男性にいいねを送り続けた夜、後悔して女性設定に変えた話
2年間、男性に「いいね」を送り続けた。毎回帰り道に「なんか違う」があった。友人に「女性も選べるよ」と言われた日、手のひらが汗ばんだまま設定画面を見つめていた。あの2年間の「なんか違う」の正体と、恵比寿のカフェで会った人の話。
「女性とも話せること、知ってた?」——その一言で、手が震えた。
Pairsを始めたのは27歳の春で、2年間、ずっと男性にいいねを送り続けていた。マッチングすることもあった。会うこともあった。渋谷のカフェ、新宿の居酒屋、中目黒のビストロ——デートも何度も行った。でも毎回、帰り道に「なんか違う」という感覚があった。いい人だったとしても。話が合ったとしても。
最初は「相手との相性の問題だ」と思っていた。もっといい人がいるはずだ、と思ってまた探す。それを2年繰り返した。
「なんか違う」の正体を、ずっと考えないようにしていた。
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「女性とも話せること、知ってた?」とミチンが言った
ミチンと話したのは、去年の冬だった。
ミチン——大学からの友人、韓国系日本人——は、私がアプリの話をすると必ず「どんな人を探してるの?」と聞いてくる。その日も代官山のスタバで同じように聞かれて、「なんか違う人ばかりで」と答えたら、ミチンが少し間を置いて言った。
「女性とも話せること、知ってた?Pairs」
コーヒーを飲んでいる途中で、手のひらが汗ばんだ。カップを持つ指が小さく震えた。
「男性しか選べないわけじゃないんだよ」とミチンは続けた。「設定変えれば女性も出てくるし、どちらでも選べる設定もある。私、知ってる人いるから」。
「なんで私に言うの」と聞いたら、ミチンは「なんとなく」と言った。「なんとなく、合ってるかなと思って」。
なんとなく、という言葉が、胸の奥にずしんと来た。
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その夜、アパートに帰って、一人で布団の上でスマホを開いた。
Pairsの設定画面を開く。「検索対象」の項目を見る。「男性」にチェックが入っていた。その横に「女性」「男女両方」という選択肢があった。
しばらく、その画面を見ていた。心臓がどくどくしていた。
怖い、という感情は、意外となかった。「変えていいのかな」という感覚でもなかった。ただ、静かに、「そうかもしれない」と思った。
「女性」に変えた。
画面が切り替わって、プロフィールが並んだ。
見た瞬間に、空気が変わった気がした。自分でもよくわからないのに、身体がそう言った。肩の力が少し抜けた。喉の奥のつかえが、すっと消えていく感覚があった。
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ユキさんとはじめて会った恵比寿のカフェで
最初にいいねを送ったのは、ユキさんというアカウントだった。
趣味に「本と映画とたまに料理」と書いてある。写真は一枚、日差しの中でコーヒーカップを持っているもの。顔が少しわかる。笑っている。
「いいねありがとうございます」と来た。「こちらこそ」と返した。
メッセージを送るのが怖かったわけじゃない。でも2年間、男性に送ってきたのと何かが違う感覚があった。緊張の種類が違う。「うまく話せるかな」じゃなくて「正直でいていいのかな」という緊張。
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ユキさんと会ったのは、1ヶ月後だった。
恵比寿のカフェ。向かい合って座って、コーヒーを飲みながら話した。カップを持つ手が最初だけ少し震えたけど、ユキさんが「この店、コーヒー美味しいですよね」と笑って、それで力が抜けた。「いつ頃から?」とは聞かれなかった。「どっちが好きなの?」とも聞かれなかった。ただ普通に、Netflix で観た映画の話をして、好きな食べ物の話をして、仕事の話をした。
帰り道、電車の中で気づいた。「なんか違う」がなかった。
「また会いたい」と思った。それだけだった。胸の奥が、じわっとあたたかかった。
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今、ユキさんと付き合って4ヶ月になる。
「いつ気づいたの?」と聞かれることがある。「2年前から気づいてたかもしれない」と答えると、「じゃあ遅すぎ」と笑われる。「遅くはない」と私は言う。「今ちゃんとここにいるから」。
2年間の「なんか違う」は、無駄じゃなかった。それがあったから、「これだ」がわかった。
自分を知るのに、かかる時間は人それぞれだ。
「女性に変えた日」のことを、今では笑って話せる。「2年もかかったんだよ」と言うと、ユキさんは「でも来てくれたから」と言う。
遠回りしたから気づけたのに、遠回りしなければもっと早く会えた。
よくある質問
2年間男性にいいねを送り続けた末に、女性設定に変えたきっかけは何でしたか?↓
使っていたアプリはPairsですか?↓
「なんか違う」の正体に気づいたのはいつでしたか?↓
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。