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恋愛体験談エッセイOmiai

55歳でマッチングアプリを始めた。「お父さんと同い年」と言われた夜

離婚して3年。55歳でOmiaiを始めた。写真の撮り方がわからない。プロフィールに何を書けばいいかわからない。やっとマッチした人に「お父さんと同い年です」と言われた夜と、それでも続けた理由。

55歳・男性の体験
·橘みあ·7分で読める

登録ボタンを押すまで、2週間かかった。


離婚して3年。55歳。子供は独立していて、横浜のマンションに一人で住んでいる。仕事帰りにスーパーで総菜を買って、テレビを見ながら食べて、風呂に入って寝る。その繰り返しが3年間続いて、去年の正月に「もう一人は嫌だな」とぼんやり思った。


会社の後輩に「マッチングアプリってどうなの」と聞いたのは、今年の1月。後輩は30代で、Pairsで奥さんと出会ったらしい。


「いいですよ、○○さんもやってみたらどうですか」


「いや、55だぞ」


「50代の人も結構いますよ、Omiaiとか真剣な人多いし」


信じていなかった。でも、帰宅してから検索した。「50代 マッチングアプリ」。検索結果に出てくるのは30代のライターが書いた記事ばかりで、55歳の本人が書いたものは見つからなかった。


写真がない。撮り方がわからない


Omiaiをインストールして、最初にぶつかったのが写真だった。


スマホのカメラロールを開いた。自分の写真がない。最後に撮ったのは、去年の社員旅行の集合写真。自分がどこにいるかもわからないくらい遠い。自撮りは——やったことがない。インカメラの使い方は知っている。でも55歳の男がスマホを構えて自撮りしている姿を想像して、手が止まった。


洗面所の鏡の前で、3回試した。3回とも、画面に映った自分の顔が思っていたより老けていて、保存せずに消した。額のしわ。たるんだ頬。白髪。知ってはいたけど、アプリに載せるための顔として見ると、心臓のあたりがずしんと重くなった。


結局、後輩に頼んだ。「プロフィール用の写真を撮ってくれ」と。後輩は笑って「任せてください」と言って、昼休みに会社の近くの公園で撮ってくれた。「笑ってください」と言われて、ぎこちなく笑った。


「○○さん、もっと自然に」


「自然に笑えって言われても……」


20枚撮って、マシなのを3枚選んだ。後輩が「これでいけますよ」と言った。いけるのか、これで。


プロフィールに何を書けばいいのか


自己紹介文を書くのに、3日かかった。


「55歳、会社員です。趣味は——」で止まった。趣味。ゴルフは月1回。釣りは年に2回。テレビでプロ野球を見る。「テレビで野球を見ます」は趣味になるのか。


後輩のプロフィールを見せてもらったら、「休日は代官山のカフェでコーヒーを飲みながら読書してます」と書いてあった。おしゃれすぎる。55歳がこれを書いたら嘘だ。


正直に書いた。「週末は横浜の自宅で野球を見ています。月に1回ゴルフに行きます。料理は最近始めました。肉じゃがは得意です」。


後輩に見せたら「いいですね、嘘がない」と言われた。褒められているのかどうか微妙だった。


1ヶ月で3人。55歳の現実


いいねを送った。50人に送って、マッチしたのは3人。


年齢でフィルターをかけられている、というのは薄々わかっていた。アプリの検索設定で「45歳〜55歳」に絞っている人は多いだろう。私の場合、いいねが届いている時点でスルーされていることが多かったはずだ。


3人のうち1人は、やりとりの途中でフェードアウトした。もう1人は「お会いしたい」と言ったら「ちょっと考えさせてください」と言われて、そのまま。


3人目と、会うことになった。


「お父さんと同い年です」


横浜駅の西口で待ち合わせた。土曜の17時。相手は43歳の女性で、看護師をしていると聞いていた。


カフェに入って、コーヒーを頼んで、自己紹介をしていた。5分くらい経ったところで、彼女がふっと笑って言った。


「あ、うちのお父さんと同い年です」


悪気はなかったと思う。純粋に「あ、同じだ」くらいの感覚だったんだろう。でも、喉の奥がぎゅっと詰まった。


「お父さん」。自分が誰かの「お父さん世代」であるという事実が、面と向かって言葉になった瞬間、胃のあたりが冷たくなった。


「そうですか、元気なお父さんですか」と返した。声が少し掠れたと思う。彼女は「元気です、ゴルフばっかりしてます」と笑った。


1時間半話して、解散した。帰りの横浜線の中で、窓に映った自分の顔を見た。公園で撮ったあの写真より、やっぱり老けている。


それでも続けた理由


やめようと思った。「お父さんと同い年」が頭の中をぐるぐる回って、3日間アプリを開かなかった。


4日目の夜、風呂上がりに缶ビールを開けて、テレビをつけた。野球のない日で、バラエティを見ていたけど笑えなくて、消した。静かなリビングに、冷蔵庫のモーター音だけが聞こえていた。


「もう一人は嫌だな」。去年の正月に思ったことを、また思った。


翌日、アプリを開いた。プロフィールを少し書き直した。「55歳です。年齢を気にせず話せる方と出会えたら嬉しいです」を追加した。


2ヶ月後、同世代の女性とマッチした。52歳、保険の営業。横浜の中華街でランチをした。「肉じゃが得意なんですか」と聞かれて、「はい、でもまだ味が安定しません」と答えたら笑ってくれた。


「お父さんと同い年」とは言われなかった。当たり前だ。同世代だから。


彼女とは今も月に2回会っている。付き合っているのかどうかは、正直よくわからない。55歳の恋愛に名前をつけるのが照れくさくて、お互い何も言わないまま、中華街のいつもの店でビールを飲んでいる。


55歳でアプリを始めるのは、正解だったのか。半年経っても、その問いに自信を持って「はい」とは言えない。ただ、始めなかったら、あの静かなリビングに今もいた。それだけはわかる。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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