3ヶ月目に私がAirbnbを予約した。彼が言い出せなかった京都旅行
「行きたい」を3回言って、動かなかった彼の代わりに、私がポチった。
「京都、行きたいね」を彼が言ったのは、3回だった。
最初は付き合って1ヶ月目、中目黒を歩きながら。「秋に京都行きたいな」と言ったから、「いいですね」と私も言った。2回目は2ヶ月目、彼の家でご飯を食べながら。「そういえば京都の話、どうしますか」と言ったから、「考えてます」と彼が言った。3回目は3ヶ月目、電話で。「京都、本当に行きたい」と言ったから、「じゃあ予約しましょうか」と私が言った。「そうだね、してもらえる?」と彼が言った。
翌日、Airbnbを開いた。
「してもらえる?」は、頼み方としてはあまり主体的ではないけど、行きたい気持ちはあるということだ。行きたいのに動けない人は、一緒に動けばいい。そう思った。
---
亮太くんとはPairsで出会った。31歳、設計事務所に勤める建築士。プロフィールの写真が、どこかの建物の前で撮ったものだった。「どこですか」と聞いたら「東大の安田講堂です」と来た。「建物が好きなんですか」「好きというか、仕事で毎日見てるんですが、休日も見てしまいます」と返ってきた。
「仕事と休日が地続きな感じ、わかります」と私が言ったら、「そういう人と話したかった」と来た。最初のメッセージとしては、少し重かったけど、嘘がないと思った。
初めて会ったのは代官山。彼は建物の話になると止まらなくて、「あの角の使い方が」とか「窓の比率が」とか言い始めた。私は建築に詳しくないけど、聞いていると楽しかった。好きなことを話す人の顔は、好きな話題のときに輝くから。
---
京都行きを決めたのは11月。宿はAirbnbで探した。
鴨川の近く、築60年の京町家をリノベーションしたもの。1泊2日、2名で予約。亮太くんに「取りました」とスクリーンショットを送ったら、「え、ほんとに?」という返信が来た。「言ってくれましたよね、3回」と私が送ったら「ごめん、ありがとう」と来た。
---
11月の京都は、紅葉が始まりかけていた。
あわせて読みたい
3回目のデートは、図書館で黙って本を読んだ
「図書館でそれぞれ本を読みましょう」。変なデートだと思った。でも千駄木の図書館で4時間過ごして、帰り道、私は初めてこの人のことが好きだと気づいた。
京都駅で待ち合わせして、荷物を宿に置いて、鴨川沿いを歩いた。川の水が澄んでいて、遠くに東山が見えた。空気が東京と違う。冷たくて、でも澄んでいる。銀杏が落ち始めていて、足元が黄色かった。
亮太くんは歩きながら、建物を見るたびに少し立ち止まった。「あの庇の出し方、いいな」とか「この石畳の組み方は珍しい」とか独り言みたいに言う。「何がいいんですか」と聞くと、説明してくれる。建築の話は難しかったけど、彼が楽しそうだから聞いていられた。
夕方、宿に戻って、スーパーで買ってきた食材でパスタを作った。キッチンが古くて、鍋の置き場所を二人で悩みながら作った。換気扇がうるさくて、会話するために少し声を上げた。ちゃんとしたパスタが作れる場所じゃなかったけど、できあがったものを窓の外の鴨川を見ながら食べた。川の向こうに、夜の山の稜線が見えた。
「来てよかった」と亮太くんが言った。「来れてよかったです」と私も言った。「来れた、じゃなくて、来た、でしょう」と彼が言う。「私が予約したから来れたんです」と私が言い返す。「それは本当にそう」と彼が笑う。
---
翌朝、朝の鴨川を二人で歩いた。
「なんで予約できなかったんですか」と私が聞いた。冷たい空気の中で、彼は少し考えた。「決めることが苦手で。でも行きたい気持ちはあった」。
「言い続けてくれたから、わかってましたよ」と私は言った。「言い続けるだけで、行動しない人と思わなかった?」「思った。でも思ってるだけじゃなくて言ってたから、まあいいかと」。
彼が笑った。「次は俺が予約する」と言った。「次があるんですか」「ある。絶対に」。
---
東京に帰って2週間後、亮太くんから「金沢どうですか、宿調べてる」とLINEが来た。
「行きます」と即返した。
決めることが苦手な人が、決めてきた。そのことの方が、金沢がどこかより嬉しかった。
「また行きましょう」は、今度は行動になった。言葉は遅れてくるけど、行動は本物だ。
京都で作ったパスタは、正直そこまで美味しくはなかった。鍋が小さすぎて、ソースが絡み切らなかった。でも鴨川の見える窓際で二人で食べて、「おいしい」と言い合った。
料理の出来より、一緒に作ることが大事だった。そういうことが、旅の中でわかった。
決めることが苦手な人と、決めることが好きな人。たぶん、これでちょうどいい。
鴨川沿いを、次は夏に来たい。緑の季節の京都を、亮太くんと一緒に見たい。そう思いながら新幹線に乗った。窓から琵琶湖が見えた頃、彼からLINEが来た。「今度は金沢も考えてる」。決めることが苦手だった人が、次のことを考えている。それが嬉しかった。
決める前に3回言う人は、決めたら本当にやる人だ。亮太くんのことを、そう覚えた。
Airbnbの予約確認メールが今もスマホに残っている。鴨川の近くの町家。また行きたいと思っている。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。