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恋愛体験談マリッシュ

「子供いるんですけど」と初めて打った夜。シングルファザーのマリッシュ体験

38歳、娘5歳、離婚して2年。マリッシュのプロフィールに「子供がいます」と書くかどうかで3日悩んだ。書いた。マッチ数は減った。でも減った先にいた人の話をする。

38・男性の体験
·橘みあ·6分で読める

娘が寝たあとのリビングで、スマホの画面を睨んでいた。マリッシュの自己紹介欄。カーソルが点滅している。


「子供いるんですけど」


その一文を打って、消して、また打った。府中の築30年のマンション、娘の寝息がリビングまで聞こえる。時計は22時17分。


離婚して2年になる。38歳。Web制作会社の中間管理職。平日は保育園の送り迎えがあるから残業はできない。土日は娘と井の頭公園に行くか、府中のイトーヨーカドーで買い物するか。生活は回っている。回っているけど、金曜の夜に娘を寝かしつけたあと、テレビの音だけが鳴るリビングで、ビールを開ける瞬間の静けさが、たまにしんどい。


マリッシュを選んだのは、再婚向けだと聞いたからだ。Pairsも考えた。でもPairsのキラキラした雰囲気の中に「5歳の娘がいます」と書く勇気がなかった。マリッシュなら、同じような境遇の人がいるかもしれない。


プロフィールの「子供」欄


マリッシュには「子供の有無」を選ぶ項目がある。「あり(同居)」を選んだ。指が少し震えた。


自己紹介文はこう書いた。「38歳、Web制作の仕事をしています。5歳の娘と二人暮らし。休日は公園か図書館にいます。子供がいることに理解のある方と、まずはゆっくりお話しできたら嬉しいです」


正直に書いた。でも「嬉しいです」の部分が嘘くさいと思った。嬉しいっていうか、怖い。自分みたいな条件の男に「いいね」を押す人がいるのか。


最初の1週間、いいねは3件だった。プロフィールを見てくれた人は47人。47人中44人が素通りした計算になる。


池袋のドトールで


2週目にマッチした女性がいた。35歳、保育士。プロフィールに「お子さんがいる方も大歓迎です」と書いてあった。


メッセージのやりとりが1週間続いて、池袋のドトールで会うことになった。土曜の14時。娘は実家に預けた。


彼女は開口一番に言った。「お子さん、女の子なんですね。何歳でしたっけ」


構えていた。子供の話を避けられるか、腫れ物扱いされるか。どっちかだと思っていた。でも普通に聞かれた。普通に、世間話みたいに。


「5歳です。今はプリキュアにハマってて」

「あー、今の子って早いですよね。うちの保育園でも年中さんがプリキュア踊ってます」


アイスコーヒーの氷がカラカラ鳴った。肩の力が抜けた音が、自分でも聞こえた気がした。


2回目のデートで聞かれたこと


2回目は吉祥寺のハモニカ横丁の焼き鳥屋。彼女のリクエストだった。


ビールを頼んで、焼き鳥が来る前に、彼女が少し声のトーンを落とした。


「あの、聞いていいですか。お子さんに、新しい人を会わせるつもりって、ありますか?」


胃がきゅっとなった。この質問が来ることは分かっていた。分かっていたけど、答えを用意していなかった。


「……正直、まだ分からないです」


本音だった。娘に会わせるのが怖い。「この人がパパの彼女?」と聞かれたときの娘の顔を想像すると、喉の奥がつかえる。でも、自分が誰かと一緒にいたいと思う気持ちも嘘じゃない。


彼女はうなずいて、焼き鳥を一本取った。「急がなくていいと思います。私も正直、子供との距離感って分からないので」


3回目はなかった


結局、彼女とは3回目のデートに至らなかった。2回目のあと「少し考えたいです」とメッセージが来て、1週間後に「ごめんなさい、やっぱり子供がいる方とのお付き合いに自信が持てませんでした」と来た。


腹は立たなかった。正直だと思った。自分だって逆の立場なら同じことを思うかもしれない。


ただ、その夜、娘を寝かしつけながら、なんとも言えない気持ちになった。娘の寝顔を見て、この子がいるから出会えない、とは絶対に思いたくなかった。思いたくないのに、頭の隅にその考えがちらついた自分が嫌だった。


同僚に言われたこと


会社の飲み会で、同期の木村に「最近なんか楽しそうじゃない?」と言われた。新橋の居酒屋、ビールのジョッキを持つ手が一瞬止まった。


「そうか?」

「なんか、顔つき変わったっていうか。前はもっと疲れてたよ」


マリッシュを始めてから、確かに変わったことがある。娘を寝かしつけたあとの時間が、テレビを見てビールを飲むだけじゃなくなった。誰かとメッセージをやりとりしている。その「誰か」はまだ曖昧な存在だけど、スマホの画面の向こうに自分を知ろうとしてくれる人がいるという事実が、リビングの空気を少しだけ変えた。


木村に「マッチングアプリ始めた」とは言えなかった。38歳のシンパパがアプリをやっていると言ったら、どう思われるか。たぶん木村は「いいじゃん」と言うだろう。でもその「いいじゃん」のあとに続く微妙な間が怖かった。


「子供いるんですけど」のその先


マリッシュを続けている。今、4人目の人とやりとりしている。子供がいることは最初から書いている。隠して会って、あとから言うのはもっと怖い。


シングルファザーがアプリで恋愛することについて、正解は持っていない。娘にいつ言うか、どう紹介するか、そもそも紹介するのか。全部、まだ分からない。


分かっているのは、金曜の夜のリビングの静けさが、もう少しだけ埋まればいいと思っていること。それが自分勝手なのか、人間として普通なのかも、まだ結論は出ていない。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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