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恋愛体験談Pairs

付き合って2ヶ月で初めて喧嘩して、先に謝ったのは私だった

お風呂の中で気づいた。私が欲しかったのは「謝罪」じゃなかった。

27歳・女性の体験
·橘みあ·5分で読める

喧嘩の原因は、ランチのキャンセルだった。


Pairsで出会った彼——慎一——とは、付き合って2ヶ月が経っていた。土曜日の午前中に会う約束をしていた。前夜に「明日楽しみにしてます」とLINEを送ったら「俺も」と来た。


当日の朝9時、スマホを見たら「今日仕事が入った、午前は無理かも」というLINEがあった。送信時刻は7時半。起きたら来ていた。


「わかった」と返した。


わかった、だけ。それ以外何も言えなかった。言えなかったというより、「わかった」以外に何を言えばいいかわからなかった。怒っているのか、がっかりしているのか、ただ疲れているのか、自分でもよくわかっていなかった。


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午後、彼から「午後なら大丈夫になった、どうする」というLINEが来た。


「じゃあ午後で」と返した。


会ったのは14時。渋谷でランチ。彼は「今日は朝から急に入って、ごめん」と言った。「いいよ」と私は言った。でも「いいよ」と言いながら、「よくない」と思っていた。


何がよくないのか、自分でもうまく言語化できなかった。午前のキャンセル自体は仕方ない。でも何かが引っかかっていた。


ランチを食べながら、会話がいつもより弾まなかった。私の返事が短い。彼も気づいていたと思う。でも何も聞いてこなかった。「今日のごめんな」と言ったのに、それ以上は踏み込まなかった。


別れ際、「また連絡する」と彼が言った。「うん」と私は答えた。


電車に乗って、一人になってから、胸の底に重いものが沈んでいるのを感じた。


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夜、アパートに帰って、お風呂に入った。


お湯に浸かりながら、ようやく整理できた。


私が欲しかったのは「謝罪」じゃなかった。「午前はダメだけど、午後からでも大丈夫ですか」という一言だった。仕事が入ったのは仕方ない。でも「午前は無理」の連絡で終わりじゃなくて、「午後は大丈夫か確認する」まで含んでいてほしかった。


自分から「どうする?」って聞いてきたのは、それが言いたかったから。「ごめん、急だけど、午後は?」ではなく「無理かも」で終わっていたことが、引っかかっていた。


でもそれを彼に伝えていなかった。言わないまま「いいよ」と言い続けていた。


怒る権利があるとすれば、伝えてからだ。伝えないで「いいよ」と言い続けて怒るのは、フェアじゃない。


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風呂から上がって、スマホを開いた。23時だった。


「さっきはちゃんと話せなくてごめん。今朝、ちょっとがっかりしてた」とLINEした。「急なキャンセルが嫌だったとかじゃなくて、午後は大丈夫かって確認してほしかっただけで。言わなかった私も悪かった」。


既読がついてすぐ電話が来た。


「言ってくれてよかった。俺、全然気づいてなかった」と彼が言った。「午後に自分から言ったから、大丈夫かなと思ってた」。


「それが違った」


「そうか。次からは確認する。ごめん」


「私も言わなかったからこそ、ごめん」


電話の向こうで沈黙があって、それからお互い「まあ」と言って笑った。


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翌週の土曜日、朝からLINEが来た。


「午前からいい?」


胸の奥が少しほわっとした。「いいよ」と返した。今度は本当の「いいよ」だった。


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先に謝ったのは私だった。でも謝ることで、言えていなかったことを伝えられた。謝罪が目的じゃなくて、正直に話すための入口だった。


好きな人に「正直に言う」のは、思ったより勇気がいる。でも言わないと、ずっとお風呂で一人で整理し続けることになる。


「いいよ」が本当の「いいよ」になる関係を、少しずつ作っていく。


「午前からいい?」という5文字は、私がお風呂で考えたことをちゃんと伝えていたということだ。彼は聞いてくれた。それで十分だった。


一回の喧嘩で、お互いの伝え方が少し上手くなった。それを「成長」と呼ぶには大げさだけど、少しだけ近くなった感じがした。好きな人と喧嘩することは、より正直になるための練習だ。


「いいよ」が本当の「いいよ」になるまでに、一回喧嘩が必要だった。それは遠回りじゃなくて、近道だったかもしれない。


先に謝れた自分を、後から少し褒めた。「まあよく言えたじゃないか」と思えるくらいには、あの夜の選択が正しかった。


「午前からいい?」というLINEを受け取った朝、気づいたら笑っていた。怒っていたのが、ちゃんと届いたということだ。届けた自分に、ほっとした。


喧嘩は怖い。でも怖いまま黙っていると、もっと遠ざかる。声に出すことで、二人の輪郭がはっきりする。


「先に謝った」という事実は、負けじゃない。正しいことを先に選んだということだ。


喧嘩の夜に気づいた。「いいよ」が本当の「いいよ」になるためには、言わないといけないことを言うしかない。それが、関係を作ることだった。二人でお風呂上がりの電話で笑い合えた夜が、一番よく覚えている。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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