3日で消えた男に「あれ、消えました?笑」と送った夜。後悔はしてない
Pairsでマッチして3日、無言だった相手に「あれ、消えました?笑」と送った。「女から追うな」なんてルール、誰が決めたの。帰ってきた返事と、その後が思ったよりずっとよかった。自分から動いてみたマッチングアプリ体験談。
「あれ、消えました?笑」と送ったのに、既読がつかなかった。
向こうからいいねが来るまで待つ。マッチしたら男性が先にメッセージを送る。二日以上音沙汰がなくても女性側からは追わない。盛り上げるのは男性の役割。——なんとなく、そういう空気がある。どこかに明文化されているわけでもないのに、みんな知ってる暗黙のルール。誰かに教えてもらったわけでもなく、「なんとなくそういうもの」として染みついていた。
3日で消えたカワカミコウキ
カワカミコウキ、27歳、メーカー勤務。写真はシンプルなカフェの前で撮ったもので、笑顔が自然だった。コーヒー好き、ドライブ好き、映画はサスペンスが好き、と書いてある。プロフィール文は短いけど、ちゃんと読んだ気配がした。「好きな映画は相手と全部話したいので、あえて書きません」という一文が一番気に入った。
マッチした日曜の夜、彼からメッセージが来た。「はじめまして! よろしくお願いします」。丁寧。返した。「よろしくお願いします!」。そこからしばらく会話した。映画の話、仕事の話、近所に好きなカフェがあるかどうか。中目黒のアレって知ってますか、という話になって盛り上がった。
で、火曜日に途切れた。
私の「中目黒のアレって知ってますか」という質問に既読がついて、でも返信はなかった。
水曜日。なし。
木曜日。なし。
金曜日。なし。
ルール的には「待て」なんだろう。でも3日待って何もない。
「あれ、消えました?笑」
金曜の夜、打った。送った。0.8秒で。
「笑」を入れたのは保険じゃない。本当におかしかったから。こんなにまじめにやり取りしていたのに突然消えるのって、客観的に見てちょっと笑える。
返信は1時間後に来た。
「すみません!! 仕事が本当に大変な一週間で、Pairsどころかスマホ触れなくて……消えてたってことになりますね笑。ほんとにごめんなさい」
絵文字なしの焦りが伝わってくる文体。「!!」が2個ついてる。スマホ越しに慌てている様子が見えた気がした。
「忙しかったんですね。ご苦労さまでした」
「見捨てないでくれてありがとうございます笑」
「見捨てる前に一応確認しようかと」
「それ一番いい対応ですよ」
「消えたのかクズなのかわからなかったので」
「いや、クズではないですよ!! めちゃ反省してます」
代官山のカフェで初めて会った
翌週、代官山のカフェで初めてのデートをした。代官山の蔦屋書店の近くにある店。彼は最初の5分、「本当にすみませんでした」を繰り返した。3回目くらいで「もういいって言いましたよ」って笑ったら、「そっか」って、ようやく肩の力が抜けた顔になった。コーヒーを両手で持つ癖があった。
「あのメッセージ、正直嬉しかったです」と彼が言った。コーヒーを両手で持ちながら。「来なかったら、こっちも気まずくて連絡できないままになってたと思う」
「それはもったいない」
「そうですね」
「ルール的には追ったらダメだったんですけど」
「え、そんなルールあるんですか」
「なんとなくそういう空気あるじゃないですか、アプリって」
「知らなかった。笑 でも追ってくれてよかったです」
コーヒーの湯気が立っていた。代官山の午後、窓の外を人が行き交う。二人並んでカウンターに座っていて、彼の肩がすぐそこにあった。やや猫背で、背が高い割に威圧感のない座り方をする人だと思った。
その後、映画の話になった。「好きな映画は相手と全部話したいから書かない」という一文の話。「あれ書いたの本当に?」と聞いたら「本当に」と答えた。「じゃあ話してよ」「今?」「今」。それで1時間半、好きな映画の話だけした。彼が一番好きな作品は『羊たちの沈黙』で、私が「えっ、サスペンスって書いてたけどそっちのやつ」と言ったら、「そっちのやつです笑」と返ってきた。
女性から追うな、というルールが守っていたものは何だったんだろう。プライド? 駆け引き? あの一言を飲み込んでいたら、今私は代官山でこの人とコーヒーを飲んでいない。
中目黒のアレの話は、その後ちゃんとした。「知ってますよ、何回か行ったことある」と彼が言った。「よかった、話できると思ってたんです」と返したら、「あの質問に既読だけして3日放置してたの、今思うとひどすぎますね」と言って、頭を抱えた。
2回目のデートの帰り道、代官山の坂を並んで下りながら、彼が「次はどこ行きたいですか」と聞いてきた。どこでもよかった。この人と行くなら、どこでも。そう思ったけど、言わなかった。「中目黒でいいじゃないですか、アレ行きましょう」と答えた。「行こう行こう」と彼が笑った。その笑い方が、コーヒーを両手で持つのと同じくらい、なんか好きだった。
ルールより本音が速いけど、既読はつかなかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。