付き合って2週間で共通の友達が発覚した——3人通話の気まずい40分
世界が狭い。そして、こういうときの三人通話は、予想より40倍気まずい。
「由佳のこと知ってる?」
その一言で、夜の空気が変わった。
アプリで知り合った亮とのLINEは、毎日続いていた。4往復目か5往復目か、「友達の結婚式で中目黒行ったんです」と私が書いたら「中目黒、いいですよね。どの辺ですか」「川沿いのレストランで」「あー、もしかして由佳ちゃんの?」と来た。
手が止まった。
由佳は大学の友人で、先月結婚したばかりだった。亮は高校の同級生だったらしい。世界の狭さに、笑うより先に「どうしよう」と思った。
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正確に言うと、由佳とのつながりが判明したのはマッチングから4往復目で、まだ「付き合う」とか「好き」とかそういう話は何もない段階だった。ただ毎日40往復くらいメッセージしていて、「面白い人だな」とは思っていた。
「由佳ちゃんの結婚式に来てた?」と亮が聞いてくる。「来てました。新郎友人として?」「そう。新婦側は?」「大学の友人として」。
画面の前で、なんとも言えない気持ちになった。同じ結婚式にいたかもしれない。会っていたかもしれない。マッチングアプリで繋がる前に、リアルで交差していたかもしれない。
「由佳に聞いてみる?」と亮が言った。「……聞きます?」「どうしましょう、笑」「なんか気まずいですね」「でも気になりますよね」。
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その夜、由佳に「亮って知ってる?」とLINEした。
「知ってる!高校の友達!なんで??」と即レスが来た。「Pairsでマッチングしてて」「えーーーーーー!?!?」と絵文字まみれで返ってきた。
「3人で通話しよう」と由佳が言い出した。
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3人通話は、21時に始まった。
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withでマッチしたのは、同じフロアで働いているはずなのに一度も話したことのない男性だった。お互い左にスワイプしなかった。さて、どうする。
由佳の声で「じゃあ二人とも揃いました」というところから始まって、最初の5秒は全員無言だった。気まずかった。こんなに気まずい5秒は久しぶりだった。
「えーとー」と由佳が言う。「じゃあ自己紹介は要りませんよね」「要りません」と私と亮が同時に言った。由佳が爆笑した。同時に言ったことで、少し笑えた。
「亮くんはこの人のことどう思ってるの?」と由佳が直球で聞いた。
「由佳!」と私が言う。「聞かないでいいです」と亮が言う。「え、なんで」「今聞く話じゃないから」。
「なんで?気になる」と由佳は引かない。
「あとで個人的に言います」と亮が言った。「今は俺が聞きたい。由佳はこの人のことどう言ってた?」「え?」「俺のことどう紹介したか」「言ってないよ、知り合いだって知らなかったんだから」「そうか」「亮くんは気に入ってるんでしょ、どうせ」「……まあ」「まあ、じゃないでしょ!笑」。
40分間、こんな感じだった。私はほぼ聞いているだけで、由佳と亮がペラペラ話していた。
通話が終わって10分後、亮からLINEが来た。
「気に入ってるって話、本当です。LINEで言うより直接言いたいですが、とりあえず伝えておきます」。
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翌週、恵比寿のカフェで初めて二人で会った。
「由佳の結婚式、席どこでした?」と亮が聞いた。「奥の方。窓際の」「もしかして向こうの列?」「そう」「俺、4席くらい離れてたかもしれません」。
「知らないまますれ違ってたんですね」と私が言ったら、「アプリで繋がってよかった」と亮が言った。
共通の友人がいると、相手の人となりが少し立体的になる。由佳が知っている亮と、私が話しているこの亮は同じ人で、その事実がなんとなく安心感になった。
世界は狭い。でも狭いと、逃げ場がない。それは悪いことじゃない。
むしろ、逃げなくていいということだ。
由佳には「3人通話ありがとう」と言った。「どういたしまして、付き合ったら報告してね」と来た。付き合ってから報告した。「早い!」と言われた。
3人通話の気まずい40分は、今では笑い話だ。由佳は「自分のプロデュース作品」と言っている。違う、と言いたいけど、まあ縁をつないでくれたのは確かだ。
恵比寿のカフェで、亮は「由佳に感謝しないといけないな」と言った。「3人通話は懲り懲りですけどね」と私が言ったら「でも意味があった」と彼が言った。そうだ、意味があった。
由佳は今でも「私が縁をつないだ」と言っている。まあ、そういうことにしておく。
世界が狭い、という事実は変えられない。ならば狭さを味方にした方がいい。由佳という共通項が、最初から私たちの間にあった。
3人通話の40分が、私たちの出会いの始まりになった。由佳のでしゃばりが、今では感謝に変わっている。世界が狭いと、縁が濃くなる。薄まらない縁の中に、ちゃんとした出会いがある。
「また由佳に3人通話しようよ」と亮が言った。「却下」と私は言った。「なんで」「あれは一生に一回でいい」「確かに」。それで笑い合えるようになったことが、一番の進歩だと思う。
逃げ場がない狭い世界で、ちゃんと向き合えた。それが一番大事だった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。