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恋愛体験談エッセイPairs

アプリで出会ったと言えなかった私が、堂々と言えるようになるまで

Pairsで出会った彼のことを、半年間ずっと「友達の紹介」と嘘をついていた。親友の結婚式で「馴れ初めは?」と聞かれた瞬間、心臓が止まりかけた。嘘をやめた日の話。

·橘みあ·5分で読める

「友達の紹介で」と、7回嘘をついた。


彼と付き合い始めてから半年間、出会いのきっかけを聞かれるたびに同じ嘘を繰り返していた。職場の同期、地元の友達、美容師さん。誰に聞かれても「共通の友達がいて」と言った。7回。数えていたわけじゃないけど、嘘をつくたびに胸の奥がチクっと痛んで、その感触だけが残った。


Pairsで出会った。それだけのことが、どうしても言えなかった。


マッチングアプリが恥ずかしいと思った理由は、自分でもよくわからなかった


28歳、メーカー勤務。大学を出て、東京に出てきて、気づいたら職場と家の往復だけの生活になっていた。合コンに誘われることもなくなったし、趣味のヨガ教室に出会いはなかった。Pairsを始めたのは、金曜の夜に一人でNetflixを観ながら「このままだとまずい」と思ったから。


登録は5分で終わった。写真を選んで、プロフィールを書いて、いいねを送った。1週間後にマッチした彼と代官山のカフェで初めて会ったとき、手のひらが汗ばんでいた。でも彼がアイスラテをこぼしかけて、二人で笑って、それで緊張がほどけた。SHIROのサボンの香りがするような、清潔感のある人だった。


付き合い始めて、最初に困ったのが「どうやって出会ったの?」という質問だった。


会社の同期に聞かれたとき、喉がキュッと詰まった。「え、あ、友達の紹介で」と言った自分の声が、自分じゃないみたいに聞こえた。同期は「へえ、いいね」と普通に返してくれたけど、帰りの丸ノ内線で、自分が何を恥ずかしいと思っているのかわからなくて、ずっとイヤホンの音楽が頭に入ってこなかった。


アプリで出会うことの何が恥ずかしいんだろう。「出会いがない」と認めることが恥ずかしいのか。「ネットで相手を探す」ということが恥ずかしいのか。それとも、「選んでもらえるように自分を並べた」ことが恥ずかしいのか。


全部だった気がする。でも一番は、「自力で出会えなかった人」と思われるのが怖かった。


親友の結婚式で、心臓が止まりかけた話


転機は、高校からの親友の結婚式だった。恵比寿のレストランウェディング。彼と一緒に出席した。


披露宴の途中、新婦の友人グループに呼ばれた。テーブルの席で「えー、隣にいるのが彼氏?」「かっこいいじゃん」という流れになって、友達の一人が無邪気に聞いた。


「で、二人はどうやって知り合ったの?」


心臓がドクンと跳ねた。手に持っていたシャンパングラスの表面が汗で曇ったのが見えた。隣の彼を見た。彼は少し笑っていた。穏やかな顔で、こっちを見ていた。私が何と答えるか、待っているような顔だった。


「と、友達の——」


言いかけて、止まった。


横にいる彼の目が見えた。いつもの優しい目。でもその瞬間だけ、少しだけ、何かを飲み込むような表情に見えた。気のせいかもしれない。でも私には「また嘘をつくの?」と言われた気がした。


彼が先に言った


沈黙は3秒くらいだったと思う。体感では30秒くらいだった。


彼が口を開いた。


「Pairsで出会いました」


さらっと。笑顔で。何でもないことみたいに。


テーブルの空気が一瞬止まって、友達の一人が「え、アプリ!?」と言った。でもすぐに別の友達が「うちの妹もPairsで付き合ってるよ」と返して、「マジで? 今多いよね」「私も実はやってたことある」と、一気に話が広がった。


私は何も言えなかった。グラスを持つ手が震えていた。恥ずかしさじゃなかった。彼が先に言ってくれたことへの感謝と、半年間嘘をつき続けた自分への情けなさが、同時に押し寄せてきて、目の奥がじんわり熱くなった。


テーブルの会話が盛り上がっている間、彼が耳元で小さく言った。


「俺は最初から恥ずかしいと思ったことないよ」


声が低くて、周りには聞こえていなかった。耳たぶの近くに彼の息がかかって、背中がぞくっとした。


アプリの出会いが恥ずかしくなくなった理由


結婚式の帰り道、表参道を二人で歩いた。11月の夜風が冷たくて、コートの襟を立てた。


「ごめんね、ずっと嘘ついてた」と言ったら、彼は「知ってたよ」と言った。


「知ってたの?」


「友達の紹介って言うたびに、ちょっと目が泳いでたから」


恥ずかしさで顔が熱くなった。今度は嘘の恥ずかしさじゃなくて、見抜かれていた恥ずかしさ。でも、それが不思議と嫌じゃなかった。


「俺さ、Pairsで出会えたの普通にラッキーだと思ってるよ。だってさ、あのアプリがなかったら、俺とお前は一生会わなかったんだよ」


イルミネーションが並木道を照らしていた。表参道のケヤキの光が、やけにきれいだった。


彼の言葉を聞いて、急に腑に落ちた。出会い方がどうとか、きっかけが何とか、そんなことは付き合ってしまえばどうでもよくなる。「どうやって出会ったか」より「出会ってどうなったか」の方が、ずっと大きい。


その日から、聞かれたら「アプリで」と答えるようにした。最初は声がうわずった。でも3回目くらいから普通に言えるようになった。言ってみたら、誰も何とも思っていなかった。引く人は一人もいなかった。「へえ」で終わるか、「私もやってる」と返ってくるか、そのどちらかだった。


半年間、一人で勝手に恥ずかしがっていただけだった。


今、聞かれたらこう答える


先月、会社の後輩に「彼氏とどうやって知り合ったんですか?」と聞かれた。


「Pairsだよ」


即答だった。後輩が「えー、いいなあ。私もやろうかな」と言った。「やりなよ」と返した。


あの結婚式の夜を思い出す。彼がさらっと「Pairsで出会いました」と言った瞬間のことを。あの3秒で、半年分の嘘が全部溶けた。


出会い方を恥じていたのに、出会えたことは誇っている。矛盾しているようで、たぶんみんなそうなんだと思う。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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