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ダブルテキスト禁止ルールを破った夜。26歳が後悔しなかった話

Pairsで「来週お茶しませんか」を送ったら既読がついた。月曜、火曜、何も来なかった。「ダブルテキスト禁止」という女子の不文律を知りながら、26歳の私は2日後にもう一度送った。ルールって誰のためにあるんだろうと思った話。

26歳・女性の体験
·橘みあ·5分で読める

日曜の夜11時すぎ、部屋の電気を消したまま布団の中でスマホを打った。


「来週どこかでお茶しませんか」


送信。


既読がついた。5秒後には画面を閉じて、天井を向いた。返信が来るとしたら、10分か、1時間か、明朝か。何度かシミュレーションして、そのまま眠ろうとした。眠れなかったけど。


月曜。朝も、昼も、夜も。なし。


火曜の昼。なし。


夜になった。外はもう暗くて、部屋の窓に自分の顔が薄く映っていた。渋谷で買ったYEECAAのルームウェアのままソファに沈んで、スマホを開いて、トーク画面を見て、閉じる。また開く。また閉じる。この繰り返しを、たぶん2日で50回くらいやっていた。


火曜の夜、2日間既読なしでダブルテキストを送った


Pairsで出会ったシンジ、28歳、商社勤務。写真より実物のほうがよかったタイプ。4回会って、毎回3時間くらい話した。最後のデートは吉祥寺のクラフトビールの店で、カウンター席に並んで座って、東京の家賃の話とか、子供の頃の夢の話とか、特に意味のないことをずっと話した。楽しかった。楽しかったはずだった。


でも「好き」も「付き合おう」も、まだ出ていない。なんとなく続いている、あのふわふわした状態。名前がついていないから、不安の置き場所もない。


2日と数時間で、私の頭は最悪の可能性を全部洗い出した。


「めんどくさいと思われたかな」「最後のデートで何か変なこと言った?」「そもそも脈なかったのかな」「既読スルーって実質無視だよね」「もしかして他に誰かできた?」「いや、それより単純に興味が冷めた?」——全部、最悪な方向に着地した。思考が勝手に転がって、止まらなかった。胸の真ん中あたりが、じわじわと重くなっていく感じ。


火曜の夜10時。


ぼんやりSNSを眺めていたら、恋愛系のアカウントの投稿が流れてきた。「ダブルテキストはするな」「必死に見える」「重い女認定される」「追う女は負け」——そういう見出しが並んでいた。前に読んだことがある。スクリーンショットを保存した記憶まであった。


わかってる。


でも2日、返信なし。


無視されている可能性と、普通に忙しい可能性、どっちだろう。5対5か、3対7か。どっちに転んでもおかしくない。このままもう1日待つのか。2日待ったのに、もう1日待てるのか、私は。


親指がトーク画面を開いていた。


「返信待ってます笑 もし忙しかったらゆっくりで大丈夫です」


送った。


ダブルテキスト。


してしまった。


枕に顔をうずめて、ばたばたした。足をバタバタさせながら「やってしまったやってしまったやってしまった」と小声でつぶやいた。26歳の深夜の部屋で、一人で。重い女だ。必死だ。追ってる。でも送った。もう消せない。


スマホが鳴ったのは、5分くらいしてからだった。


「ごめんなさい!! 月曜から商談が連続していて全然スマホ見れてなくて。全然気にしてないです、むしろ待たせてごめんなさい。お茶、行きましょう。週末どっちか空いてます?」


読んだ。もう一回読んだ。


既読なしの理由は「商談連続」だった。


普通だった。非常に、普通だった。


土曜、吉祥寺のカフェで「ダブルテキストしてしまいました」と話した


2日間私が積み上げた最悪の仮説は、「仕事が忙しかった」の一行で全部崩れた。胸の重さが、すっと引いていく。代わりに入ってきたのは、拍子抜けと、かすかな笑いと、自分への呆れ。あと、ちょっとだけ——本当にちょっとだけ——泣きたいような気持ち。


「土曜か日曜、どちらでも」


「じゃあ土曜! 吉祥寺でいい? 行きたかったカフェがあって」


「ぜひ」


スマホを置いて、天井を見た。部屋が静かだった。さっきまでの思考の渦が、うそみたいに消えていた。


土曜、吉祥寺のCOFFEE VALLEY。窓際の席で、彼は開口一番「本当にごめんなさい、ちゃんと謝りたかった」と言った。まっすぐな目で。「忙しかったのは本当なんだけど、確認できなかったことは俺のミスで。待たせてごめんなさい」。


謝られると思っていなかったから、ちゃんと受け取れなくて、「大丈夫です」しか言えなかった。


コーヒーが来て、少ししてから、私は「ダブルテキストしてしまいました」と正直に言った。なんとなく、言いたかった。


「え——」彼が少し笑った。「全然いいじゃないですか。むしろそのメッセージ見て、返さないとって思って、商談の合間に確認したんで」


少し間があった。


ダブルテキストが、背中を押した形になっていた。


窓の外、吉祥寺の午後が明るかった。ケヤキ通りの木の葉が風に揺れているのが見えた。なんでもない景色が、さっきよりずっときれいに見えた。


帰り道、駅まで歩きながら考えた。あの「ダブルテキスト禁止」というルールは、誰のためにあったんだろう。「必死に見える」という評価を恐れて、自分の気持ちを2日間、3日間、1週間と押し込めていく。それの何がいいんだろう。送りたかったら送ればよかった。1日目に送ればよかった。


ルールが私を守ってくれたことは、一度もなかった。


翌日、Apple Musicで偶然かかったCarole Kingの「I Feel The Earth Move」を聴きながら、ふと思った。誰かを好きでいることは、もっとずっと、不格好でいい。ダブルテキストをして、枕に顔をうずめて、足をバタバタさせながら返信を待つ。その全部が、ちゃんと私だった。


恋愛のルールより「送りたい」の方が正しいのに、守っていた。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#女性から送る#あるある#Pairs#吉祥寺#恋愛ルール

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