フェードアウトされた翌日から、次の人に会うまでの30日間の記録
木曜の夜、既読がついたまま返信が来なくなった。金曜、土曜、日曜。3日待って、「ああ、フェードアウトされたんだ」と理解した。そこから30日後に次の人と会うまでの記録。1日目から30日目まで、全部書く。
木曜の夜、既読がついた。金曜、土曜、日曜。返信は来なかった。
Pairsで出会って4回デートした人。3回目で手をつないで、4回目は中目黒のバーで23時まで飲んだ。「来週も会おう」と言ってくれた。
その「来週」が来なかった。
26歳、IT企業のデザイナー。フェードアウトされた翌日から、次の人に会うまでの30日間を全部書く。
1日目〜3日目:「忙しいだけ」と自分に言い聞かせた
1日目。「忙しいのかな」と思った。彼は営業職だから、月末は特に忙しいと言っていた。
2日目。スマホを1時間に1回確認した。通知はなかった。代わりにAmazonのセール通知が3件来た。
3日目。もう1通だけ送った。「最近忙しい? 元気にしてたらいいな」。軽い文面にしたつもりだった。手のひらは汗ばんでいた。
既読がついた。返信は来なかった。
4日目〜7日目:認めたくなかったけど、認めた
4日目の朝、ベッドの中でスマホを見て、通知がないことを確認して、「ああ、フェードアウトされたんだ」と声に出して言った。
三軒茶屋のワンルーム、朝7時。窓の外でカラスが鳴いていた。胃の底に石が沈んでいる感覚。食欲がなかった。
5日目。会社のトイレで泣いた。理由は「フェードアウトされた悲しさ」じゃなくて、「4回も会って手をつないだのに、30文字の別れすら言ってもらえなかった」という情けなさ。
6日目。友達のリカに電話した。恵比寿のスタバで1時間話した。リカは「1通送って返信ないなら、もう送るな。追えば追うほど自分が壊れる」と言った。
7日目。彼のLINEのトーク画面を長押しして、「非表示」にした。ブロックはしなかった。する気力もなかった。
8日目〜14日目:アプリを開けなかった
8日目。Pairsを開こうとして、アイコンをタップする寸前で指が止まった。開いたら、彼のプロフィールが見えるかもしれない。「最終ログイン:24時間以内」が見えたら、壊れる気がした。
10日目。Pairsの通知をオフにした。通知音が鳴るたびに心臓が跳ねるのが、もう耐えられなかった。
12日目。仕事帰りに下北沢の古着屋を1人でぶらぶらした。何も買わなかった。でも「誰かのために着飾る必要がない」という感覚が、少しだけ楽だった。
14日目。2週間。リカに「まだ引きずってる」とLINEしたら、「普通。4回も会ったんだから2週間は当然」と返ってきた。
15日目〜21日目:少しずつ、戻り始めた
15日目。初めてPairsを開いた。彼のプロフィールは見なかった。見る気力がなかった。新しい人の写真をスクロールした。誰にもいいねを送らなかった。でも開けたことが、進歩だった。
18日目。1人にいいねを送った。28歳のエンジニア。プロフィールに「最近ハマっているのは蔵前のカフェ巡り」と書いてあった。蔵前。行ったことない。ふと、興味が湧いた。
20日目。マッチした。メッセージが来た。「いいねありがとうございます。蔵前好きなんですか?」。返信した。「行ったことないんですけど、気になって」。
21日目。3往復やりとりした。胸がときめいたわけじゃない。でも「誰かと文字を交わしている」という事実が、思ったより温かかった。
22日目〜30日目:次の人に会った
25日目。「今度蔵前のカフェ行きませんか?」と誘った。自分から。フェードアウトされてから初めて、自分から動いた。
28日目。蔵前のカフェで会った。土曜の14時。相手は写真より少し背が高くて、笑い方が穏やかだった。蔵前の街を一緒に歩いた。隅田川沿いのベンチで座って、コーヒーを飲んだ。
特別なことは何もなかった。でも「ここにいる」という感覚が、2週間前には想像できなかったもの。
30日目。フェードアウトされてから1ヶ月。LINEのトーク一覧を見た。非表示にしていた彼の画面は、まだ非表示のまま。
蔵前で会った人とは2回目の約束を入れた。「来週の土曜、また蔵前行きましょう」。今度は相手からの誘い。
あの夜のフェードアウトは、まだ完全には消化できていない。「なぜ返信しなかったのか」は、たぶん一生わからない。
でも30日経って思うのは、わからないまま先に進むことはできるということ。答えが出なくても、次のカフェには行ける。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。