3週間気づかなかった。マッチングアプリで既婚者と出会ってしまった話
違和感はあった。週末に会えない理由、夜11時以降のLINEが来ない理由——全部つながった瞬間のこと。
違和感はあった。週末に会えない理由、夜11時以降のLINEが来ない理由——全部つながった瞬間のこと。
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マッチングアプリで既婚者と出会うまで
Pairsを始めたのは、28歳の冬だった。
職場の同期が次々に結婚していくのを横目で見ながら、「そろそろちゃんとしなきゃ」という漠然とした焦りだけを抱えてアプリを入れた。特別な期待はなかった。ただ、このまま何もしないで30代に突入するのが怖かっただけ。
最初の1ヶ月はひたすら右スワイプと左スワイプの繰り返しで、マッチしても会話が続かないことの方が多かった。だからケンジさん(仮名)とのやりとりが最初から弾んだとき、「あ、こういう人が存在するんだ」と思ったのを覚えている。
34歳、広告系の会社勤め、趣味は映画と料理——プロフィールはそう書いてあった。写真は3枚で、どれも自撮りじゃなくて、友人と撮ったっぽいカジュアルなやつ。好印象だった。
最初のメッセージから返しやすかった。「好きな映画のジャンルとか、ありますか?」という入り口が上手で、気づいたら1時間くらいやりとりしていた。
「この人、なんか話しやすい」
それが最初の感想で、それだけでよかった。
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気になりはじめた"小さな違和感"
最初のデートは恵比寿のイタリアン。
平日の夜、19時に待ち合わせて、お互いの仕事の話とか、アプリを始めた理由とかを話した。彼は「32歳で付き合っていた彼女と別れて、ちゃんと将来のことを考えないとと思った」と言っていた。笑顔が柔らかくて、話を聞くのが上手な人だった。
2回目のデートまでのLINEのやりとりも自然だった。「さっきの映画見た?」「今日のランチどこだった?」そういう何でもないやりとりが心地よくて、私はちゃんと好きになりかけていた。
でも、3回目くらいから、なんとなく気になることが積み重なってきた。
まず、週末に会えた試しがなかった。
「土日はちょっと予定があって」「今週末は実家に帰るんだよね」——毎回説明はある。でも、毎回。4週間で1回も土日に会えないって、普通にある話なのかな、と最初は思っていた。
それとLINEの時間帯。彼からのメッセージは決まって19時〜22時の間に集中していて、23時を過ぎると既読がつかなくなる。「もう寝たのかな」と思っていたけど、翌朝の返信も7時過ぎにはもう来る。
「この人、めちゃくちゃ規則正しいんだな」
と、そのときはそう処理していた。
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全部つながった瞬間
3週間目の火曜日の夜のことだった。
私の方からちょっと踏み込んだ話をしてみた。「ねえ、週末ってなんで会えないの? 毎週予定あるの珍しくない?」
返ってきたのは「え、ごめんね。週末は趣味の集まりがあってさ」という、やっぱり答えになってない答えだった。
「趣味の集まり、なに?」
「サッカー。草サッカーのチームに入ってて」
「毎週末あるの、それ」
「だいたいね」
なんか変だな、と思って、その日の夜に友達に電話した。ひとつひとつ話していたら、友達がぽつりと言った。
「ねえ、それってもしかして既婚者じゃない?」
喉の奥に何かがつかえた。
「え、でもプロフィールに独身って——」
「独身って書くじゃん、そりゃ」
その一言で、なんかすべてが一気に色を変えた。週末に会えない。夜11時以降はLINEが来ない。待ち合わせはいつも恵比寿か中目黒で、私の地元の方には絶対来ない。電話より基本テキスト。
全部つながる。
翌日、私は思い切って「突然だけど、彼女いる?」とLINEした。
既読がついてから返信まで8分かかった。
「え、なんで?」
「いる?」
「……いないよ」
「既婚者だったりする?」
そこから先は、20分既読がつかなかった。
「マジで?」と思った。マジで20分。
最終的に来たのは「ごめん、実はそうなんだ。本当に申し訳ない」の一文だけだった。
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既婚者が使うマッチングアプリでの特徴
マッチングアプリで既婚者と出会った体験談として、これを書いているのは、同じ思いをする人を少しでも減らしたいからだ。
あのとき私が気づけなかったことを、今の私は言語化できる。
1. 週末が常にNG。しかも理由が毎回微妙に変わる。「実家」「趣味」「友人の結婚式」——バリエーションはあるけど、共通するのは"会えない"という結果だけ。
2. LINEの時間帯が不自然に一定。既婚者の場合、パートナーがいる時間帯には連絡できない。だから深夜の連絡がなく、朝も特定の時間以降にしか動けない。「朝型・夜型」で説明できないリズムには注意が必要。
3. 電話を嫌がる。テキストなら証拠を残さないよう管理できるし、着信履歴も残らない。「電話苦手で」という言葉が口癖になっていたら、少し立ち止まって考えてみてほしい。
4. 待ち合わせ場所が偏っている。自分の生活圏に絶対連れてこない。駅で言えば、乗り換え地点や繁華街は便利だけど、「自宅の近く」に来ることを頑なに避ける人には理由がある。
5. 写真の背景に生活感がない。家で撮った写真が一枚もない、もしくは写真が明らかに数年前のもの。既婚者は「今の自分の生活」を見せられない。
6. 将来の話になるとトーンが変わる。「いつか一緒に旅行したいね」みたいな現実から離れたふわっとした言い方はするけど、具体的なスケジュールになると急に濁す。
私のケースで言えば、これが全部当てはまっていた。全部。
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あの経験が残したもの
ケンジさんとはそれきりで、それ以上の連絡はしなかった。謝罪の返信にも「わかった」の一言だけ返して、ブロックした。
怒りより先に来たのは、疲労感だった。
3週間分の「好きかも」がすっとなくなって、その分だけ空白が残った。悲しいという感情より、なんか変な感じ——自分の感情を騙されていたような、それが一番消化しにくかった。
数日後に同じ友達とランチして「どうだった?」って聞かれたとき、「思ったより大丈夫だった。でも、怖くなったわ」と言ったら、「それが正常だと思う」と返ってきた。
正常。そう、正常な反応をしていた。
その後しばらくアプリを休んで、再開したのは2ヶ月後。今度はwithに移って、プロフィールの読み方も、やりとりの進め方も、以前とは少し変えた。週末に会えるかどうかを、3回目のデートを待たずに確認するようにした。
全員を疑うのは違う。でも、疑うべきサインを見落とさないのは、自分を守る話だ。
「なんか変だな」という感覚は、ほとんどの場合、正しい。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。