31歳で初めてマッチングアプリを使った、正直な話
「今更」と思っていた。でも使ってみたら、偏見がほとんど間違っていた。
31歳の秋、初めてマッチングアプリを入れた。
10月の夜、中目黒の小さなバーで友人に「まだアプリやってないの?」と言われたのがきっかけだった。帰り道、目黒川沿いを歩きながらスマホを取り出して、その場でインストールした。金木犀の匂いがうっすらと漂っていた。夜風が冷たかった。
「今更感」があった。20代でやっておくべきだったのかな、という後悔に似た気持ちもあった。それに「アプリで出会った人とうまくいくわけがない」という偏見が、どこかにあった。会社の同期が「アプリで彼氏できたよ」と言っていても、どこかスルーしていた。
プロフィールを書き始めたら、意外と手が止まった。趣味、仕事、週末の過ごし方。どんな人と会いたいか。当たり障りのないことを書こうとして、30分でやめた。どうせならちゃんと書こう、と思い直して結局1時間かけた。
書き終わった後、スマホを置いて気づいた。自分が何を求めているか、ここ数年、真剣に考えていなかった。
写真は3枚。カフェで撮った自撮り、旅行先の風景、友人と行った展覧会のチケット。どれも「明るい感じの人」には見えるだろうけど、自分らしいかはわからなかった。
いいねが来た。翌朝起きたら12件。「こんなに来るの?」と驚いた。
メッセージのやりとりが始まった。最初は「趣味が似てますね」とか「仕事大変そうですね」とか、探り合いの会話。返信が来るたびにスマホを開いて、既読がついた瞬間にまた戻す。
最初に会ったのは、恵比寿のカフェだった。
「緊張しますよね、初めてだと」と彼女が言った。私も「します」と言った。
「え、でも慣れてるんじゃないですか、もう何人か会ってるでしょ」「これが初めてです」「え、本当に?」「本当に」。
話してみると普通の人だった。当たり前だけど。IT系の会社でデザイナーをしている。休日は映画を見るか、近所の公園を散歩するか。好きなカフェがあって、週に2〜3回行く。
90分、話した。帰り際に「また会いましょう」とは言ってもらえなかったけど、「楽しかったです」と言ってもらえた。
帰りの電車の中で、思った。「アプリって、普通だ」。
2人目は渋谷で会った。1時間半話した。合わなかった。理由は言語化できないけど、会話のテンポが合わなかった。
3人目は下北沢の居酒屋で会った。話は合ったけど、何かが足りなかった。その「何か」がわからなかった。
「何を求めているか、まだはっきりわかってない気がする」と、友人に話した。「それはそうよ。会いながら探すものだから」と言われた。
4人目で、変わった。
初回は吉祥寺のイタリアン。入ってきた瞬間、「あ、ちゃんとした人だ」と思った。説明できないけど、立ち振る舞いに余裕があった。声が落ち着いていた。笑い方が自然だった。
「アプリ、慣れてますか」と聞かれた。「4人目です」と正直に言った。「私は6人目くらいです。なかなか難しいですよね」「難しいです」。
食事しながら話した。本の話、仕事の話、最近気になっていること。3時間、気づかなかった。
帰り際、「また会いたいです」と思った。言えた。「私も」と返ってきた。
「アプリの人って…」という言い方を、今でも聞くことがある。でも実際に会ってみると、普通の人が多かった。仕事をして、趣味を持って、出会いを求めている人たち。私と同じだった。
アプリは場所でしかない。そこにどんな人が集まっているかは、使ってみないとわからなかった。
今、付き合っている。4人目と。
31歳で始めたことへの「今更感」は、今は全くない。
始めた秋の夜、金木犀の匂いの中でインストールしていなかったら、この人には会えなかった。それだけのことだった。始めるのに、遅すぎるなんてことは、なかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。