投資詐欺に気づいた夜、後悔した2週間の話
2週間毎日やりとりして、3回電話した。「この人いいかも」と思い始めた頃に、投資の話が出た。恵比寿のカフェで検索した10分間が、お金を失うかどうかの分かれ目だった。
正直に言う。10日間信じたのに、LINE1通で気づいた。
「一緒にやって稼ごう」
スマホを持つ手が冷たくなった。ベッドの中で、天井を見つめた。2週間、毎日やりとりした人だ。3回電話して、笑い合った人だ。声も覚えている。
でもその一文で、何かが引っかかった。
マッチングから10日間、全部普通だった
相手のプロフィールは怪しくなかった。
30代・都内在住・金融系の仕事・笑顔の写真1枚。プロフィール文は「仕事が好きで、休日は料理と映画が好き」。どこにでもいる人に見えた。
マッチングして最初のメッセージが来た。「映画、最近何か観ましたか?」
Netflixで観た『ザ・グローリー』の話をしたら、「あれ面白いですよね、韓国ドラマ好きなんですか?」と返ってきた。そこから毎日、朝と夜にメッセージが来た。テンポがよくて、返信するのが楽しかった。
1週間後、電話をした。
声は自然で、話が面白かった。渋谷のおすすめのカフェの話、仕事の愚痴、最近行った旅行の話。「次に会う日を決めましょう」という話も出ていた。
胸の奥がじんわり温かくなる感覚があった。「この人、いいかもしれない」と。
10日目、空気が変わった
「最近FXで少し成果が出ていて、副業として始めたんですけど」
最初は「へえ、そういうことやってる人もいるんだ」くらいに思った。投資の話をする人はいる。それ自体は変じゃない。
でも次の日も同じ話だった。「利益が出てるスクリーンショット」が送られてきた。画面には数字が並んでいた。本物かどうかなんて、私にはわからない。
そして11日目の夜、「一緒にやって稼ごう」。
喉の奥がきゅっと詰まった。恋愛の話をしていたはずなのに、急にお金の話になった違和感。でもその違和感を打ち消すように、「この人は信頼できる人だから、悪意はないはず」という気持ちもあった。
恵比寿のスタバで検索した10分間
翌日の昼休み、恵比寿のスタバでアイスラテを飲みながら、スマホで検索した。
「マッチングアプリ FX 投資 誘い」
出てきた記事のパターンを読んで、手が震えた。
「最初は普通の恋愛トークで信頼を作る」「1〜2週間後に投資の話を出す」「成功しているスクリーンショットを見せる」「一緒にやろうと誘う」「入金先は海外のサイト」
全部、今の状況と一致していた。
ラテの氷がカラカラと鳴った。店内のジャズが遠くに聞こえた。自分がどれだけ「信じたかった」かがわかった瞬間、胸の奥に冷たいものが落ちてきた。
ブロックするとき、指が止まった
すぐにLINEをブロックした。
……と書きたいけど、実際はすぐにはできなかった。
ブロックボタンの上で指が止まった。「もしかして、本当にいい人で、ただ投資が趣味なだけかもしれない」という考えが浮かんだ。2週間分の楽しかったやりとりが頭の中を回った。
でも、検索した記事の中に書いてあった一文が頭に残っていた。「詐欺師は、あなたに好かれることが仕事です」
指が動いた。ブロック。画面が切り替わった。
そのあと、駅のホームで電車を待ちながら、ぼんやり線路を見ていた。騙されたわけじゃない。お金は1円も渡していない。でも信じかけた自分がいたことが、じわじわと情けなかった。
今でも覚えている「違和感」の正体
振り返ると、サインはあった。
プロフィール写真が1枚だけだった。SNSを聞いたら「やってない」と言われた。ビデオ通話は「恥ずかしい」と断られた。全部、後から考えれば不自然だった。でも「いい人かもしれない」という期待が、違和感を覆い隠していた。
気づかせてくれたのは「なんとなく変だ」という感覚だった。「いい人かもしれない」と「変だ」が同時にあって、後者を無視しなかったことが、お金を失わなかった理由だと思う。
マッチングアプリで投資の話が出たら、どんなにいい人でも一度立ち止まる。それだけでいい。
好意を信じたのに、違和感の方が正しかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。