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札幌の冬にアプリを使った夜、後悔した北海道の半年間

札幌でPairsを開いた。マッチング数は東京の3分の1。冬のデートは雪と寒さとの戦い。でも、少ないからこそ「この人に会いたい」の純度が高かった。北海道でアプリを使った半年間の正直な記録。

·橘みあ·5分で読める

正直に言う。札幌でPairsを開いたら候補者が少なすぎたのに、半年続けた。


東京に住んでいた頃は、スワイプすれば次々と新しい顔が出てきた。札幌では30分もスワイプすると「近くにお相手がいません」と表示された。最初はバグかと思った。バグじゃなかった。これが札幌の現実だった。


数字のリアル:マッチング数は東京の3分の1


札幌の人口は約197万人。東京23区の7分の1。Pairsのアクティブユーザーも体感で3分の1くらいだった。


東京では週に15〜20件来ていた「いいね」が、札幌では5件前後。しかも距離フィルターを「札幌市内」にすると、表示される人がかなり限られた。「北海道全域」に広げると旭川や帯広の人も出てくるけど、旭川まで車で2時間。帯広なんて3時間半。現実的に会えるのは札幌市内か近郊だけだった。


プロフィールを何度も見直した。写真を変えて、自己紹介文を書き直して、コミュニティをたくさん入れて。でもマッチング数は劇的に変わらなかった。そもそも母数が少ないから、改善にも限界がある。


冬のデートは、戦いだった


札幌に来たのは9月。秋のうちは良かった。大通公園を歩いて、円山のカフェでコーヒーを飲んで。紅葉がきれいだったし、北海道の秋は短くて贅沢だった。


11月に初雪が降った。そこから世界が変わった。


12月のデート。狸小路のカフェで待ち合わせたのだが、外気温がマイナス5度。家を出た瞬間に鼻の奥がツンとして、唇が一瞬で乾いた。10分歩いただけで耳が痛くなった。ヒートテックを2枚重ねても寒い。おしゃれとか言ってる場合じゃなかった。


相手は札幌出身の人だった。「寒くないですか?」と聞いたら、「今日はまだマシですよ」と笑われた。マイナス5度が「マシ」。価値観が根本から違う。


カフェに入った瞬間、メガネが曇った。何も見えなくなって、手探りで席に着いた。「大丈夫ですか?」と笑われながら、「曇らないメガネ、買います」と答えた。向かい側で彼女が笑っていた。その笑い声が、冷えた体にじわっと染みた。


1月。デート場所がなくなった


1月、本格的な冬が来た。外を歩くデートは無理。路面がツルツルで、油断すると滑って転ぶ。実際、すすきの交差点で片足が滑って、隣にいた彼女の腕を思わず掴んだ。「大丈夫?」と支えてくれた。恥ずかしいのと、腕の温かさと、心臓のドキドキが全部混ざった。


冬の札幌でデートできる場所は限られる。サッポロファクトリー、ステラプレイス、大通のBISSE。基本的に地下か商業施設の中。「今日どこ行く?」の答えが3パターンくらいしかなかった。


「また地下街?」と言ったら、彼女が「じゃあ円山動物園行く?冬の方が動物元気だよ」と提案してくれた。マイナス8度の中、ホッキョクグマを見に行った。熊は元気だった。私はダウンジャケットの中で震えていた。でも、動物を見ながら二人で白い息を吐いているとき、「あ、なんかいいな」と思った。寒さが、距離を縮めてくれていた。


2月。雪まつりの夜に気づいたこと


2月の札幌雪まつりの夜。大通公園の雪像がライトアップされていて、観光客でごった返していた。彼女と並んで歩いていた。マイナス10度。吐く息が白くて、まつ毛に霜がついた。


「手、冷たくない?」と彼女が聞いた。


「冷たい。死にそう」


彼女が自分のポケットから手を出して、私の手を握った。手袋越しだったけど、体温が伝わってきた。


「こうすればいいでしょ」


心臓がどくんと鳴った。手袋の中で、指先がじわっと温かくなっていく。寒い場所で手を握ると、温度差で相手の体温がはっきりわかる。東京の夏に手をつなぐよりも、感覚が鋭かった。


雪像のライトが青から白に変わった。「きれい」と彼女が言った。私は雪像じゃなくて、彼女の横顔を見ていた。頬が赤くて、白い息が街灯に照らされていた。


少ないからこそ、見えたもの


札幌でアプリを使った半年間で、実際に会ったのは3人。東京なら同じ期間で10人以上会えたと思う。


でも、3人とも「会いたい」という気持ちの純度が違った。


選択肢が少ない分、一人一人のプロフィールをちゃんと読んだ。メッセージも丁寧に返した。「他に候補がいるから、この人は適当でいいや」という感覚がなかった。相手も同じだったと思う。やりとりが丁寧で、返信に気持ちが乗っていた。


東京にいたときは、マッチングの数をKPIみたいに追っていた。「今週は何人とマッチした」「何人と会った」。札幌ではそんなカウントに意味がなくなった。数じゃなくて、一人一人の濃度が全部だった。


雪まつりの夜に手を握ってくれた彼女とは、その後も続いた。


春になって、雪が溶けて、北海道大学のイチョウ並木を一緒に歩いた。「冬に会えてよかった」と彼女が言った。「なんで?」と聞いたら、「冬の札幌でわざわざ会いに来てくれる人は、本気でしょ」と笑った。


確かにそうだ。マイナス10度の中、滑る路面を歩いて、曇るメガネを拭きながら、それでも会いに行った。その事実が、言葉よりも説得力を持っていた。


寒い場所で始まる恋は、最初から本気しか残らない。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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