発達特性がある私が、初デートで一番困ったこと
ASD傾向がある26歳男性。withで出会った人との初デートで、目を合わせるのが苦手、カフェの環境音がつらい、沈黙が怖い。でも工夫次第で乗り越えられることもあった。
カフェのドアを開けた瞬間、耳が痛くなった。
withで2週間やりとりした人との初デート。待ち合わせは渋谷のカフェだった。日曜の14時、店内は満席に近くて、隣のテーブルの笑い声、食器がぶつかる音、エスプレッソマシンの蒸気音が全部同時に耳に入ってきた。
僕にはASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある。診断を受けたのは大学3年のとき。感覚過敏があって、特に聴覚が敏感だ。騒がしい場所にいると、すべての音が同じ音量で聞こえる。普通の人が自然にフィルタリングできる背景音を、僕の脳はフィルタリングしてくれない。
ドアの前で一瞬立ち止まった。手のひらが汗ばんでいた。引き返したい衝動を、奥歯を噛んで抑えた。
目が合わせられない問題
彼女は窓際の席に先に座っていた。手を振ってくれた。席についた瞬間から、問題が始まった。
目を合わせるのが、苦手だ。
ASDの特性として、アイコンタクトが難しいことがある。相手の目を見ると、情報量が多すぎて処理が追いつかない。かといって目を逸らし続けると「話を聞いていない」と思われる。この板挟みが、初対面では特にきつい。
彼女が「はじめまして」と笑ったとき、僕は彼女の眉間のあたりを見ていた。目ではなく、眉間。これは大学時代にカウンセラーに教わったテクニックだ。相手からは目を見ているように見えるけど、こちらは直接目を見なくて済む。
でもカフェの騒音のせいで、彼女の声が聞き取りにくかった。聞き返すたびに、彼女が少し困った顔をした。申し訳なさで胃がきゅっと締まった。
沈黙が怖い、でも話題が浮かばない
withのメッセージでは会話が弾んでいた。テキストなら考える時間がある。返信を推敲できる。でも対面の会話は、リアルタイムだ。
沈黙が3秒続くと、頭の中で警報が鳴る。「何か話さないと」「つまらないと思われている」「もう帰りたいと思っているかも」。思考がぐるぐる回って、余計に言葉が出てこなくなる。
彼女が「お仕事は何されてるんですか」と聞いてくれた。「SEです」と答えた。そこで止まった。普通なら「どんな仕事してるんですか」と聞き返すべきだった。でもその瞬間、隣のテーブルから椅子を引く音がして、意識がそっちに持っていかれた。
「あ、すみません。えっと、○○さんは?」
2秒遅れた質問。彼女は気にしていない顔をしてくれたけど、自分の中ではもう減点だった。こういう小さなずれが積み重なって、自信を削っていく。
下北沢に場所を変えた判断
30分くらい経ったとき、限界が来た。耳鳴りがし始めて、彼女の話に集中できなくなった。
「あの、ちょっと提案なんですけど」
思い切って言った。「ここ、ちょっと騒がしくて聞き取りにくくて。もし良ければ場所を変えませんか」。
言った瞬間、心臓がバクバクした。「面倒くさい人」と思われたかもしれない。でも彼女は「あ、確かにうるさいですよね。全然いいですよ」と笑ってくれた。
下北沢まで歩いた。歩きながらの方が、目を合わせなくていいから楽だった。隣に並んで歩くと、前を向いたまま話せる。アイコンタクトのプレッシャーがなくなった途端、言葉が自然に出てきた。
下北沢の路地裏にある、小さなカフェに入った。席が3つしかない店で、他の客はいなかった。BGMはアコースティックギターの静かな曲。耳が楽になった瞬間、肩の力が抜けた。
「さっきの店より全然いいですね」と彼女が言った。「ですよね」と僕は答えた。声が自分のものに戻った感覚があった。
工夫次第で、デートはできる
あのデートから学んだことがある。
場所選びは、事前に下見した方がいい。騒がしさ、照明の明るさ、席の配置。これを確認するだけで、当日の負担が全然違う。僕はそれ以降、初デートは必ず自分が行ったことのある店を選ぶようにした。
歩きながら話す、という選択肢を持っておくのも助かった。代官山から中目黒まで散歩するコースは、目を合わせずに話せるし、景色が話題になる。沈黙が生まれても、歩いているだけで「気まずい沈黙」にならない。
自分の特性を相手に伝えるかどうかは、まだ迷っている。あの日の彼女には言わなかった。「騒がしいのが苦手」とだけ伝えた。それで十分だった気もするし、もう少し正直に話してもよかった気もする。
withのメッセージで「実は人混みが苦手で」と先に伝えておくのもありだと、今は思う。それで引く人なら、会ってからもっと困ることになる。
2回目のデートは、自分で場所を選んだ
彼女と2回目のデートをした。場所は僕が選んだ。吉祥寺の、席数が少なくて静かなカフェ。事前に一人で行って、音量と席の間隔を確認した。
彼女が来たとき、「ここ、すごくいい店ですね」と言ってくれた。その一言で、手のひらの汗が引いた。
完璧なデートではなかった。それでも、1回目よりずっと楽に話せた。目は相変わらず合わせられなかったけど、コーヒーカップを見ながら話す僕を、彼女は否定しなかった。
苦手なことは消えない。でも、工夫で小さくはできる。
よくある質問
発達障害がある場合、マッチングアプリでの初デートはどう工夫すればいいですか?↓
ASDの特性を相手に伝えるタイミングはいつがいいですか?↓
デート中に感覚過敏がつらくなったら、どう伝えればいいですか?↓
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。