付き合って2年の記念日に、最初のメッセージのスクショを見せた
Pairsの最初のメッセージ、今でもスクショが残ってる。見せたら彼は「え、こんなこと言ってた?」と言った。覚えてないんだって。それが逆に笑えた。
付き合って2年。記念日は2月14日。バレンタインと丸かぶりで、毎年「チョコとプレゼントで金がかかる」と彼が言う。毎年私が「じゃあどっちかにする?」と言う。毎年彼が「いやどっちもいい」と言う。これが私たちの2月の恒例行事。
今年は中目黒のフレンチ。2人でコースを頼んで、グラスワインを追加して、デザートが来る前に私はスマホを出した。
「見せたいものがある」
彼——翔太が首を傾げた。
「Pairsの最初のメッセージ、スクショしてたんだよね。ずっと持ってた」
「え。見たい」
スマホを横に向けた。2年前の画面。翔太のアイコンと、吹き出し。
「はじめまして。プロフィールに吉祥寺のカフェが好きと書いてあったのを見て、気になりました。僕も吉祥寺によく行くので、もしかしたらどこかですれ違ってたかもしれないと思うと、少しだけ嬉しい気持ちになりました。よかったらお話ししませんか」
翔太が画面をじっと見た。
「……え、俺これ書いた?」
「書いた」
「『少しだけ嬉しい気持ちになりました』? 俺がこんなこと書いた?
「書いた」
「……まじか」
目を丸くして、もう一度スクショを読んでいる。耳の先が少し赤い。28歳の今も、照れると耳が赤くなる。2年経っても変わらない。
「覚えてないの?」
「全然。そんな丁寧なメッセージ送ってたっけ」
「送ってた。私これ受け取った時、返信に40分かかったんだよ。どう返そうか考えて」
「え、そうなの」
「マッチングアプリのメッセージでそんなに悩んだの初めてだった」
デザートが来た。チョコレートムースと洋梨のコンポート。翔太がフォークを取りながら、また画面を見た。
「『すれ違ってたかもしれない』ってどこから来たんだろ」
「知らないよ(笑)。あなたが書いたんだよ」
「言われると、なんかわかる気もするんだよな。その頃よく行ってたカフェが確かにあって、路地の奥のやつ。もしかしてそのカフェ知ってる? って思ってたのかも」
「知ってる。私も行ってた。Coyoteっていう店」
「え。あのカフェ?」
「うん。もしかしてほんとにすれ違ってたかもよ」
翔太がフォークを置いた。「それは……怖い」と言いながら少し笑った。
「いい意味で?」
「いい意味で怖い」
窓の外、中目黒の目黒川に面した道。街灯の光が川面に映っていた。2月の夜。寒い。でも店の中は暖かくて、グラスワインが半分残っていた。
「他に何か残してる?」と翔太が聞いた。
「ある。最初にLINEを交換した日のトーク、最初のデートの後の感想LINEも」
「全部持ってるじゃん」
「記念に」
「オタク(笑)」
「恋愛オタクと付き合ってるんだよ、あなたは」
翔太がワインを一口飲んで、ちょっと黙ってから「……嬉しいけど」と言った。「嬉しいけど?」「ちゃんと覚えておけばよかった」。
「覚えてなくてもいい。私が覚えてるから」
「なんか、そっちの方が頼りにしてるみたいで申し訳ない」
「頼ってくれていい。記憶係だから」
デザートを食べ終わって、外に出た。川沿いを少し歩いた。2月の空気は冷たくて、翔太が肩を寄せてきた。SHIROのボディミルクの匂いがした。ずっと変わらない匂い。
「また今度、最初のLINEのやつも見せて」
「なんで」
「俺、こんな気の利いたこと言ってたのか気になる」
「言ってた。でも今の方がもっと気が利いてるよ」
翔太が少し笑った。「そうかな」「そう」。
2年前の最初の一文を、彼は忘れていた。でも私は今でも全部読める。その非対称さが、なんか愛おしい。
「少しだけ嬉しい気持ちになりました」と書いた人と、2年後の夜、中目黒の川沿いを歩いている。スクショを持ち続けてよかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。