恋のアーカイブ
恋愛体験談エッセイ

「Pairsで出会いました」と聞いた夜。後悔しながらプロフィールを書き直した

目黒雅叙園の披露宴、スピーチで新婦が「Pairsで出会いました」と言った。700人の前で。その瞬間、会場の空気が少し変わって、私のシャンパングラスを持つ手も止まった。その言葉がプロフィールを書き直すきっかけになった夜の話。

28歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。友人に「Pairsで出会った」と聞いたのに、動いていなかった。


会場は目黒雅叙園。ずっしりとした石造りの廊下を歩いて、披露宴会場に入ると、テーブルには白い花と金色のキャンドルが並んでいた。新婦の美咲は、ウェディングドレスで泣いていた。マスカラが少し滲んでいて、それがかえって美しかった。アイドルみたいにきれいに泣く人ってほんとにいるんだな、と思いながら、私はシャンパンを飲んでいた。


披露宴が半分ほど進んだところで、新婦からスピーチがあった。


「彼とはPairsで出会いました」


会場がわっと笑った。笑いの中に、微笑みもあった。新婦は続けた。「最初は周りに言うのが恥ずかしかったんです。でもこうして今日ここに立てて、出会った方法なんて関係ないってわかりました」。


拍手が起きた。私も拍手した。でも手のひらを叩きながら、胸の中で何かがざわついた。


ざわつきの正体が何か、乾杯のシャンパンを飲みながら考えていた。


1年が経っていた


私はPairsに登録してから、もう1年が経っていた。


マッチングはした。デートもした。でも続かなかった。「なんか違う」が積み重なって、疲れてやめる、また始める、をもう何度繰り返したかわからない。


美咲と同じテーブルになって、ケーキを食べながら話していたとき、「ちゃんとやってる?」と聞かれたことがある。「やってるよ」と答えたけど、ちゃんとやっていたかどうかは、正直怪しい。写真は2年前のもの。プロフィールは最初に書いたまま更新していない。メッセージへの返信も、乗り気じゃないと後回しにしていた。


そういえば美咲は、「プロフィールを5回書き直した」と言っていた。「自分がどんな人かを正直に書いたら、急にいい人と出会えるようになった」と。スピーチでその話を思い出していた。


帰り道の電車で、美咲のドレス姿と、「出会った方法なんて関係ない」という言葉が頭に残っていた。


帰り道の電車で


結婚式の帰り道、電車の中でスマホを開いた。


Pairsのアプリ。自分のプロフィールを見る。写真は確かに古い。2年前の夏、沖縄旅行で撮ったもの。今より髪が長い。自己紹介文は「読書と映画が好きです。週末はカフェでのんびり過ごすのが好きです。穏やかな人と一緒にいたいです」と書いてある。


読んでいて、「この人と会いたい」と思わなかった。自分のプロフィールなのに。


当たり障りがない、を通り越して、誰でもよさそうだ、という感じになっていた。私じゃなくてもいい文章。誰かが書いたテンプレートのような自己紹介。


アパートに帰って、ご飯を食べて、お風呂に入って、それでもまだ引っかかっていた。深夜1時、布団の上でスマホを開いて、プロフィール編集画面を開いた。


書き直した夜


写真を変えることにした。先月、中目黒を散歩したときに友人が撮ってくれた一枚。川沿いで笑っているやつ。光の加減が良くて、自分でも「あ、いい写真」と思えたやつ。これにした。


自己紹介文を全部消した。


それから30分かけて書き直した。


「朝は絶対コーヒー、夜はたまにビールが飲みたくなります。映画は邦画も洋画も、最近は深田晃司にはまっています。一人でいるのも好きだけど、誰かと同じ時間を過ごすことの豊かさを、最近やっと知りました。笑えて、黙れる人と会いたいです」。


送信した。0時49分。


書き終えて気づいた。これなら、私に会いたいと思える。


質が変わった


プロフィールを変えた翌週から、メッセージの質が変わった。気がした。「深田晃司、好きなんですね」から始まる会話は、最初から続いた。「笑えて黙れるって、どういうことですか」と聞いてくる人がいて、「うまく説明できないんですが、一緒にいて全部喋り続けなくていい関係かな」と答えたら「わかります」と返ってきた。


その人と2時間くらいメッセージして、「会いましょうか」という流れになった。


3ヶ月後、その人と初めて会った。


代官山の小さなカフェ。午後3時の日差しが斜めに入ってきて、彼のコーヒーカップに光が当たっていた。2時間半話して、「また来ますか」と彼が言った。「来ます」と私は答えた。


---


プロフィールを書き直したのは、美咲のスピーチを聞いた夜だった。


「ちゃんとやる」とは何か、あの夜初めてわかった気がする。相手に合わせるんじゃなく、自分が自分であることを書く。それだけだった。


出会い方よりも、どんな自分として出会うか。それが全部だった。


美咲から後日、「どうだった?」とLINEが来た。「書き直したよ、プロフィール」と答えたら、「やっぱり!わかった」と来た。「なんでわかったの」「スピーチしながら、誰かの顔を見てたから」。


美咲は披露宴の最中、私の顔を見ていたらしい。


ちゃんとやる、と決めた夜のことを、今でも覚えている。


出会い方なんて関係ない。答えは出たけど、納得はしていない。

よくある質問

友人の結婚式が何かのきっかけになったのですか?
目黒雅叙園での披露宴で新婦が「Pairsで出会いました」とスピーチした言葉が、何かを変えたとのことです。その夜にプロフィールを書き直したとあります。
それまでアプリを使っていなかったのですか?
記事では友人のスピーチを聞いてプロフィールを書き直したとのことで、すでに使っていたか新たに始めたかは明確には書かれていませんが、何かを新たに踏み出した夜だったようです。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

この記事が刺さったら、シェアしてください

あなたへのおすすめ

ストーリー」に興味があるあなたへ

マッチングアプリで会った夜から3年後に結婚した。後悔ゼロの話
恋愛体験談

マッチングアプリで会った夜から3年後に結婚した。後悔ゼロの話

withでマッチングして3年と4ヶ月、「どこで出会ったの?」と聞かれるたびに彼は一瞬だけ間を置く。その空白の埋め方を、私はもう知っている。清澄白河のコーヒー屋から始まった話——特別じゃなかった出会いが、3年後に結婚になった経緯。

女性25歳
6
31歳の秋、初めてマッチングアプリを始めた夜。後悔しなかった話
恋愛体験談

31歳の秋、初めてマッチングアプリを始めた夜。後悔しなかった話

31歳の秋、初めてマッチングアプリを入れた。中目黒のバーで「まだアプリやってないの?」と言われたその夜に。「今更感」があった——30代で初めてアプリを使って気づいた、20代の頃に持っていた偏見がほとんど間違っていた話。

女性24歳
5
「もう恋愛は無理かも」と思っていた夜、後悔しなかった話
恋愛体験談

「もう恋愛は無理かも」と思っていた夜、後悔しなかった話

2年で3回の失恋、アプリにも疲れ果てた秋。「最後の一回」のつもりで開いたアプリで出会った人が、1年後には「ちゃんとした理由」になっていた——「もう恋愛は無理かも」と思っていた頃に出会ったマッチングアプリ体験談。

女性29歳
6
「ホン・サンスが好きです」と送った夜から3年。後悔しなかった区役所の日
恋愛体験談

「ホン・サンスが好きです」と送った夜から3年。後悔しなかった区役所の日

Omiaiで出会った彼に「ホン・サンスが好きです」と試しに送った。返ってきた返信で、私の人生が変わった。3月の区役所で書類を出す日、3年前のあの一文を思い出していた——マッチングアプリで出会い結婚した体験談。

女性29歳
6
フェードアウトした夜の後悔。返信しなかった理由を、今なら言葉にできる
恋愛体験談

フェードアウトした夜の後悔。返信しなかった理由を、今なら言葉にできる

私がフェードアウトした。3人に。既読をつけて、返信しなかった。「忙しかった」は嘘だ。本当の理由はもっと情けなくて、もっと身勝手だった。された側の話はたくさんある。した側の話は、あまりない。

男性Pairs|28
9
フェードアウトされた夜から30日間の後悔。次の人に会うまでの記録
恋愛体験談

フェードアウトされた夜から30日間の後悔。次の人に会うまでの記録

木曜の夜、既読がついたまま返信が来なくなった。金曜、土曜、日曜。3日待って、「ああ、フェードアウトされたんだ」と理解した。そこから30日後に次の人と会うまでの記録。1日目から30日目まで、全部書く。

女性Pairs|26
10

恋愛体験談」はまだ 298 本あります

次の記事

失恋直後にマッチングアプリを始めた夜。後悔してわかったことがある