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恋愛体験談エッセイPairs

通知音が鳴るたびに心臓が止まる。Pairsを開くのが怖くなった3ヶ月目

Pairsの通知音を聞くと心臓がぎゅっとなる。既読無視されるたびに胃が痛む。3ヶ月目、スマホの通知をオフにした。それでも怖かった。27歳の私がアプリ依存になりかけて、少しだけ回復するまでの記録。

27歳・女性の体験
·橘みあ·7分で読める

ピコン。


スマホが鳴った瞬間、心臓がどくんと跳ねた。ベッドの上で仰向けに寝ていて、天井を見つめたまま固まった。


通知を見たい。見たくない。


Pairsの通知が「いいねが来ました」なら嬉しい。「メッセージが来ました」なら、もっと嬉しい。でも通知を開いて何もなかったとき——アプリのお知らせとか、キャンペーン情報だったとき——の虚しさが、最近つらくなってきた。


27歳、アパレルの販売員。Pairsを始めて3ヶ月目の、12月の夜のことだった。


最初の1ヶ月は楽しかった


9月にPairsを始めた。友達のリナが「やってみなよ」と言ったから。渋谷のルミネで働いていて、出会いがないわけじゃないけど、職場の男性は既婚者が多かった。


最初の1ヶ月は純粋に楽しかった。プロフィール写真を選ぶのも、自己紹介文を考えるのも、いいねが来るのも。マッチしたときのあの画面、ハートが飛ぶアニメーション。あれを見るたびにテンションが上がった。


1週間で5人とマッチした。メッセージも弾んでいた。「今度カフェ行きませんか」と言われて、代官山のカフェで初デートもした。楽しかった。会話も盛り上がった。


2回目のデートの約束をして、3日前に「やっぱりごめんなさい」と断られた。


そこから、少しずつ歯車が狂い始めた。


2ヶ月目:既読がつくのが怖い


2ヶ月目になると、メッセージを送ったあとの既読が怖くなった。


「既読がついた。でも返信が来ない。1時間経った。3時間経った。半日経った」


スマホを裏返しにして机に置く。5分後にひっくり返して確認する。何もない。また裏返す。3分後にまた見る。通知なし。


このサイクルを1日に20回以上繰り返していた。


仕事中にもスマホが気になる。接客中に通知が鳴ると、心臓がびくっとする。お客様の前では見られないから、休憩時間まで我慢する。休憩室に入った瞬間にスマホを開く。指先が震えている。


既読無視が3日続くと、胃がきりきり痛んだ。物理的に。ストレスで胃が痛い、という表現は比喩じゃなかった。本当に痛かった。


「返信来ないね」とリナに言ったら、「そんなもんだよ」と返された。そんなもんなのかもしれない。でも「そんなもん」が3人連続で、3人とも既読無視で消えていった。


3ヶ月目:通知をオフにした


12月に入って、限界が来た。


ある夜、布団の中でスマホを見ていた。Pairsを開いて、マッチした人のプロフィールを見ていた。最後のメッセージは私が送った「週末空いてますか?」。既読済み。返信なし。5日前。


涙が出てきた。


別にその人のことが好きだったわけじゃない。5往復しかしてない。顔もぼんやりしか覚えてない。でも「無視された」という事実が、胸の真ん中を押しつぶしていた。


私は無視されるような人間なのか。返信する価値もない人間なのか。そういう考えが、夜の布団の中でどんどん大きくなった。


翌朝、スマホの設定画面を開いて、Pairsの通知をオフにした。


オフにしたら楽になると思った。通知が鳴らなければ、気にしなくて済む。そう思った。


でも通知がオフになると、今度は「自分からアプリを開いて確認する」回数が増えた。通知が来ないから、来てないかもしれないし、来てるかもしれない。確認するしかない。


1日30回くらいアプリを開いていた。開いて、何もなくて、閉じる。また開く。何もない。閉じる。


通知をオフにしても、不安はオフにならなかった。


お風呂で泣いた夜


12月の中旬、仕事で疲れて帰ってきて、お風呂に入りながらスマホを見た(防水ケースに入れている)。Pairsを開いた。メッセージ0件。いいね0件。


シャワーのお湯が顔にかかって、それと一緒に涙が出た。お湯と涙の区別がつかなかった。


声を出さずに泣いた。ワンルームだから泣き声が壁の向こうに聞こえたら恥ずかしい。声を殺して、シャワーの音に紛れさせた。


なんで泣いてるんだろう。アプリで返信が来ないだけで。たかがアプリで。でも「たかがアプリ」で済まないくらい、自分のメンタルがアプリに支配されていた。


リナに相談した日


年末、リナと新宿のルミネのカフェでお茶した。


「最近Pairs開くのしんどくて」


「あー、わかる。私も一時期そうだった」


「え、リナも?」


「うん。通知が来るたびにびくっとするし、来ないと来ないで不安だし。で、1回やめたの」


「やめた?」


「3ヶ月くらい。そしたら楽になった。スマホ見る回数も減ったし、夜もちゃんと眠れるようになった」


リナが一時期やめていたことを、知らなかった。


「でもまた始めたんでしょ?」


「うん。でも距離感が変わった。前は通知に振り回されてたけど、今は1日1回しか開かないようにしてる」


1日1回。私は30回開いていた。


通知をオフにして、アプリを閉じた


年末年始、Pairsを開かないと決めた。


アプリを消す勇気はなかった。消したら「負け」な気がした。でも開かないことにした。ホーム画面の3ページ目にアイコンを移して、目に入らないようにした。


正月、実家に帰った。母親の作った雑煮を食べて、テレビを見て、犬の散歩をして。スマホを見る回数が激減した。Pairsがなくても1日が終わる。当たり前のことに、3ヶ月ぶりに気づいた。


渋谷に戻ってきて、少しずつ生活が戻った。仕事に集中できるようになった。お客様と話しているときにスマホが気にならなくなった。夜、布団に入ってすぐ眠れるようになった。


1月の終わりに、もう一度開いた


1ヶ月ぶりにPairsを開いた。いいねが3件来ていた。


以前なら3件に飛びついていた。でも1ヶ月離れたあとだと、「ふーん、3件か」くらいの温度感だった。


プロフィールを見て、1人にいいねを返した。メッセージが来た。1日1回だけ返した。


以前の自分なら5分以内に返していた。既読をつけたら、すぐ返さないと相手に失礼だと思っていた。でも「1日1回」のペースで返すようになったら、自分が楽だった。相手も同じペースで返してくれた。


リナの言っていた「距離感が変わった」の意味が、やっとわかった。


今も完全には治っていない


正直に書く。今も通知音が鳴ると、少しだけ心臓が跳ねる。完全には消えていない。


でも30回開いていたのが、1回になった。涙が出ることはなくなった。胃が痛むことも減った。


アプリは道具だ。道具に使われていた3ヶ月と、道具として使えるようになった今は、全然違う。


渋谷のルミネで接客しながら、ふとスマホのことを忘れている時間がある。その「忘れている時間」が、回復の証拠なんだと思う。


通知音はまだ少し怖い。でも前みたいに「心臓が止まる」ほどじゃない。止まりかけるくらいには、なるけど。


アプリを消すか消さないか、まだ迷っている日もある。でも迷えるようになっただけ、3ヶ月前よりましだ。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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