渋谷での待ち合わせに後悔した夜、電話してれば違った話
渋谷スクランブル交差点で待ち合わせた瞬間、「あ、違う」と思った。声も話すテンポも、メッセージから想像していたものと全く違った。15分の電話で避けられた1時間半の気まずさ。電話しなかった1回の後悔と、電話して正解だった3回の話。
正直に言う。渋谷で相手を探したのに、5分で帰りたくなった。
Pairsでやりとりしていた男性。メッセージは2週間続いていて、文章は穏やかで、返信のタイミングも心地よかった。写真は柔らかい笑顔で、プロフィールに「カフェ巡りが好き」と書いてあった。
信号が青に変わった。向こうから手を振る人が見えた。
「はじめまして!」
声が、想像と全然違った。
メッセージの文体から勝手に「穏やかで、声は少し低めで、ゆっくり話す人」を描いていた。実際は声が大きくて、話すスピードが速くて、テンションが高かった。交差点の喧騒の中でも、彼の声ははっきり聞こえた。はっきり聞こえすぎた。
席についてから5分で「帰りたい」と思った。
1時間半の気まずさ
道玄坂を上がったところにあるカフェに入った。テーブルを挟んで向かい合って、アイスコーヒーを注文した。氷がカラカラ鳴る音が、やけに大きく聞こえた。
彼は悪い人じゃなかった。それは断言できる。趣味の話も合ったし、仕事の話もちゃんとしてくれた。でも、声のトーンが合わなかった。こっちが何か言うたびに「あー、わかるわかる!」と被せてくる。笑い声が少し甲高くて、隣のテーブルの人がちらっとこっちを見た。
会話の内容は悪くないのに、音が合わない。チューニングがずれたラジオを聴いている感覚。情報は届くけど、心地よくない。
1時間半、頑張った。「そろそろ用事が」と切り上げて、店を出た。ハチ公前を通って、駅の改札に向かいながら、ずっと同じことを考えていた。
電話しておけばよかった。
15分でわかったはずだ。声のトーン、話すスピード、笑い方。テキストでは絶対に伝わらない情報が、電話なら15分で全部わかる。あの1時間半は、15分の電話で回避できた時間だった。
電話しなかった理由
理由はシンプルで、相手が「電話苦手なんで、直接会いましょう」と言ったからだ。
こっちが「会う前に一度電話しませんか?」と提案したら、そう返ってきた。「まあ、会えばわかるか」と納得してしまった。メッセージの印象が良かったから、「大丈夫だろう」と。
あの時に「電話じゃなくても、5分だけ話しませんか」と押していれば。後から何とでも言える。でも言わなかった自分が、渋谷の改札でスマホを握りしめていた。
電話して正解だった1回目——声でわかる「合う」の感覚
渋谷の後悔があったから、次からは必ず電話を挟むようにした。
Pairsで知り合った次の男性。メッセージのやりとりが2週間続いたタイミングで、「会いませんか」と言われた。
「会いたいです。その前に一度、電話できたら嬉しいんですが」
「いいですよ、緊張しますけど笑」
金曜の夜21時。スマホを耳に当てた。彼の第一声は「あ、もしもし。めちゃくちゃ緊張してます」だった。正直すぎて、思わず笑った。
声は少し低くて、話すスピードがゆっくりだった。私も早口じゃないから、テンポが合った。15分くらい話した。仕事の話と、最近観た映画の話。「『花束みたいな恋をした』観ました?」と聞いたら、「菅田将暉が自分と重なってしんどかった」と返ってきて、そこから10分脱線した。
電話を切った後、胸の奥がほわっと温かかった。声を聞いただけで「この人は大丈夫だ」と思えた。
翌週、恵比寿のカフェで会った。「あ、電話の声だ」と思った瞬間、肩の力が抜けた。初対面なのに初対面じゃない。あの15分が、最初の30分の緊張を溶かしてくれた。
電話して正解だった2回目——メッセージの印象がひっくり返った話
Omiaiで出会った人。この人はメッセージがとにかく短かった。「うん」「そうだね」「いいね」。文字だけだと冷たく見えて、正直会う気にならなかった。でもプロフィールの写真が好みだったから、ダメ元で電話を提案した。
電話して、印象が180度変わった。
「メッセージ短くてすみません、文章書くの苦手で……」と最初に言われて腑に落ちた。話し始めたら、テンポよく喋る人だった。途中で3秒くらい沈黙があって、「えーっと、あ、そうだ」と自分で話題を拾い直した。その自然さが、よかった。
沈黙の扱い方は、テキストでは絶対にわからない。焦って埋めようとする人か、自然に受け止められる人か。電話の3秒の沈黙で、それが見えた。
中目黒のダイニングバーで会ったとき、よく笑う人だった。メッセージの「うん」「そうだね」からは想像できない顔で笑っていた。文字で判断してたら、この人とは会わなかった。
電話して正解だった3回目——危ない人を事前に弾けた
3人目はTinderでマッチした人。メッセージは普通だった。
電話して、20秒でわかった。
「俺さ、先週ゴルフ行ってさ——」
こっちの話を遮って、自分の話を始めた。質問しても、答えを聞く前に次の話題に移る。20分の電話で、私が話した時間は3分くらいだった。
電話を切った後、手のひらがうっすら汗ばんでいた。この人と対面で2時間過ごすのは無理だ。「すみません、ちょっと合わないかもしれません」とメッセージを送った。返事は来なかった。
電話していなかったら、新宿の喫茶店で2時間、ゴルフの話を聞いていたことになる。
電話は万能じゃない
ここまで書くと「電話すれば全部うまくいく」みたいに聞こえるかもしれない。そうじゃない。
電話で好印象だったのに、会ったら「ん?」と思ったことも1回ある。電話では落ち着いていたのに、対面だと目が泳いで、会話が途切れるたびにスマホを触る人がいた。電話と対面で別人みたいになる人もいる。
電話は万能薬じゃない。でも、15分の電話で「明らかに合わない」は弾ける。1時間半のデートを15分に圧縮できる。コストパフォーマンスとか言いたくないけど、そういう話でもある。
渋谷のスクランブル交差点で「帰りたい」と思った午後を、今でも思い出す。あの1時間半は、取り戻せない。タイムマシンがあったら、過去の自分に「電話しろ」とだけ言いたい。でもタイムマシンはないし、あの後悔があったから、次から電話するようになった。
正解かどうかは今でもわからない。電話を断られてそのまま消えた人もいた。「面倒な人だな」と思われた可能性もある。全員に好かれる方法なんてないし、好かれたい全員に好かれなくていい。
胃の底が冷えたのに、電話してれば気づけた。
よくある質問
マッチングアプリで会う前に電話するタイミングはいつがいい?↓
電話では何分くらい、何を話せばいい?↓
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。