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タップルのウィッシュカードで「鎌倉行きたい」と書いた人。行く気なかった

タップルのウィッシュカードに「鎌倉行きたい」と書いてあった人にいいねした。鎌倉好きの私はテンションが上がった。でもデートで鎌倉を提案したら「え、遠くないですか」と言われた。書いてあっただけだった。

24歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

「鎌倉行きたい」。


タップルのウィッシュカードに、そう書いてあった。名前はユウタさん、26歳、IT企業勤務。プロフィール写真は海をバックに笑っている一枚。「あ、この人も鎌倉好きなんだ」と思って、いいねした。


私は鎌倉が好きだ。実家が藤沢で、高校時代は週末になると江ノ電に乗って鎌倉に行っていた。小町通りの食べ歩き、長谷寺の紫陽花、七里ヶ浜のビーチ。その全部に思い出がある。


だから、ウィッシュカードに「鎌倉行きたい」と書いてある人を見つけたとき、心臓がトクンと鳴った。この人と鎌倉の話ができる。もしかしたら、一緒に行ける。


メッセージは盛り上がった。鎌倉の話で


マッチしてすぐ、鎌倉の話を振った。


「ウィッシュカードに鎌倉って書いてありましたね!鎌倉好きなんですか?」


「あ、はい!行ったことはないんですけど、ずっと行きたくて」


行ったことない。ちょっと引っかかったけど、「行ったことないなら案内しますよ!」とテンション高めに返した。


「マジですか!嬉しい」


やりとりは順調だった。1週間で、鎌倉以外の話題にも広がった。仕事の話、好きな食べ物の話。ユウタさんの返信は早くて、文章も自然だった。


デートの場所を提案した。「え、遠くないですか」


2週目に入って、会う約束をしようとなった。


「せっかくだから鎌倉行きませんか?小町通りで食べ歩きして、海沿い歩いて。天気良ければ江ノ島も見えますよ」


ユウタさんの返信は、少し遅かった。いつもは10分以内なのに、1時間空いた。


「えー、鎌倉って東京から結構遠くないですか?」


手のひらが冷たくなった。


「行きたいって書いてませんでしたっけ?」


「あー、あれはなんか、雰囲気で書いちゃったんですよね。鎌倉っていいなーって思って。でも実際行くとなると……」


雰囲気で書いた。


ウィッシュカードの「行きたい」は、「いつか行ってみたいなあ」くらいの温度だった。「次の週末に行こう」ではなく、「インスタで見て素敵だなと思った」レベル。


みぞおちのあたりが、じわっと重くなった。


渋谷のカフェで会った。鎌倉の話はしなかった


結局、渋谷のカフェで会った。ユウタさんが「渋谷なら行きやすいです」と言ったから。


会ってみたら、感じのいい人だった。背が高くて、声が穏やかで、メニューを選ぶときに「先にどうぞ」と言ってくれた。


でも、鎌倉の話は一度も出なかった。こっちからも振らなかった。振ったら「行ったことないんですけど」の先がない。1時間半、渋谷のカフェで当たり障りのない話をして、解散した。


帰りの湘南新宿ラインの中で、車窓をぼんやり見ていた。電車が大船を過ぎたあたりで、海がちらっと見えた。いつもの景色なのに、なんだか遠く感じた。


ウィッシュカードの「行きたい」は本気じゃない


後で友達に話したら、「あるあるだよ」と言われた。


「ウィッシュカードって、マッチするためのネタだから。本気で行きたい人なんて半分もいないよ」


そうなのか。私は本気で鎌倉に行きたい人を探していた。でもタップルのウィッシュカードは、そういう使われ方をしている——「共通点を作るための道具」であって、「本気のやりたいことリスト」じゃない。


考えてみれば、私だって「おしゃれなバーで飲みたい」というウィッシュカードにいいねしたことがある。おしゃれなバーに行きたいかと聞かれたら、「まあ、行けたらいいかな」くらいの温度だった。同じことだ。


もう一人、鎌倉好きの人に会った


ユウタさんとは2回目のデートはなかった。「また行きましょう」と言われたけど、「はい」と返してそのまま。嫌いになったわけじゃない。ただ、最初の「鎌倉行きたい」で膨らんだ期待がしぼんだまま、元に戻せなかった。


1ヶ月後、別の人とマッチした。その人のプロフィールには、ウィッシュカードじゃなくて自己紹介文に「鎌倉の報国寺の竹林が好きで、年3回は行きます」と書いてあった。


「報国寺、いいですよね。竹林の奥のお茶席知ってますか?」と送ったら、「知ってます!抹茶飲みました。あそこ最高ですよね」と返ってきた。


手のひらが、今度は温かかった。


初デートは鎌倉にした。北鎌倉の駅で待ち合わせて、円覚寺を歩いて、建長寺まで歩いて、小町通りで食べ歩きをした。彼は「この角を曲がるといいお店があるんですよ」と言って、私が知らない店に連れて行ってくれた。


ウィッシュカードの「行きたい」と、自己紹介文の「年3回行きます」の間には、想像以上の距離があった。


書いてあることを信じるなとは思わない。ただ、「書いてある」と「本気でそう思っている」は違うことがある、ということを、渋谷のカフェで学んだ。


ユウタさんが悪い人だったとは思わない。ただ、「行きたい」の温度が違っていただけ。それがわかったのは会ってからで、会わなければわからなかった。


その判断が面倒だと思う日もある。でも会わないとわからないことを、会わずに済ませる方法は、たぶんまだない。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#Tapple#ウィッシュカード#鎌倉#恋愛体験談

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