も「映画と散歩が好きです」程度のことしか書いていなかった。
マッチングした人とやりとりを始めると、パターンが見えてきた。
「お仕事は何されてるんですか?」「どのあたりにお住まいですか?」「将来的にはマイホームとか考えてますか?」
3人目あたりで気づいた。聞かれているのは「私」じゃなくて「スペック」だった。映画が好きと書いたのに、映画の話を振ってくる人がほとんどいなかった。最近観た作品を聞かれたのは、10人中2人だけだった。
ある人とのやりとりが特に印象に残っている。28歳の女性で、メッセージは丁寧だった。1週間やりとりして、恵比寿のイタリアンで会った。料理が来る前に、彼女がこう言った。
「年収600万以上の方としかお会いしないって決めてるんです」
悪気はなかったと思う。むしろ正直に言ってくれたのかもしれない。でも、そのとき手に持っていたグラスの水が少し震えた。私は「条件をクリアしたからここにいる」のであって、「この人に会いたいからここにいる」のとは違ったのだと、突きつけられた感覚だった。
食事は普通に楽しかった。でも帰り道、恵比寿駅のホームで電車を待ちながら、みぞおちのあたりがずっと重かった。
年収を消したら、世界が変わった
翌月、試しに年収の欄を非公開にしてみた。
いいねが激減した。42件あった週間いいねが、8件になった。5分の1以下。プロフィールの文章は変えていない。写真も変えていない。変えたのは年収の表示だけだ。
「そういうことか」と思った。笑ったのか、呆れたのか、自分でもわからなかった。会社のデスクでスマホを伏せて、しばらく天井を見ていた。
8件のいいねの中身は、前とは違った。メッセージの最初が「プロフィール読みました、映画お好きなんですね」だったり、「散歩ってどのあたり歩くんですか?」だったり。スペックの質問から入る人が、明らかに減った。
そのうちの一人、29歳の女性と新宿御苑の近くのカフェで会った。彼女は最初に「ごめんなさい、実はマッチングアプリ慣れてなくて」と言った。年収のことは最後まで聞かれなかった。代わりに、好きな映画の話を2時間した。彼女はウェス・アンダーソンが好きで、私はクリストファー・ノーランが好きで、「趣味合わないですね」と笑った。
帰り道、新宿三丁目の駅まで歩きながら、心臓がドクドクしていることに気づいた。恵比寿のイタリアンのあとには感じなかった動悸だった。
条件と人柄の狭間で
年収を書くと人は来る。でも来る人の目的が変わる。年収を消すと人は来ない。でも来る人の質が変わる。
どっちが正解かは、まだわからない。
友人に相談したら、「年収は書いた方がいい。それで来る人を選べばいいだけじゃん」と言われた。理屈はわかる。でも「選べばいい」の前段階で、すでに疲弊していた。スペックの質問に毎回答えて、条件確認の面接を繰り返すのは、心が削られる作業だった。
高円寺の自分の部屋で、ベッドに寝転がりながら考えた。年収600万は努力して得た数字だ。それ自体は誇りに思っている。でも、その数字が「自分の代わり」として先に歩いていくのは、違う気がした。
600万という数字は、私が残業して、休日出勤して、プレゼンで胃を痛めて積み上げた結果だ。でもプロフィール上では、ただの4桁の数字。その数字だけを見て「会いたい」と言われても、喉の奥に何かがつかえた。
今のプロフィールの書き方
結局、年収は「非公開」のままにしている。いいねの数は減ったまま。でも、来る人のメッセージは読んでいて嬉しいものが増えた。
最近マッチングした人に「なんで年収書いてないんですか?」と聞かれた。正直に答えた。「書いたら、年収で判断される気がして」。
彼女は少し黙ってから、「それ、わかるかも。私も写真で判断されるの嫌だなって思うことある」と言った。
その言葉を聞いたとき、背筋がすっと伸びた。同じ側にいる人がいた。条件で選別される側の気持ちを知っている人がいた。
数字を出せば人は来る。でも、数字の向こうにいる人間に興味を持ってくれる人は、数字がなくても来る。
新宿御苑の桜並木を歩きながら、そう思った。手のひらは汗ばんでいたけど、それは焦りじゃなくて、期待だった。
条件で選ばれるのは楽だ。でも、条件を外しても選ばれたとき、初めて心臓が鳴る。
よくある質問
マッチングアプリで年収は公開すべきですか?↓
年収で判断されていると感じたらどうすべきですか?↓
プロフィールの年収欄を非公開にするデメリットは何ですか?↓
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。