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別れを決めた夜から3ヶ月、後悔した引き延ばしの話

付き合って9ヶ月、夕食を笑って過ごして、電車に乗った瞬間に気づいた。「もう無理かもしれない」と。胸のどこにも温度が残っていなかった。別れを決めてから実行するまで3ヶ月かかった。なぜ言えなかったか、正直に書く。

27歳・女性の体験
·橘みあ·7分で読める

正直に言う。9ヶ月付き合ったのに、電車で気づいた。


「もう無理かもしれない」と思った夜


付き合って9ヶ月目の、土曜日の夜だった。


彼と恵比寿で夕食を食べて、いつも通り笑って、いつも通り別れて、電車に乗った瞬間に、ふと思った。「あ、もう無理かもしれない」と。


胸が締め付けられるとか、涙が出るとか、そういうことじゃなかった。むしろ逆。何も感じなかった。2時間一緒にいたのに、胸のどこにも温度が残っていない。それが答えだった。わかっていた。


でも、別れを切り出したのは12ヶ月目だった。


3ヶ月、言えなかった。



傷つけたくない、という名の言い訳


彼は本当に悪い人じゃなかった。むしろ優しかった。LINEの返信は早くて、デートのお店は毎回調べてくれて、誕生日にはちゃんとサプライズを用意してくれた。ケンカしても翌日には謝ってくる。そういう人だった。


だから余計に言えなかった。


「別れたい」という言葉が、あの笑顔にどれだけ刺さるかを想像するだけで、喉の奥に何かがつっかえた。傷つけたくない。本心だった。でも今思えば、それは半分以上言い訳だった。


「私が変わればいいんじゃないか」と思って、努力もした。彼の話にもっと興味を持とうとした。デートのとき笑顔を意識した。LINEも丁寧に返した。でも気持ちは変わらなかった。冬の朝の窓ガラスみたいに、内側からじわじわ曇っていくだけだった。


努力でどうにかなるものと、そうじゃないものがある。それを認めたくなかっただけだ。



「言った瞬間」が怖かった


もう一つ、もっと正直に言うと、怖かった。


「別れたい」という言葉を口に出すことが。言った瞬間から現実になる。取り消せなくなる。それが怖かった。


彼氏がいる自分、という状態が消える怖さも少しあった。もう28歳だった。Pairsを再開する自分を想像したら、なんとも言えない気持ちになった。「マジでまたあそこから始めるの?」って。


自分の気持ちを疑っていた部分もあった。「本当に終わりにしたいのか?」「もしかしたら疲れているだけかも」「来月になったら変わるかも」と、自問を繰り返した。でも来月になっても、再来月になっても、変わらなかった。電車の中で彼からLINEが来るたびに、画面を見る前に一瞬だけ息をひそめる自分がいた。それが答えだった。本当は、ずっとわかっていた。



中目黒での会話


10ヶ月目のある夜、大学からの友人と中目黒で飲んだ。


彼女は結婚して2年目で、恋愛相談を聞くのが上手い。正確には、「あなたの話を聞いて」と言いながら最終的に「で、どうしたいの?」と核心を突いてくる。


私がぐずぐずと3ヶ月分のモヤモヤを話したら、彼女はハイボールを一口飲んで言った。


「もう限界ってこと、彼は知ってるの?」


「知らない。言えてない」


「それ、早く言った方が相手のためにもなるよ」


刺さった。なんか、すごく刺さった。


自分では「傷つけたくない」という気持ちで引き延ばしているつもりだった。でも実際は、彼の時間を使い続けていた。彼は何も知らないまま、来月もまた一緒にいられると思って、次のデートのお店を調べているかもしれない。


それは優しさじゃない。全然、優しくない。


その夜、帰りの東横線の中で、スマホを開いてLINEの画面を長い時間見つめた。結局送らなかったけど、何かが変わった感覚があった。



言えた夜


11ヶ月目に入ってから、もう2週間以上、ずっとそのことばかり考えていた。


切り出したのは、下北沢のカフェだった。夕方の5時。彼が「今日は早く会えた」と笑っているのを見ながら、私はコーヒーをひと口飲んで、「話があるんだけど」と言った。


自分の声が、他人の声みたいに聞こえた。


言葉を選んで、準備してきた文章を頭の中でたどりながら話した。「最近うまくいってない気がしていて」「気持ちが変わってしまって」「ごめんなさい」。ありきたりな言葉しか出てこなかった。


「いつかくると思ってた」と彼は言った。


「そうだったんですね」と返したら「うん、なんとなくわかってた」と言われた。


なんとなくわかってた。


その言葉を聞いた瞬間、頭の中が静かになった。怒るわけでも、泣くわけでもなく、ただ、静かに。ああそうか、と思った。彼もずっと感じていたんだ。電車の中で私がひそかに息をひそめていたように、彼もどこかで察していた。


だったら、もっと早く言えばよかった。


3ヶ月も引き延ばして、何が優しさだったんだろう。



後から気づいたこと、ぜんぶ


別れてから1ヶ月経って、少し落ち着いてから、あの3ヶ月を振り返った。


読者に同じ経験をさせたくないから、注意点を正直に書く。


1. 「傷つけたくない」は、ほぼ自分への言い訳だった。本当に相手を思うなら、早く伝える方が誠実だ。引き延ばせば引き延ばすほど、相手は何も知らずに未来に向けて投資し続ける。


2. 気持ちを「疑う」のと「確認する」のは違う。「本当に終わりにしたいのか」と問い続けることが誠実に見えて、実際は決断を避けているだけのことがある。答えが3ヶ月変わらなかったなら、それが答えだ。


3. 「言葉にした瞬間が怖い」は正直な感覚だけど、その怖さは言った後に消える。言えない3ヶ月の方が、ずっと苦しかった。


4. 誰かに話すことで変わることがある。私の場合は中目黒の友人だった。一人で抱えていると、ぐるぐると同じところを回り続ける。外から言葉をもらって初めて動けることがある。


Pairsを再開したのは、別れてから2ヶ月後だった。怖いかなと思ったけど、意外とそうでもなかった。スマホの画面を開く前に息をひそめなくていい、それだけで、随分ちがった。



それでも後悔している


今でも思う。あの3ヶ月で、私も彼も何を消費したんだろう、と。


時間だけじゃない。感情も、エネルギーも、一緒に笑う機会も。終わっていく関係の中で費やしたぜんぶが、もったいなかった。


決めたなら、早く。


それが、相手への誠実さだったと今はわかる。あの夜、恵比寿からの電車の中で気づいた瞬間に動けていたら、と思う。


怖くても、言葉にすることでしか始まらない終わり方がある。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

このテーマを読む:失恋・別れ体験談

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