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恋愛体験談エッセイ

親友の元彼と2回目のデートをした夜、後悔した下北沢の話

2回目のデートは下北沢。カフェラテを頼んでくれた彼が、親友の元カレだとわかった瞬間、手の中のカップが置けなかった。続けるか、やめるか。沈黙の中で私たちは同じ方向を向いていた。マッチングアプリあるあるの体験談。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

2回目のデートは、11月の下北沢だった。


空気がもう冬の匂いをしていた。古着屋のラックに並んだコートが風に揺れていて、商店街を歩くたびに誰かの笑い声や、どこかの店から流れるインディーズっぽい曲が、耳のそばを通り過ぎていった。目的地を決めないまま歩いていた。それでよかった。彼と歩くと、沈黙が気まずくならなかった。


小さなカフェに入った。BEAR PONDの近く、路地を一本入ったところにある、名前もよく覚えていない店。木の椅子と、少し暗い照明と、窓から見える細い路地。席に座ったとき、彼が「今日もカフェラテにしますか」と聞いてきた。


1回目のデートで「カフェラテが好き」と言ったのを、覚えていてくれていた。それだけのことなのに、胸の奥がふわっとした。こういう人だと思った。一度聞いたことを、ちゃんと持っていてくれる人。話し方が穏やかで、声が低くて、目を見て話してくれる。「この人とは長く続く気がする」——そんな予感が、コーヒーの湯気みたいにゆっくり立ち上がっていた。


話が広がって、それから過去の話になった。自然な流れで、誰でも話すような内容だった。


「昔、誰かと付き合っていたんですか」


そう聞いた。彼は少し考えてから「3年くらい前に。○○区に住んでた人と」と言った。何気なく聞いていた。本当に何気なく。


「○○区って、もしかして下の名前が——」


自分の口から出た瞬間、変な感じがした。


「そうです」と彼は言った。


カフェラテを覚えていてくれた人が、親友の元彼だった


カップを、置けなかった。手の中に持ったまま、テーブルに下ろせなかった。頭の中で何かが高速で確認作業をしていた。名前、地名、年齢、時期。全部合う。


高校からの友人の、元彼だった。


顔は知らなかった。でも名前は何度か聞いていた。「付き合った」と聞いた日のこと、なんとなく覚えている。「別れた」と聞いた日も。別れた理由も、少しだけ。友人が少しだけ泣いていたことも。


「知り合いですか」


彼が静かに聞いた。


「……友達の元彼でした」


正直に言った。嘘をつく気にならなかった。というか、嘘をつけなかった。


3秒くらい、沈黙があった。カフェのBGMがそのまま流れていた。誰かが注文する声がした。外の路地を、自転車が通り過ぎた。世界は普通に動いていたのに、私たちのテーブルだけ、少し時間が止まったみたいだった。


「……そうですか」


彼の声のトーンが、わずかに変わった。驚いているのか、困っているのか。両方だったと思う。「それは、知らなかったです」と続けた。


「続けますか、やめますか」とは、どちらも言わなかった。でもその問いかけは、空気の中にあった。お互いがそれを知っていた。


「その人のこと、まだ気になっていますか」


私が先に聞いた。意地悪な質問だとわかっていた。でも聞かずにいられなかった。


「全然ないです。別れたのは別の理由なので、今は関係ないですし」と彼は言った。少し間があってから「あなたの友達と、話し合いとか必要ですか」と続けた。


その言葉で、肩の力が少し抜けた。


自分の身を守るより先に、私の立場を考えてくれた。その順番が、好きだった。この人のことが好きだという気持ちと、「でも続けていいのか」という迷いが、同時に胸の中にあった。矛盾している。でも両方、本当だった。


「まずは友達に話してみます」と言った。


その夜、友人にLINEした


その夜、家に帰ってから友人にLINEした。「2回目のデートで発覚したんだけど」と前置きして、名前と地名を書いた。既読がついて、しばらく間があった。長い間だった。布団の中でスマホを握ったまま、返信を待った。


「えー!どんな感じだった?」


怒ってはいなかった。「やばいじゃん、でも面白い話だ」と続いた。


「やめた方がいい?」と聞いた。


また少し間があった。今度はもっと長かった。


「あなたが好きなら続けなよ。私は全然気にしないし、あの人のことも悪く言う気ないし。ただあなたが後悔しない方を選んで」


長かった。でも全部、必要な言葉だった。読み返して、また読んだ。「ただあなたが後悔しない方を選んで」という一文が、目に刺さった。怒ることも、背中を押すことも、どちらかに誘導することもしなかった。ただ私の選択に、スペースを作ってくれた。


翌日、彼にLINEした。「友達に話したら、気にしないって言ってました」と。


「良かった。続けられますか」


「はい」


短い返事しか打てなかった。それで十分だった。


あれから1年以上が経つ。今も付き合っている。友人とは普通に会っていて、たまに3人で食事することもある。最初にその話題になったとき、テーブルの空気が一瞬だけ固まった。でも今は笑い話になっている。友人は「あの人ちゃんとしてるじゃん、良かった」と言っている。彼はそのたびに少し照れた顔をする。


世界は狭い。縁は、わからない。


あの下北沢のカフェで、「続けますか」という言葉を誰も口にしないまま、二人ともが「続けたい」と思っていた。それは後になってわかったことじゃない。あの沈黙の中で、もうわかっていた気がする。どちらも逃げなかった。それだけのことが、思いのほか、ずっと大切だったりする。


続けようとしたのに、まだ答えが出ていない。

よくある質問

相手が親友の元彼だとわかったのはいつですか?
2回目のデートの下北沢のカフェで、カフェラテを頼んでもらった後に気づいたとのことです。会話の中から何かが一致し、確認したところ親友の元彼だとわかりました。
そのことを相手も知っていたのですか?
沈黙の中で二人が同じ方向を向いていたと書かれているので、お互いに気づいていたようです。続けるかやめるかを、言葉にしないまま目線で確認し合ったような場面が描かれています。
その後、関係を続けたのですか?
手の中のカップを置けなかった、という表現が印象的です。すぐには答えが出ず、宙ぶらりんのまま時間が流れた体験談で、結末より葛藤の瞬間に重きが置かれています。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#共通の知人#人間関係#偶然#マッチングアプリ

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