33歳でユーブライドを始めた夜。役所で震えた独身証明書の話
役所の窓口で「独身証明書を申請したい」と言ったとき、窓口の人は普通の顔をしていた。恥ずかしいのは自分だけだった。33歳、婚活の始まり。役所の窓口で「独身証明書を申請したいんですが」と言ったとき、手が少し震えていた。
正直に言う。役所で震えながら「独身証明書」と言ったけど、始めた。
窓口の女性は普通の顔で「はい、こちらに記入してください」と書類を出してくれた。周りに人はいなかった。でも耳が熱かった。婚活をしているということを、公的な書類という形で証明することの、なんとも言えない感覚。
ユーブライドを選んだ理由
独身証明書は本籍地で申請が必要で、私は横浜市が本籍地だったため、平日の午後に仕事を半休して取りに行った。横浜市庁舎の窓口は思ったより空いていて、番号札を取って5分で呼ばれた。書類に記入する手がまだ震えていた。ボールペンの字が少し歪んだ。
書類が届くまで数日かかって、封筒を開けるとき一人で部屋にいたのに、なぜか正座して開けた。「独身証明書」という文字を見つめて、深呼吸を1回した。
33歳。Pairsは28歳から2年使った。マッチングはそれなりにしたけど、「なんとなく会って、なんとなく連絡が途絶える」を何十回も繰り返して、スマホの通知音を聞くだけで胃がきゅっとするようになった。アプリを開く指が重くなっていた。
ユーブライドを選んだのは、友達の一言がきっかけだった。吉祥寺の居酒屋で焼き鳥を突きながら、同い年の友達が言った。
「独身証明書出すアプリにしたら、既婚者に当たらなくなった」
焼き鳥のタレの匂いが煙と一緒に漂っていた。その言葉を聞いた瞬間、喉の奥がきゅっとなった。Pairsで、プロフィールに「独身」と書いてあったのに実は別居中だった男に会ったことがある。表参道のカフェで2時間話して、帰りの電車でインスタを見たら、子供と映っている写真があった。あのときの、胃の底が冷えて、手のひらが汗びっしょりになった感覚。二度と味わいたくなかった。
最初の2週間——数より安心
ユーブライドにアップロードして、審査完了まで4日待った。承認のメールが来た夜、プロフィールを仕上げて、初めていいねを送った。
最初の2週間で来たいいねは12件。Pairsの半分以下。スマホを開くたびに、通知の少なさに背中が冷えた。「やっぱりダメかな」と思った瞬間もあった。
でも、いいねを送ってきた人全員のプロフィールに「独身証明書提出済み」のマークがついていた。その3文字が、画面の中に安心感を作っていた。数より質。母数じゃなくて信頼。33歳の私が欲しかったのは、そっちだった。メッセージの中身もPairsとは違った。「よろしく」だけじゃなくて、「プロフィールの○○に共感しました」と書いてくる人が多かった。
3人目——六本木のイタリアンで
3人目に会ったのは、登録から5週間後。
六本木のイタリアンで夕食をとりながら、向かいの席で彼がワイングラスを回していた。キャンドルの火が揺れて、白ワインのグラスに光が反射していた。トマトとモッツァレラの前菜がテーブルに届いて、バジルの香りが鼻をくすぐった。
「独身証明書、恥ずかしかったですよね、取りに行くとき」
彼が少し笑いながら言った。
「恥ずかしかった」と即答した。彼も笑った。
「でも、同じ手間をかけた人だけがいる場所って、それだけで安心しませんか」
そうかもしれないと思った。役所に行った自分の手間が、会う相手への信頼の根拠になっていた。面倒だったこと、恥ずかしかったこと、半休を使ったこと。全部が「この人も同じことをした」という安心に変わっていた。
彼の話し方は穏やかだった。声のトーンが一定で、焦っていない。フォークでパスタを巻きながら、仕事の話、家族の話、休日の過ごし方。Pairsで会った人たちの「盛り上げよう」という圧がなくて、ただ静かに、知り合おうとしている感じがした。窓の外の六本木の夜景がぼんやり光っていた。
「ユーブライド、なんで選んだんですか」と聞いた。
「結婚相談所はまだ早い気がして。でもPairsはもう卒業したくて。ちょうどいい真ん中が、ここだった」
——同じだ。同じ理由で、同じ場所にたどり着いている。グラスのワインを一口飲んだ。酸味がちょうどよくて、喉を通るとき少しだけ体が温まった。フォークがお皿に当たるかちゃんという音が、妙に心地よかった。
まだ途中。でも
まだ交際には至っていない。でも、ユーブライドで出会った人たちは、Pairsで会った人たちより「ちゃんと話そうとしている」感覚があった。メッセージの返信も早いし、会話の内容も「今度」より「いつ」が先に来る。曖昧さを楽しむフェーズを、もう卒業した人たちの集まりだった。
33歳でようやく婚活と正面から向き合えた気がする。28歳から5年間、「いつか自然に出会える」と言い聞かせていた。でも自然には来なかった。独身証明書を取りに行ったあの恥ずかしい午後が、本当の入口だった。
恥ずかしさの先にしか安心はないのに、それでも進んだ。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。