恋のアーカイブ
恋愛体験談エッセイ

好きになりすぎる前に終わらせた、その3ヶ月が全部うそになった夜

withで知り合った彼と3ヶ月、傷つく前に自分から距離を置いた。守った気でいた。でも後日、彼が別アカウントで活動しているのを見つけて気づいた。守りたかったのは相手じゃなく、自分が作った幻想だったのかもしれない。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。好きになる前に終わらせたのに、3ヶ月が全部うそになった。


コーヒーを頼んで、窓際の席に座って、スマートフォンをひっくり返してテーブルに置いた。外は雨で、傘を持っていない人が軒下で立ち往生していた。私はそれをぼんやり眺めながら、もう一ヶ月以上ひらいていないwithのアプリをまたインストールしようかどうか、ずっと考えていた。


結局しなかった。


理由はシンプルで、あのアプリをひらくたびに、彼のことを思い出すから。正確には、彼じゃなくて、「自分から終わらせた」という事実を思い出す。それが、まだ少し、喉の奥に引っかかっている。


---


8月に出会い、3ヶ月で6回会った


知り合ったのは八月だった。


プロフィールに「BUMP OF CHICKENが好き」と書いてあった。私もそうだったから、最初のメッセージを送った。それだけの理由で始まったのに、気づいたら毎晩一時間以上話していた。声が低くて、笑うと少し鼻から息が抜ける人だった。


三ヶ月で、会ったのは六回。下北沢のカレー屋、代官山の古本市、終電を逃して朝まで話した新宿のファミレス。どこも特別な場所じゃないのに、全部が妙に色鮮やかに記憶に残っている。


「なんか、ずっと話せるね」


彼がそう言ったのは、代官山で古いレコードを眺めていたときだ。私は「うん」とだけ答えた。本当は、「怖い」と思っていた。こんなに話が合う人、初めてだと思っていた。


---


終わらせたのは、十月の半ばだった。


特別な事件はなかった。喧嘩もしていない。彼は何も変わっていなかった。変わったのは私の中の何かで、ある夜、彼からLINEが来るのを待ちながら、スマートフォンを三十分ずっと握り締めていることに気がついて、そこで急に冷水を浴びたような気持ちになった。


だめだ、と思った。


好きになりすぎる前に、終わらせなきゃ。


根拠はなかった。彼が浮気をしていたわけじゃない。冷たくなったわけでもない。ただ私は、過去に何度か「これだけ好きになったのに」という経験をしていて、その重力に引っ張られて動けなくなる自分を知っていた。だから先手を打った。「ちゃんと付き合いたい気持ちがあるから、でも今の自分には難しくて」という、半分本当で半分言い訳の言葉を送った。


彼の返信は短かった。


「そっか。話してくれてありがとう」


それだけだった。引き止められなかった。少し泣いた。でも、自分を守れたとも思った。そのときは。


---


1ヶ月後、蔦屋書店で彼のインスタを開いてしまった


一ヶ月が経って、蔦屋書店の窓際で雨を眺めていた私は、なんとなくインスタグラムをひらいた。


特に理由はなかった。友達の投稿を流し見して、振り返ると検索欄に彼の名前を打ち込んでいた。


アカウントは非公開になっていた。そこまでは想定内だった。でも、サジェストに見慣れない別のアカウントが出てきた。アイコンは同じ写真じゃないけど、プロフィール文の言い回しが、彼のものだとわかった。「BUMP OF CHICKENとカレーが好き」。


胸の中で何かがずれた。


新しいアカウントは、私と終わった一週間後に作られていた。フォロワーは二百人近くいて、フォローの中に知らない女性のアカウントがいくつかあった。投稿は食べ物の写真が多くて、コメント欄に見知らぬ人たちが絵文字を送っていた。


普通の、日常だった。


私はコーヒーを一口飲んだ。ぬるくなっていた。


---


「あっちはそこまで好きじゃなかったのかも」


その考えが頭に浮かんだとき、最初は否定したかった。でも、否定できる根拠が何もなかった。


彼は「そっか」と言った。一週間で動き出した。引き止めなかった。それは彼が冷たいんじゃなくて、たぶん、私が思っていたほど深くはなかったのかもしれない。三ヶ月、楽しかった。でもそれだけ。


じゃあ私の「好きになりすぎる前に」は何だったんだろう。


誰も追いかけてこなかった。傷つけられる前に逃げたつもりが、追いかけてくる人なんていなかった。防衛線を張って、その内側に一人で立っていた。


雨が少し強くなった。


軒下の人が、諦めたのか、濡れながら歩き出した。私はその背中を見て、なんとなく自分もそんな気持ちだと思った。立ち止まっても濡れる。歩いても濡れる。ならどっちでも同じだったのかもしれない。


スマートフォンをテーブルに置いて、天井を見た。


---


今ならわかる、と言い切れない。


防衛することが間違いだったのか、タイミングが悪かっただけなのか、そもそも相手が「その人」じゃなかっただけなのか。何もわからない。ただ、苦くて、少し恥ずかしい。


傷つくことを怖れて先に距離を置いた。それはきっと正直な行動だった。でも結果として、傷つかなかったわけじゃない。違う場所が、じわじわと痛い。「守った」と思っていたものが、実は存在しなかったかもしれないという感覚。その空洞が、思ったより深かった。


彼のことが、好きだったのか嫌いになったのか、もう自分でもわからない。ただ、あのBUMP OF CHICKENの話をしたときの、電話越しの声だけが、妙にリアルに耳に残っている。


窓の外の雨が、少しだけ弱まった。


withのアプリは、まだインストールしていない。


---


逃げた先に誰もいなかったのに、気づいたとき一番痛かった。

よくある質問

withで知り合った彼とはどれくらい付き合って、なぜ終わらせたのですか?
付き合ったわけではなく、知り合ってから3ヶ月間、傷つく前に自分から距離を置いて関係を終わらせました。「好きになりすぎると怖い」という気持ちが先立っていたようです。
彼が別アカウントで活動しているのをどうやって知ったのですか?
記事のexcerptには「後日、彼が別アカウントで活動しているのを見つけた」とあります。距離を置いた後のことで、それを見てしまったことが、自分の行動を見つめ直すきっかけになったようです。
彼のプロフィールには何が書いてあったのですか?
「BUMP OF CHIC…」と書かれていたことが記事冒頭に出てきます(BUMP OF CHICKENのことだと読み取れます)。その共通の好みが最初の接点になったと読めます。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

このテーマを読む:失恋・別れ体験談

この記事が刺さったら、シェアしてください

あなたへのおすすめ

with」に興味があるあなたへ

3回目で彼の部屋に行った夜。翌朝、付き合おうって言われたのに答えられなかった
恋愛体験談

3回目で彼の部屋に行った夜。翌朝、付き合おうって言われたのに答えられなかった

withで出会って3回目のデートの夜、彼の部屋に行った。翌朝、目玉焼きを2枚作ってくれた彼に「付き合ってほしい」と言われた。嫌じゃなかった。でも「はい」とすぐに言えなかった。なぜ言えなかったのか、3日後にようやくわかった。

女性with|27歳
6
3回目のデートの翌朝、LINEが来なかった
恋愛体験談

3回目のデートの翌朝、LINEが来なかった

withで出会って3回デートして、「また会いたい」と言って別れた翌朝からLINEが来なくなった。ゴーストの後に何をしたか、正直に書く。

femalewith|26
4
withの心理テストを全部やった夜、後悔した96%と72%の話
恋愛体験談

withの心理テストを全部やった夜、後悔した96%と72%の話

withの心理テストを全部やり切った。相性96%の人とは2回目のデートで沈黙し、相性72%の人とは下北沢のカレー屋で3時間話し込んだ。数字が教えてくれることと、教えてくれないことの話。

女性with|26歳
6
Tappleの"おでかけ"で即日会った。渋谷に着いて3分で後悔した話
恋愛体験談

Tappleの"おでかけ"で即日会った。渋谷に着いて3分で後悔した話

Tappleの「おでかけ」機能で当日マッチして、2時間後に渋谷で会った。改札を出て相手を見つけた瞬間、心臓が止まるかと思った。写真と違いすぎた。でも帰れなかった。23歳の私が3分で後悔して、2時間を乗り切った話。

女性Tapple|23歳
6
初めて彼の家に泊まった朝。洗面台に歯ブラシが2本並んでいた
恋愛体験談

初めて彼の家に泊まった朝。洗面台に歯ブラシが2本並んでいた

Pairsで出会って3ヶ月。初めて彼の家に泊まった翌朝、洗面台に並んだ2本の歯ブラシを見つけた。1本は彼の青い歯ブラシ。もう1本はピンクだった。問い詰めるか、見なかったことにするか。

女性Pairs|26歳
6
同棲3日目の夜、カレーの鍋で初めて喧嘩した。後悔もしてない
恋愛体験談

同棲3日目の夜、カレーの鍋で初めて喧嘩した。後悔もしてない

Pairsで出会って1年、同棲を始めた。3日目の夜にシンクを見て固まった。初日に作ったカレーの鍋が、まだそこにある。洗われていない。28歳の私が初めて「この人と暮らすのは無理かもしれない」と思った瞬間と、その後の話。

女性Pairs|28歳
6

恋愛体験談」はまだ 298 本あります

次の記事

アプリをやめた夜に迷ったこと。3ヶ月後に正しい場所へ連れて行かれた