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恋愛体験談エッセイTapple

Tappleで会った男性と過ごした2時間の沈黙について、正直に話す

Tappleで「映画と音楽が好き」と書いてあった加藤くんと、恵比寿のカフェで会った。共通点がある、これはいける。そう思っていた。話題が尽きて、Wi-Fiも死んで、2時間があんなに長くなるとは思わなかった。正直な失敗談。

24歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。話が弾まない2時間があったのに、正直に話す。


待ち合わせは恵比寿の駅前で、相手は加藤という名前の24歳の男性だった。Tappleのプロフィールには「映画と音楽が好きです」と書いてあった。私も映画が好き。共通点がある。これはいける。そう思っていた。


バトンが落ち続けた1時間


第一印象は悪くなかった。清潔感があって、背が高くて、軽く会釈してくれた。カフェに入って席についた。店はアメリカン調の内装で、カウンターの上に赤いランプが並んでいた。休日の昼で、隣のテーブルが少しうるさかった。でもそこはよかった。外部の音があれば、沈黙が目立たない。そう思ったのは最初の10分だけだった。


「最近どんな映画観ましたか?」


私が先手を打った。得意分野から入る作戦。


「あー、最近あんまり観れてなくて」


「あ、そうなんですね」


と言って止まった。会話が止まった。


0.5秒の沈黙を埋めようとして、私は「私はこの前、A24の新作観たんですけど」と言った。


「あ、A24って最近よく聞きますね」


「そうなんですよ、あの会社の映画ってなんか独特で——」


「そうですね」


そこで終わった。加藤さんがコーヒーを一口飲んだ。私もカフェラテを一口飲んだ。


(あれ?)


音楽の話に切り替えた。「最近何か聴いてますか」


「米津玄師ですかね、やっぱり」


「いいですよね米津。あの人ってなんか——」


「すごいですよね」


「……すごいですよね」


そこで会話が死んだ。お互いにコーヒーを飲んだ。


(なんだこれ。)


スマホで話題を調べようとした。カフェのWi-Fiに接続しようとした。パスワードを聞いたらレシートに書いてあった。入力したらエラー。もう一回。エラー。3回目でようやく繋がった——と思ったら「このネットワークはインターネットに接続されていません」。Wi-Fiが死んでいた。


(最悪のタイミング。)


データ通信でも調べられたはずだけど、なんかそれをやるのがみっともない気がして、できなかった。いや今思うとやればよかった。


仕事の話をした。加藤さんは不動産会社で働いているらしかった。私は「そうなんですね」と言い続けた。間違いではないけど、深まらない。仕事が楽しいかどうかを聞いたら、「まあそれなりに」と言われた。「やりがいはありますか」「うーん、あんまり考えたことないですね」。返答が終わるたびに、バトンが床に落ちるみたいだった。また私が拾いに行く。また落とされる。その繰り返し。


出身地の話をした。加藤さんは埼玉で、私は東京で、「東京出身の人っていいですよね」と言われた。「あ、なんでですか?」と聞いたら「なんとなく」と言われた。


そこで会話が死んだ。またコーヒーを飲んだ。


猫の話と「あと1時間」


1時間が経った。カップが2回お代わりされた。2杯目が来たとき、「あと1時間あるな」と計算してしまった自分に引いた。


(あと1時間、どうするんだ私。)


猫の話をした。私が猫を飼っているという話。加藤さんが「かわいいですよね猫って」と言った。私が「写真見ますか?」と言った。加藤さんが「はい」と言った。猫の写真を4枚見せた。加藤さんが「かわいいですね」と言った。「名前は?」と聞かれた。「もちって言うんです」と言った。「かわいい名前ですね」と言われた。


それで猫の話が終わった。


1時間45分を過ぎた頃、私は内心でひっそりと観念していた。これはもう会話でどうにかなる段階じゃない。私たちの間には電気が流れていない。どれだけ話題を変えても、電流が来ない。それは相手のせいでも、私のせいでもない。ただ、そういうことがあるというだけだ。そのことが、不思議と腹立たしくなかった。むしろ妙に静かな気持ちで、残り15分を過ごした。カップの底に残ったカフェラテを眺めながら、「人と会うことの難しさってこういうことだ」とぼんやり思っていた。


2時間経って、「そろそろ」と加藤さんが言った。人生でこれほど「そろそろ」という言葉に救われたことはなかった。


駅まで歩いた。5分の道のりが生涯最長だった。「今日はありがとうございました」「こちらこそ」「またよければ」「はい」。


授業料、カフェラテ2杯分


改札を抜けて、ホームに下りた瞬間、ため息が出た。思ったより大きかった。近くにいたOLが少し振り向いた。すみません。


電車の中でTappleを開いた。加藤さんのトーク画面を見た。「また」の選択肢は、正直迷った。


送らなかった。これは彼が悪いわけじゃない。私も頑張ったけど、どうしても噛み合わなかった。それだけの話。


合わない人というのは確実に存在する。映画と音楽が好きなのが共通点でも、会話のリズムが全然違えばどうにもならない。それを学んだ2時間だった。それに、もしかしたら加藤さんも、帰りの電車で同じため息をついていたかもしれない。私と話すのも、彼にとっては同じくらいの体力を使ったかもしれない。そう思ったら少し、笑えた。


授業料、カフェラテ2杯分。まあ、安い方だ。


合わないとわかった夜が、解像度を上げてくれたけど。

よくある質問

どのアプリで知り合ったのですか?
Tappleで知り合った加藤という24歳の男性との話です。プロフィールに「映画と音楽が好きです」と書いてあり、共通の趣味があると思って会ったとのことです。
なぜ2時間も沈黙に苦しむことになったのですか?
最初の「最近どんな映画観ましたか?」という質問からして話が弾まず、Wi-Fiも死んでいたと書かれています。会話を蘇生させようとするたびに失敗し続けた2時間だったとのことです。
最終的にどうやって2時間を切り抜けたのですか?
記事ではその2時間をリアルに描写しています。どうにかしようとするたびに会話が途絶える、その繰り返しをこれでもかと正直に書いた体験談です。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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