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恋愛体験談エッセイPairs

うつが落ち着いたあとで恋愛を再開した。会うのが怖かった

うつ病で2年間、恋愛から完全に離れた。回復してPairsを始めたけど、「また傷つくかも」という恐怖が常にあった。三軒茶屋のカフェで初めて会った日のことを、書いておきたい。

28歳・女性の体験
·橘みあ·7分で読める

スマホにPairsをダウンロードするまで、3日かかった。


App Storeを開いて、検索して、ダウンロードボタンの上で指が止まる。それを3日繰り返した。2年間、恋愛どころか人と会うことすら怖かった自分が、マッチングアプリを始めようとしている。指先が震えていた。


26歳のときにうつ病と診断された。原因は複合的だったけど、きっかけは当時付き合っていた彼氏との別れだった。2年間の交際が終わったとき、自分の中で何かがぽきっと折れた。布団から出られなくなった。食事の味がしなくなった。友達のLINEに返信できなくなった。


通院と服薬を続けて、少しずつ回復した。28歳の春、主治医に「社会復帰は順調ですね」と言われた日、帰り道の三軒茶屋の商店街で、カップルが手をつないで歩いているのを見た。胸がちくっとした。寂しい、と感じた。それが「回復」の合図だったのかもしれない。


アプリを始めた日の、手の震え


3日目にやっとダウンロードした。プロフィールを作るのに2時間かかった。写真を選ぶのがつらかった。うつの2年間、ほとんど写真を撮っていなかった。使える写真が3年前のものしかなくて、今の自分と顔が違う気がした。


自己紹介文を書こうとして、何度も消した。「うつ病から回復しました」なんて書けない。でも嘘も書きたくなかった。結局「のんびりした性格です。カフェとお散歩が好きです」と書いた。嘘ではない。でも全部でもない。


最初にいいねを送るまで、さらに2日かかった。プロフィールを何十人も見て、「この人なら優しそう」と思った人にいいねを押した。指が震えた。送った瞬間、スマホを裏返しにしてテーブルに置いた。


翌朝、マッチの通知が来ていた。心臓がバクバクした。嬉しいのか怖いのか、自分でもわからなかった。


メッセージは楽だった。会うのが怖かった


メッセージのやりとりは、意外と楽だった。テキストなら考える時間がある。返信を読み直して、大丈夫だと確認してから送れる。2週間やりとりした相手は、30歳の会社員で、文章が穏やかな人だった。


「今度会いませんか」と言われたのは、やりとりを始めて16日目だった。


喉の奥がぎゅっと締まった。会う。実際に、会う。メッセージの画面越しではなく、目の前に人がいる。その人と話す。笑う。沈黙が来る。全部がリアルタイムで起きる。


「嬉しいです。でも少し緊張してて」と正直に書いた。「全然大丈夫です、無理しないでください」と返ってきた。その一文に、目頭が少し熱くなった。


デートの前日の夜、眠れなかった。布団の中でスマホを握りしめて、天井を見ていた。最悪のシナリオが頭をぐるぐる回る。会話が続かなかったら。つまらないと思われたら。また傷ついたら。あの2年間に戻ったら。


朝5時に起きて、主治医に処方されている頓服の抗不安薬を飲むか迷った。結局飲まなかった。薬なしの自分で会いたかった。


三軒茶屋のカフェで、声が出なかった最初の10秒


待ち合わせは三軒茶屋のカフェだった。自分で選んだ。何度も一人で行ったことがある店で、店員さんの顔を知っている。知っている場所にいるだけで、心拍数が少し下がる。


彼は先に来ていた。窓際の席で、本を読んでいた。写真と同じ顔だった。それだけで少しほっとした。


「はじめまして」と言おうとして、声が出なかった。喉が詰まって、最初の10秒、口を開いたまま固まった。


彼が顔を上げて、「あ、○○さんですか?」と先に声をかけてくれた。


「はい、はじめまして」。やっと声が出た。かすれていた。


席について、メニューを開いて、ホットのカフェラテを頼んだ。いつもと同じ注文。いつもと同じ店。でも目の前に知らない人がいる。手が小さく震えていたけど、カップを持ったら少し収まった。温かいものを持つと落ち着く。それは2年間で学んだことの一つだった。


1時間話せた。それだけで泣きそうだった


結論から言うと、1時間話せた。


映画の話をした。最近見た映画はと聞かれて、「ずっと映画を見られなかったんですけど、最近やっと見られるようになって」と答えた。うつのことは言わなかった。でも「見られなかった時期があった」という言葉に、彼は深追いしなかった。「何を見たんですか」と聞いてくれた。その距離感が、ありがたかった。


笑った。自分が声を出して笑っていることに途中で気づいて、少しびっくりした。2年間、人と向かい合って笑ったことがほとんどなかった。顔の筋肉が、笑い方を少し忘れていた。


帰り道、三軒茶屋の駅に向かって歩きながら、涙が出そうになった。泣くような出来事は何もなかった。ただ、「1時間、人と話せた」という事実が、胸の奥を揺さぶった。


2年前の自分には、できなかったことだ。


恋愛の再開は、回復のゴールじゃない


彼とは2回目のデートもした。3回目もした。今のところ、ゆっくり進んでいる。


一つだけ決めていることがある。うつのことを話すタイミングは、自分で決める。相手に合わせない。準備ができたときに、自分の言葉で話す。それまでは「のんびりした性格」でいい。


恋愛を再開することが回復のゴールだと思っていた時期がある。でも違った。恋愛は回復の証明ではなく、回復した自分が選んだ「次のこと」の一つにすぎない。恋愛がうまくいかなくても、回復が巻き戻るわけじゃない。


新宿のクリニックの帰りに、主治医に「アプリ始めました」と報告した。先生は「へえ、それは大きい一歩ですね」と言って、少し笑った。「でも無理しないでね」とも言った。


無理はしない。でも怖がりすぎもしない。その間のどこかに、今の自分の居場所がある。


あの夜の震えは、弱さじゃない。生き直す合図だった。

よくある質問

うつ病の回復後、マッチングアプリを始めるタイミングはいつがいいですか?
主治医に社会復帰が順調だと言われたこと、そして自分自身が「寂しい」と感じられるようになったことが私のタイミングでした。寂しさを感じるのは感情が戻ってきた証拠です。ただし焦る必要はなく、アプリをダウンロードするだけで3日かかっても全く問題ありません。自分のペースで進めることが一番です。
デートの前日に不安で眠れないとき、どう対処すればいいですか?
待ち合わせ場所を自分がよく知っている店にするだけで、当日の不安がかなり減ります。知っている空間にいるだけで心拍数が下がります。また「最悪、30分で帰ってもいい」と自分に許可を出しておくと、逃げ道があるだけで気持ちが楽になります。頓服薬の判断は主治医と相談してください。
うつ病のことを相手にいつ伝えればいいですか?
自分の準備ができたときに、自分の言葉で伝えるのが一番です。初回デートで伝える必要はありません。付き合う前に伝えるか、付き合ってから伝えるかは人それぞれですが、「言わなきゃ」という義務感で話すのではなく、「この人になら話せる」と感じたタイミングを待つことをおすすめします。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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