付き合って2ヶ月で初めて喧嘩して、先に謝ったのは私だった
お風呂の中で気づいた。私が欲しかったのは「謝罪」じゃなかった。
喧嘩の原因は、ランチのキャンセルだった。
Pairsで出会った彼——慎一——とは、付き合って2ヶ月が経っていた。土曜日の午前中に会う約束をしていた。前夜に「明日楽しみにしてます」とLINEを送ったら「俺も」と来た。
当日の朝9時、スマホを見たら「今日仕事が入った、午前は無理かも」というLINEがあった。送信時刻は7時半。起きたら来ていた。
「わかった」と返した。
わかった、だけ。それ以外何も言えなかった。言えなかったというより、「わかった」以外に何を言えばいいかわからなかった。怒っているのか、がっかりしているのか、ただ疲れているのか、自分でもよくわかっていなかった。
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午後、彼から「午後なら大丈夫になった、どうする」というLINEが来た。
「じゃあ午後で」と返した。
会ったのは14時。渋谷でランチ。彼は「今日は朝から急に入って、ごめん」と言った。「いいよ」と私は言った。でも「いいよ」と言いながら、「よくない」と思っていた。
何がよくないのか、自分でもうまく言語化できなかった。午前のキャンセル自体は仕方ない。でも何かが引っかかっていた。
ランチを食べながら、会話がいつもより弾まなかった。私の返事が短い。彼も気づいていたと思う。でも何も聞いてこなかった。「今日のごめんな」と言ったのに、それ以上は踏み込まなかった。
別れ際、「また連絡する」と彼が言った。「うん」と私は答えた。
電車に乗って、一人になってから、胸の底に重いものが沈んでいるのを感じた。
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夜、アパートに帰って、お風呂に入った。
お湯に浸かりながら、ようやく整理できた。
私が欲しかったのは「謝罪」じゃなかった。「午前はダメだけど、午後からでも大丈夫ですか」という一言だった。仕事が入ったのは仕方ない。でも「午前は無理」の連絡で終わりじゃなくて、「午後は大丈夫か確認する」まで含んでいてほしかった。
自分から「どうする?」って聞いてきたのは、それが言いたかったから。「ごめん、急だけど、午後は?」ではなく「無理かも」で終わっていたことが、引っかかっていた。
でもそれを彼に伝えていなかった。言わないまま「いいよ」と言い続けていた。
怒る権利があるとすれば、伝えてからだ。伝えないで「いいよ」と言い続けて怒るのは、フェアじゃない。
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風呂から上がって、スマホを開いた。23時だった。
「さっきはちゃんと話せなくてごめん。今朝、ちょっとがっかりしてた」とLINEした。「急なキャンセルが嫌だったとかじゃなくて、午後は大丈夫かって確認してほしかっただけで。言わなかった私も悪かった」。
既読がついてすぐ電話が来た。
「言ってくれてよかった。俺、全然気づいてなかった」と彼が言った。「午後に自分から言ったから、大丈夫かなと思ってた」。
「それが違った」
「そうか。次からは確認する。ごめん」
「私も言わなかったからこそ、ごめん」
電話の向こうで沈黙があって、それからお互い「まあ」と言って笑った。
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翌週の土曜日、朝からLINEが来た。
「午前からいい?」
胸の奥が少しほわっとした。「いいよ」と返した。今度は本当の「いいよ」だった。
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「図書館でそれぞれ本を読みましょう」。変なデートだと思った。でも千駄木の図書館で4時間過ごして、帰り道、私は初めてこの人のことが好きだと気づいた。
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先に謝ったのは私だった。でも謝ることで、言えていなかったことを伝えられた。謝罪が目的じゃなくて、正直に話すための入口だった。
好きな人に「正直に言う」のは、思ったより勇気がいる。でも言わないと、ずっとお風呂で一人で整理し続けることになる。
「いいよ」が本当の「いいよ」になる関係を、少しずつ作っていく。
「午前からいい?」という5文字は、私がお風呂で考えたことをちゃんと伝えていたということだ。彼は聞いてくれた。それで十分だった。
一回の喧嘩で、お互いの伝え方が少し上手くなった。それを「成長」と呼ぶには大げさだけど、少しだけ近くなった感じがした。好きな人と喧嘩することは、より正直になるための練習だ。
「いいよ」が本当の「いいよ」になるまでに、一回喧嘩が必要だった。それは遠回りじゃなくて、近道だったかもしれない。
先に謝れた自分を、後から少し褒めた。「まあよく言えたじゃないか」と思えるくらいには、あの夜の選択が正しかった。
「午前からいい?」というLINEを受け取った朝、気づいたら笑っていた。怒っていたのが、ちゃんと届いたということだ。届けた自分に、ほっとした。
喧嘩は怖い。でも怖いまま黙っていると、もっと遠ざかる。声に出すことで、二人の輪郭がはっきりする。
「先に謝った」という事実は、負けじゃない。正しいことを先に選んだということだ。
喧嘩の夜に気づいた。「いいよ」が本当の「いいよ」になるためには、言わないといけないことを言うしかない。それが、関係を作ることだった。二人でお風呂上がりの電話で笑い合えた夜が、一番よく覚えている。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。