「違うな」と思ったとき、迷わず断れるようになった夜の話
「違うな」と思っていても断れなくて、気持ちのない連絡を返し続けていた時期がある。傷つけたくない、嫌われたくない——その気持ちが相手への不誠実になっていた。マッチングアプリで学んだ、相手を傷つけにくい断り方の実践。
「違うな」と思ったのに、断れなかった時期がある。
会うたびに「また会いたい」という気持ちが出てこなかった。悪い人じゃない。会話は成立する。でも何かが足りなかった。「このまま続けても…」と思いながら、連絡が来たら返していた。
傷つけたくない。嫌われたくない。「ひどい人」と思われたくない。そういう気持ちが重なって、はっきり言えなかった。
そのまま会い続けて、関係が自然消滅するのを待っていた。返信を少し遅くしてみた。「忙しい」を言い訳にした。だんだん間隔が空いて、最後はどちらからも連絡しなくなった。「うまく終わった」と思っていた。でも、そうじゃなかった。
自然消滅の何が問題か
ある時期、別の出会いをきっかけに考えた。
自分が「曖昧に終わらせられた」側になったとき、どう感じるか。LINEの返信が少しずつ遅くなって、会う頻度が減って、気づいたら終わっていた。「何がダメだったのか」がわからないまま終わる。
その終わり方は、直接言われるより長く引きずった。「なんで」が答えられないまま残るから。
中目黒で一人でコーヒーを飲みながら、「私がやっていたのはこれだったんだ」と思った。3人分の自然消滅を、私は相手に経験させていた。その人たちが同じように「なんで」と思っていたかもしれないと気づいたとき、胸が痛くなった。
私が「自然消滅を待つ」をやっていたのは、相手を思ってではなくて、自分が傷つきたくないためだった。断られた怒りや悲しみを向けられたくなかった。ただそれだけだった。
正直に断ることを覚えた
今はこう伝えるようにしている。
「素敵な方だと思いますが、恋愛的な気持ちにはなれそうにないと感じています。申し訳ないですが、これ以上お会いするのは難しいと思います」
シンプルに、はっきり。傷つけようとしているわけじゃなく、正直に伝えている。理由をくわしく説明しない。「合わなかった」というのは言語化しにくいことが多いし、説明すればするほど傷つける場合もある。
「そう伝えてくれてよかったです」と言ってくれた人が何人かいた。「わからないまま終わるより、ちゃんと言ってもらえた方がよかった」「ずっと待っていたから、すっきりした」と。
断られても、「ちゃんと伝えてくれた人」という印象は残る。曖昧に消えていく人より、正直に言える人の方が、記憶に残る印象がいい。
断ることへの罪悪感の正体
断ることへの罪悪感は、「相手に失礼」と思っていたからだった。でも実際は逆で、ちゃんと断ることの方が誠実だった。
相手を否定しているんじゃない。相性が合わないという事実を伝えているだけ。その人の価値を否定しているわけじゃない。
断るときに大切なことをまとめると、はっきり言うこと(曖昧にしない)、相手を否定しないこと(「違う」のは相性であって、相手の価値ではない)、早めに言うこと(引き延ばすほど、相手の期待値が上がって傷が深くなる)。
断ることは、勇気がいる。でもそれが相手への誠実さだと思っている。
「ひどい人」と思われたくなくて逃げていたとき、一番ひどかったのは自分の行動だったかもしれない。
池袋の居酒屋で、曖昧な返事をした後悔
「また行こう」と言われて、「うん、また」と返した。池袋駅前の居酒屋を出た後、帰りの電車でずっと胃が重かった。「また」なんて思っていないのに、その場の空気を壊したくなくて曖昧に笑った。
3日後、デートの誘いが来た。既読にして、そのまま放置した。1週間後にもう一通。それも放置した。相手はきっと、何がダメだったのかわからないまま消えていく。その想像が、胸を刺した。
断り方のテンプレートより、タイミングが先
「ありがとう、でも恋愛としては考えられなくて」。この一文を送るのに必要なのは、勇気じゃなくてタイミングだった。2回目のデートの帰り際、直接会っているうちに伝える。LINEで後から送ると、文面を何時間も考えてしまう。
代官山のカフェで友人に相談したら、「断られた方は最初はショックだけど、曖昧にされるよりマシ」と言っていた。手のひらが汗ばむ。声が震える。でも、はっきり伝えた後の帰り道は、フェードアウトした日より軽かった。
断れるようになって、自分の軸が見えた
断る経験を重ねるうちに、「何が違うと感じるのか」が言語化できるようになった。恵比寿のカフェで友人に話したら、「それ、自分の好みがわかってきたってことだよ」と言われた。心臓がドクンとした。確かにそうだ。好きな人の条件じゃなく、「この感覚は違う」というセンサーが育ってきた。新宿の帰り道、断ることへの罪悪感が少し薄くなっていることに気づいた。手のひらの汗は相変わらず。でも、自分の軸を持つことへの安心感が、それを上回っていた。
断ることは拒絶じゃないのに、断れなかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。