10歳年上の人とマッチして、恋愛の「正解」が全部ひっくり返った
25歳の私には見えなかった景色を、35歳の彼は当たり前のように知っていた。
35歳。プロフィールを見た瞬間、「ないな」と思った。
私は25歳。10歳差。お父さんとまではいかないけど、完全に「上の世代」。友達に言ったら「おじさんじゃん」って言われる距離。
でもプロフィールの一文が引っかかった。「好きな場所:神楽坂の裏路地」。私も神楽坂が好きだった。あの石畳の坂道と、路地裏の小さな料理屋の灯り。それを「好きな場所」に挙げる人に、ちょっとだけ興味が湧いた。
いいねを返した。マッチした。
最初のメッセージ。「神楽坂お好きなんですね。おすすめの店ありますか?」
返信。「裏路地に、カウンター8席だけのフレンチがあります。ワインの品揃えがすごくて、マスターが気分で料理を決めてくれる店。よかったら今度。」
同世代の男の子なら「焼肉行きません?」か「カフェ行きましょう!」。この人は違った。
怖さ半分、好奇心半分で、会うことにした。
初デート:知らない世界の入口
待ち合わせは神楽坂の毘沙門天の前。土曜の18時。
彼——シュンさんは、ネイビーのコートにグレーのマフラー。写真より少しだけ老けてた。でも不思議と「おじさん」とは思わなかった。姿勢がよくて、目が穏やかで、笑うと目尻にシワができて、それが嫌じゃなかった。
「寒くない? もう少し歩くけど」
「大丈夫です」
石畳の路地を2分くらい歩いて、看板のない店に入った。木のドア。中は薄暗くて、ジャズが流れてて、カウンターにキャンドルが灯ってた。
カウンターに並んで座る。彼がワインリストを開かずにマスターに話しかけた。
「今日のおすすめ、泡から始めていい?」
「シュンさん、今日はアルザスのクレマン開けたところ。ちょうどいいですよ」
シャンパングラスが来た。細かい泡が立ち上る。一口飲んだ。りんごみたいな香りがした。
「お酒、強い?」
「普通くらいです。ハイボールとか」
「ここのワイン、飲みやすいから油断すると酔うよ。ゆっくり飲んで」
同世代の男の子は「ガンガン飲もう」って言う。この人は「ゆっくり飲んで」って言った。その一言で肩の力が抜けた。
料理はマスターのおまかせ。鯛のカルパッチョ、鴨のコンフィ、きのこのリゾット。どれも小さなポーションで、宝石みたいに綺麗だった。
「美味しい……」
「でしょ。ここ、5年くらい通ってる」
5年。私が20歳の時から通ってる店。時間の厚みが違う。
会話の質が、違った
同世代とのデートは、だいたい「仕事何してるの」「趣味は?」「好きなタイプは?」の三本立て。面接みたい。
シュンさんは違った。
「最近何か面白いことあった?」
この質問が、すごく効いた。仕事の話でも趣味の話でもなく、「面白いこと」。何でもいい。自由度が高い。
「えっと……この前、会社の近くの公園で、鳩がカラスに立ち向かってるの見たんですよ。鳩ってビビりなのに、パンくずの前だけは強気で」
「いいね、鳩のプライド」
笑ってくれた。ジャッジしない笑い方。「面白いね」でも「変わってるね」でもなく、ただ一緒に面白がってくれる感じ。
2杯目のワインを飲みながら、シュンさんが言った。
「俺、25の時は仕事しか見えてなくて。週6で働いて、日曜は寝てた。誰かとゆっくりワイン飲むなんて考えもしなかった」
「今は?」
「今は、こうやって誰かと過ごす夜が一番贅沢だと思ってる。仕事は大事だけど、人生の全部じゃない」
25歳の私の耳には、それがすごく新鮮に聞こえた。私はまだ「仕事頑張らなきゃ」のフェーズにいる。でもこの人はその先を知ってる。
触れ方が、違った
3回目のデート。恵比寿の映画館で映画を観た後、近くのワインバーに入った。
カウンターで隣に座る。赤ワイン。彼の手が、グラスを持つ私の手に触れた。偶然なのかわざとなのか、わからなかった。指先がかすかに触れただけなのに、腕の内側がぞわっとした。
「手、冷たいね」
シュンさんが私の手を両手で包んだ。大きくて、あたたかくて、少しだけ硬い手だった。仕事で使ってる手だと思った。
心臓が肋骨をノックしてる。顔が熱い。ワインのせいにしたかったけど、違う。
「……あったかい」
それしか言えなかった。シュンさんは何も言わずに、ゆっくり指を絡めた。
同世代の男の子は、距離を詰めるのが急だった。3回目のデートで「うち来る?」。それが悪いとは言わない。でもシュンさんは違った。手を繋ぐことに、時間をかけてくれた。手を繋ぐこと自体を、ちゃんと味わってくれた。
帰り道、恵比寿の駅まで手を繋いで歩いた。3月の夜。街灯の下を歩く二人の影が長く伸びてた。
「送るよ」
「大丈夫です、一人で帰れます」
「知ってる。でも、もう少し一緒にいたい」
この人ずるい。こんな言い方されたら、断れない。
改札の前。向かい合った。彼の目が街灯に照らされて、深い茶色に見えた。
シュンさんが私の前髪をそっと横に流した。指先が額に触れた。そのまま頬を撫でて、顎に手を添えた。
息がかかるくらいの距離。彼の香水——ウッディで落ち着いた匂いが鼻先をくすぐった。
「帰りたくないって言ったら、困る?」
声が低くて、耳の奥が熱くなった。膝の力が一瞬抜けた。
「……困らない」
自分の声がこんなにかすれるなんて、知らなかった。
恋愛観が変わった3つのこと
シュンさんとの時間を通じて、それまでの恋愛観がひっくり返った。
1. 「スペック」は入口でしかない。
年齢、年収、身長。アプリで最初に見る数字。でもシュンさんとの時間で学んだのは、数字の向こうにある「時間の過ごし方」の方がずっと大事だということ。どんな店を知ってるか、どんな会話ができるか、どんなふうに人に触れるか。それは数字には出ない。
2. 「余裕」は年齢じゃなくて経験から来る。
シュンさんの余裕は、35年生きてきた時間の蓄積だった。でもそれは「年上だから余裕がある」って単純な話じゃない。たくさん失敗して、傷ついて、学んできた結果の余裕。だから押し付けがましくない。「俺はこう思うけど、君は?」って聞いてくれる。
3. 恋愛の「ペース」は自分で決めていい。
同世代と付き合ってた時、「3回目のデートで告白」「1ヶ月で体の関係」みたいな暗黙のタイムラインがあった。シュンさんにはそれがなかった。「急がなくていい。俺たちのペースで」。この一言で、恋愛にルールなんてないんだと気づいた。
今
シュンさんとは付き合って4ヶ月になる。年齢差を感じる瞬間はある。彼が好きな音楽を「知らない」と言うと、「そうか、あの頃まだ高校生か」って笑われる。それが悔しくもあり、面白くもある。
友達には「おじさんと付き合ってるの?」ってからかわれる。「おじさんじゃないし」って返す。でも心の中では思ってる。この人に出会わなかったら、私はまだ同世代のLINEの返信速度に一喜一憂する恋愛をしてた。
年齢で恋愛の相手を決めるのは、表紙だけで本を選ぶようなもの。開いてみないと、中に何が書いてあるかはわからない。
よくある質問
年上の人との恋愛で気をつけるべきことは何ですか?↓
10歳年上の彼氏との結婚は上手くいきますか?↓
年上パートナーとの恋愛で自分を見失わないコツは?↓
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。