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恋愛体験談エッセイTapple

あの夜と同じコーヒーを頼むたびに後悔する

1年前、下北沢のL'atelierで伊藤くんと4時間話した。また会う約束をした。彼から連絡は来なかった。今も月に一度この店に来て、エチオピアの豆を浅めで頼んでいる。あの日と同じコーヒーを、今日もひとりで飲んでいる。

25歳・女性の体験
·橘みあ·4分で読める

正直に言う。忘れたかったのに、また同じ席に来てしまった。


入口から入ると、左奥の席に座る。窓がなくて、少し薄暗い席。でも、ここじゃないと落ち着かない。理由は、一年前にここで伊藤くんと4時間話したから、それだけだ。


毎回エチオピアを頼む。「豆はエチオピアで、浅めに」と言うと、店員さんがうなずく。顔を覚えてくれているのかどうかはわからない。でも私は覚えている、一年前にここで同じ注文をしたことを。


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Tappleで伊藤くんとマッチングしたのは去年の秋


Tapple で伊藤くんとマッチングしたのは去年の秋だった。


プロフィールに「グラフィックデザイナー、下北沢在住、コーヒーが好きです」と書いてあった。下北沢在住、という一言が気になって、胸が少し動いた。「どこのカフェが好きですか」と送った。「L'atelier というところをよく使ってます」と来たから「私も好きです」と返したら、そのまま話が続いた。


実際に会う前から、話が合いそうだと思っていた。メッセージが続くテンポが、自分と似ていた。短文と長文が混ざって、急かさない感じ。


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初めて会ったのは10月の土曜日。L'atelier の入口で待っていたら、15分遅れてきた。「すみません」とだけ言って、特に言い訳はしなかった。別にいいと思った。


コーヒーを頼んで、席に座った。彼はエチオピアを頼んで、私も同じにした。「同じですね」と彼が言った。「なんとなく合わせちゃいました」と私が答えたら、「それでいいと思います」と言って少し笑った。


話し始めると、時間が飛んだ。


デザインの話、音楽の話、下北沢の街の変化の話、好きな映画の話、コーヒーの話、実家の話。テーマが変わるたびに深くなった。彼は話を聞くのがうまかった。私が何かを言うと、「それってどういう意味ですか」と聞いてくる。聞き方が、ちゃんと聞いている感じがした。


気づいたら4時間経っていた。「もう夜ですね」と彼が言う。窓のないこの席は、外の明るさがわからない。


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店を出て、下北沢の夜の通りを少し歩いた。


「また会いましょう」と彼が言った。「会いましょう」と私も言った。「どこにします?」「L'atelier でもいいし、どこでも」「じゃあまた連絡します」。


別れて、電車に乗って、家に帰って、お風呂に入りながらあの4時間を何度も思い返した。良い時間だったと思っていた。また会いたいと思っていた。


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1週間経った。LINEは来なかった。


「最近どうですか」と送った。返信は翌日来た。「元気です、ちょっとバタバタしてて」。「そうなんですね、また落ち着いたら」と送った。「はい、また」と来た。


「また」は来なかった。


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2週間後に再度「L'atelier また行きましょうか」と送った。既読がついて、返信は来なかった。3日後「お時間あるときでいいので」と送った。既読がついた。


返信は来なかった。


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それでも月に一度、L'atelierに来る


何が理由かは、今でもわからない。


4時間話して、「また会いましょう」と言って、消えた。理由を聞く勇気もなかったし、聞いたとして何か変わったかもわからない。


怒りとも、悲しみとも少し違う感情が、しばらく胸の底に沈んでいた。水の中の砂みたいに、揺らすとふわっと上がってくる。


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それでも月に一度、L'atelier に来る。


左奥の席に座って、エチオピアを頼む。コーヒーが来て、カップを持って、あの4時間を少し思い出す。彼の話し方、「それってどういう意味ですか」という聞き方、コーヒーが同じだったこと。


悼んでいるわけじゃない。ただ、あの席に座ると、あの日の空気がまだ少し残っている気がする。


同じ豆、同じカップ、違う相手——それでもこのコーヒーは、一人でも美味しい。


あの4時間は本物だった、と思うことにしている。終わり方が答え合わせじゃない、と。


L'atelierのエチオピアは、今日も変わらず同じ味がする。豆の産地も、焙煎の深さも、あの日と同じ。


変わったのは私で、隣に誰もいないことが、今は普通になった。「また会いましょう」と言って消えた人のことを考える頻度も、月に一度が週に一度になって、今は思い出したときだけになった。


いつか、誰かとここに来るかもしれない。そのとき、エチオピアを頼むかどうか、まだわからない。


また来るよ、L'atelier。一人でも、誰かと一緒でも。このコーヒーは、あの日の記憶と一緒に、今日も美味しい。


あの4時間は、本物だったと思う。終わり方が答えじゃない。あの時間の濃さだけで、十分だった。それを認めるのに、少し時間がかかった。


月に一度のL'atelierが、私の時間の目盛りになっている。あの日から今日まで、何ヶ月経ったかを数えるように、飲んでいる。


一人でコーヒーを飲むのに、あの4時間の席に戻ってしまう。

よくある質問

どのアプリで知り合ったのですか?
Tappleで知り合った伊藤くんで、グラフィックデザイナーの下北沢在住でした。「コーヒーが好きです」というプロフィールが気になって連絡したとのことです。
今でも同じカフェに一人で行くのはなぜですか?
下北沢のL'atelierに月に一度くらい来て、毎回エチオピアを同じように注文するとのことです。記憶の場所に戻ることで、あの4時間をどこかで続けているような感覚があるのかもしれません。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#Tapple#切ない#コーヒー#1回だけ#未練

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