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恋愛体験談エッセイPairs

合コンで「アプリやってる?」と聞かれた。バレてた

大学時代の友達が開いた合コンで、向かいの男に「Pairsやってるでしょ?見たよ」と言われた。グラスを持つ手が固まった。恵比寿の居酒屋で、5人の視線を浴びながら笑うしかなかった夜の話。

25歳・女性の体験
·橘みあ·5分で読める

恵比寿の居酒屋、金曜の21時。


大学の友達が「面白い人たちいるから来なよ」と誘ってきた合コンだった。3対3。相手側は友達の会社の同僚らしい。席について、ハイボールを頼んで、「よろしくお願いします」のターンが終わったところで、向かいに座った男がにやっと笑った。


「あ、もしかしてPairsやってない?」


グラスを口元に運んでいた手が止まった。


「見たことある気がして。写真、あのカフェで撮ったやつでしょ」


心臓が喉まで上がってきた感覚。隣の友達がこっちを見た。向かいの男の隣の人も「え、マジ?」みたいな顔をしている。テーブルの5人分の視線が、全部こっちに向いていた。


「……え、なんのこと?」


声が裏返った。完全に裏返った。


写真でバレた。中目黒のあのカフェ


Pairsのメイン写真を、中目黒のカフェで撮ったやつにしていた。友達に撮ってもらった、窓際の席で笑っている写真。お気に入りの一枚で、光の入り方がよくて、自分でも「これはいい」と思って設定した。背景にお店のロゴが映り込んでいるのは知っていたけど、「誰も気にしないだろ」と思っていた。


甘かった。


「あの店、俺もよく行くんだよね。で、見覚えあるなと思って」と向かいの男——後でわかったけど、タカシさん——が続けた。「いや、別にいいじゃん。俺もやってるし」


その一言で、空気がちょっと変わった。「え、お前もやってんの」と横の人が突っ込んで、タカシさんが「うるせえよ」と笑って。テーブルが少しだけ緩んだ。


でも、私はまだ胃のあたりがぎゅっとしていた。ハイボールの氷がカランと鳴った音が、やけに大きく聞こえた。


隣の友達の反応が一番きつかった


向かい側が盛り上がっているのを横目に、隣の友達——まいが、小声で聞いてきた。


「え、Pairsやってたの? 知らなかった」


まいには言っていなかった。アプリを始めたのは3ヶ月前で、誰にも言わずにこっそり登録した。「出会いがない」とは言っていたけど、「アプリ始めた」とは一回も。言えなかった。25歳で出会いを求めてアプリに頼っている自分を、どこかで恥ずかしいと思っていたから。


「……うん。最近ちょっとだけ」


「なんで言ってくれなかったの」


まいの声は責めている感じじゃなかった。むしろ、少し寂しそうだった。箸を置いて、こっちをまっすぐ見ていた。そのトーンのほうが、タカシさんに見つかったことよりずっと胸に刺さった。


「なんか……恥ずかしくて」


「恥ずかしいことじゃないのに」


まいはそれだけ言って、枝豆をつまんだ。その横顔を見ながら、喉の奥がきゅっと締まった。隠していたのは、まいを信頼していなかったからじゃない。自分が「アプリをやっている人間」だと認めるのが怖かっただけだ。


恵比寿の路上で、酔ったまま考えた


合コンは23時ごろに解散した。まいと二人で恵比寿駅まで歩きながら、ずっと黙っていた。3月の夜風がまだ冷たくて、ジャケットの前を合わせた。駅前の信号待ちで、まいが言った。


「タカシさん、悪い人じゃなかったね」


「うん。でも、あの『見たよ』は心臓止まるかと思った」


「あはは。でもさ、みんなやってるんだよ、結局」


まいはそう言いながら、酔って少し赤くなった顔で笑った。信号が青になった。改札に向かいながら、まいが「私もやろうかな」と言った。


「え?」


「だって、出会いないし。紹介してよ、使い方」


笑った。なんか、力が抜けて笑ってしまった。恵比寿駅の改札の前で、二人でけらけら笑った。酔っていたのもあるけど、それだけじゃなかった。ずっと一人で抱えていた「恥ずかしさ」が、まいの「私もやろうかな」で軽くなった。


バレた後に残ったもの


帰りの山手線で、ぼんやり考えた。窓に映った自分の顔が、疲れていた。でも口元が少し緩んでいた。


あの瞬間、「バレた」と思った。でも実際にバレて何が起きたかというと、タカシさんは「俺もやってる」と笑って、まいは「私もやろうかな」と言って、テーブルの空気はむしろ柔らかくなった。


怖かったのは「バレること」じゃなかった。「バレたときに、どう思われるか」を想像して、勝手に縮こまっていた自分がいただけだった。タカシさんがもし黙っていたら、私はこの先もずっと一人で隠し続けていた。バレたことで逆に楽になるなんて、想像もしていなかった。


翌週、まいにPairsの登録を手伝った。代官山のカフェで、プロフィール写真を選びながら、「背景にロゴが映り込まないようにね」と言ったら、まいが「それ実体験?」と笑った。


「実体験」と答えた。みぞおちのあたりがまだ少しだけ疼いたけど、前よりは軽くなっていた。まいが隣で真剣にプロフィール文を考えている姿を見て、「ああ、これ普通のことだったんだ」と思えた。


タカシさんとはその後、LINEを交換したけど特に進展はない。正直、あの「見たよ」の第一印象が強すぎて、恋愛対象として見られるかは微妙なまま。


でも合コンに行く前と後で、ひとつだけ変わったことがある。アプリのことを、人に言えるようになった。「恥ずかしい」が「まあ、やってるけど」に変わっただけ。それだけの話。


ただ、まいに「なんで言ってくれなかったの」と言われたときの、あの少し寂しそうな声は、今でも耳に残っている。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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