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スワイプし続けた夜、後悔して気づいたアプリ疲れの正体

スワイプしても、マッチしても、何も感じなくなった。通知が来ても開く気になれない。会う約束をしても気が乗らない。これは「恋愛に向いていない」のではなく、アプリ疲れというれっきとした状態だった。4ヶ月間使い続けてバーンアウトした私が、

28・女性の体験
·橘みあ·7分で読める

正直に言う。4ヶ月スワイプしたのに、何も感じなくなった。


アプリを開いて、写真を見て、右にするか左にするか判断する。マッチした。メッセージが来た。返した。会う話になった。行った。悪くはなかった。でも、何も感じなかった。


「悪くなかった」は「良かった」じゃない。でもそのとき、その差が気にならなくなっていた。渋谷の居酒屋で向かいに座った人の話を聞きながら、私はテーブルの木目を眺めていた。相手の話がどこかに行っていた。笑うタイミングだけ、ちゃんと笑った。


帰り道、山手線の中で気づいた。「また来週連絡します」と言われたのに、返事がどうだったかも思い出せなかった。怖かった。相手が消えていたのではなく、私が消えていた。


アプリ疲れのサイン、5つ


後から振り返ると、疲弊のサインは3ヶ月目あたりからじわじわ出ていた。


通知を見てため息が出る。マッチ通知やメッセージ通知が来るたびに、胸が弾むどころか、喉の奥が少し重くなった。「また返事しないといけない」という感覚。最初の頃は通知音が楽しみだったのに、知らない間に逆転していた。スマホを裏返しにして置く日が増えていた。


プロフィールを読む集中力がなくなる。写真を見て「顔」しか見ていない自分に気づく。趣味も自己紹介も、流し読みするようになる。「読もうとしていない」ではなく、「読めなくなっている」状態。文字がスクリーンの上を滑っていって、頭に入ってこない。


デートの準備が面倒になる。服を選ぶのも、待ち合わせ場所を調べるのも、全部「やらないといけないこと」に見える。楽しみではなく義務。あの感覚は今でも正確に思い出せる。新宿駅の南口で待ちながら、「早く終わらないかな」と思っていた。会う前から。


会った後に虚無感がある。悪い人じゃなかった、でも何も残らなかった。その繰り返しが続く。虚無感は疲れのサインではなく、感覚がすり減ってきているサインだ。4ヶ月目には、デートの記憶が1週間で消えるようになっていた。名前を思い出すのに3秒かかった。


アプリを開く頻度が減るのに、やめることもできない。完全にやめればいいのに、なんとなく開く。「もしかしたら今日いい人が来るかも」という薄い期待が、惰性を生む。ギャンブルと同じ構造だと、後から知った。一定の頻度でご褒美が来るから、やめられない。


バーンアウトが起きる理由


人間の脳は、刺激に慣れる。最初は1回のマッチで心拍数が上がっていたのに、50回・100回と繰り返すうちに、同じ出来事への反応が鈍くなる。「慣れ」と呼ぶには少し違う。正確には「消耗」だ。


アプリでの出会いは選択の連続だ。毎日何十人もの写真を見て、右か左かを判断する。その判断を繰り返すことで、判断力そのものが疲れていく。心理学では「決断疲労」と呼ぶが、恋愛においても同じことが起きる。「誰かを選ぶ」という行為が繰り返されると、誰かを選ぶ感覚が麻痺してくる。


もう一つの原因は、「期待と現実のギャップ」の蓄積だ。写真とプロフィールで期待値が上がる。会う。思っていたのと違う。その繰り返しが3ヶ月、4ヶ月続くと、「どうせ違う」という予防線が先に張られるようになる。会う前から期待しなくなる。会っても何も感じない。その悪循環。


比較も疲労の原因だ。毎日何十人もの写真を見ていると、「この人よりあの人の方が」という相対評価が自動的に始まる。目の前にいる人を、他の誰かと比べ続ける。そのくせ、自分が選ばれるかどうかも不安だ。選ぶ側でも選ばれる側でも疲れる、という状態になる。


アプリと距離を置いた2ヶ月で起きたこと


4ヶ月目のある月曜の夜、アプリを全部削除した。特に理由はなかった。ただ、その日の夜にスマホを開いたとき「もういいか」と思った。強い意志ではなく、空っぽな感じ。燃え尽きたというより、すっからかんになった感じ。


最初の2週間は、何をしていいかわからなかった。帰り道に吉祥寺の商店街を歩いてみたり、近所の銭湯に行ったり、友達と深夜まで話したり。アプリがなくなって空いた時間に、しばらく何を入れていいかわからなかった。スマホを開くたびに「通知が来てないか確認する」という癖が抜けなくて、気づいたらホームページを眺めていた。


3週間が経った頃から、変わってきた。電車の中で本が読めるようになった。カフェでコーヒーを飲みながら、考え事をする余裕が生まれた。街を歩いていて、「あの人きれいだな」と思う感覚が戻ってきた。当たり前のことなのに、4ヶ月間それが消えていたことに、そのとき気づいた。


友人の藤木に「最近なんか顔が違う」と言われた。「何が違う」と聞いたら、「あんまり焦ってない感じ」と言われた。焦っていたのか、4ヶ月間。気づいていなかった。


下北沢の居酒屋でその話をしながら、4ヶ月間の自分を振り返った。毎朝アプリを開いて、電車の中でスワイプして、昼休みにメッセージを返して、夜また開いて。恋愛のために動いていたはずが、アプリを動かすために動いていたのかもしれなかった。


休憩後の再開、何を変えたか


2ヶ月後に再開した。でも再開したとき、アプリの使い方が変わっていた。


1日に見る枚数を30枚に決めた。メッセージを返す時間帯を決めた(夜21時以降は返さない)。「悪くない」で会うのをやめた。「会いたい」と思えた相手だけ、会うことにした。


もう一つ変えたのは、「マッチングすること」を目標にするのをやめたことだ。マッチ数が増えても、何も変わらなかった経験があったから。マッチは手段であって、目的ではない。当たり前のことだったのに、使い続けている間にそれが逆転していた。


アプリを削除していた2ヶ月の間に、「なぜアプリを使っているのか」を改めて考えた。「誰かと出会いたい」という答えは出たが、もう少し深掘りすると「一緒にいて自然でいられる人が欲しい」という気持ちが見えてきた。それが明確になってから、「この人は自然でいられそうか」という軸で相手を選ぶようになった。スペックや見た目より先に、「話しながら肩の力が抜けるか」を見るようになった。


今の彼と出会ったのは、再開して3週間後だった。距離を置いたあと、ちゃんと感覚が戻っていたから、「この人だ」と思えた。疲弊した状態の私なら、彼のことを「悪くない」で流していたかもしれない。


疲れていたのに、好きになれなかった理由がわかった。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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