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恋愛体験談エッセイ

半年前に「違う」と決めた人から連絡が来て、もう一度だけ会いに行った

半年前にアプリで一度会って、そのまま自然消滅させた人からLINEが来た。平日昼の12時17分。「久しぶりです。元気ですか」——断る理由もなく恵比寿で2時間話したら、「違う」と思っていた理由を思い出せなくなっていた。セカンドチャンスの話。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。「もう一度だけ」と会いに行ったのに、答えが出た。


「久しぶりです。元気ですか」


送信時刻は、平日の昼12時17分。名前を見て、一秒くらい止まった。半年前にアプリでマッチして、一度だけ会って、そのまま連絡を途絶えさせた人。なぜLINEを持っているのかと思ったら、ちゃんと交換していたらしい。自分のことなのに、覚えていなかった。


その頃の私は、割と機械的に動いていたと思う。週に二、三人と会って、「なんか違う」と感じたらそっと画面から消えていく。特別に残酷なことをしているつもりはなかった。みんなそうやっているから、と思っていた。


彼を消した理由も、たいしたものじゃなかった。「話が合わない気がした」「見た目がそこまで好みじゃなかった」。今思うと、根拠が薄い。一回会っただけで、渋谷の騒がしいカフェで、お互いにまだよそ行きの声で話していた、あの一時間で。


返信した理由


返信しなければよかった、とは思わなかった。


「元気です。あなたは?」


打ち込んで、送った。なんとなく。深い意味はなかったけど、完全に無意味でもなかった。なぜかというと、その日の朝、会社でちょっとしんどいことがあって、昼休みにひとりでコンビニのおにぎりを食べていた。人肌みたいなものが、少しだけ欲しかったのかもしれない。


やりとりは続いた。「仕事がちょっと変わって」「そうなんですね、大変でしたか」「まあ、慣れてきました」。他愛ない言葉の往復。でも彼の返信は、なぜかテンポがよかった。急かしてこないし、既読無視もしない。ちゃんと読んでいる感じがした。


「またどこかで話せたら嬉しいです」


そのメッセージが来たとき、断る言葉が出てこなかった。忙しくもなかったし、嫌いなわけでもない。「違う」と思った理由が、もう霧みたいに薄くなっていた。


恵比寿の夜


11月の恵比寿は、夜になると少し冷える。


ログロードの石畳を歩きながら、「なんで来たんだろう」とぼんやり考えていた。好きで来たのか、暇で来たのか、自分でもわからなかった。胸の中に、期待とも緊張とも言えない何かが、小石みたいに転がっていた。


彼は先に来ていた。駅前のバーの入口で、スマホを見ながら立っていた。半年前と同じ紺色のコート。記憶よりすこし、背が高かった。


席に着いて、グラスが来て、話し始める。最初の五分は、「やっぱり違う気がする」と思っていた。正直に言うと。どこかよそよそしい空気が、まだ残っていて。私も彼も、半年前の一回を引きずっていた。


でも、変わったのはそこからだった。


私が仕事の愚痴を言い始めたとき、彼は遮らなかった。うなずきながら、「それ、どういう状況だったんですか」と聞いてきた。説明を求めるんじゃなくて、もっと聞きたいから聞く、みたいな感じで。気がついたら、私はお気に入りのワインバー「リストランテ ラ・スコリエラ」の話まで、なぜかしていた。行ったこともない彼に。


「前も、こんな感じでしたか」


自分でも変なことを聞いていると思った。


「どうでしょう」と彼は少し笑って、「変わったかもしれません」と言った。


変わったのは、私の方かも


変わったのは、私の方かもしれなかった。


グラスを傾けながら、「なんか違う」と切り捨てた半年前の自分のことを、思っていた。あのころ、私は何を探していたんだろう。一回目で確信が持てない人は、最初から違うと思い込んでいた。ドラマみたいな「ピン」とくる感覚を、恋愛に求めていた。


でも実際のところ、人ってそんなに一瞬でわかるものじゃない。


彼は2時間、私の話を遮らなかった。自分の話もした。仕事のこと、地元の話、大学のときに夢中だったこと。渋谷のカフェで聞いた「彼」と、同じ人のはずなのに、全然違った。同じ曲なのに、音響が変わると別の曲に聞こえる、みたいな。


帰り道、恵比寿駅のホームで電車を待ちながら、「また会いたい」と思った。自分でも少し、驚いた。


---


その後、四回会った。


代官山を歩いたり、新宿三丁目の小さな居酒屋でしこたま食べたり、雨の日に彼の家の近くのスーパーで一緒に買い物をしたり。気がついたら、「付き合ってください」という言葉より先に、一緒にいることが普通になっていた。


「あのとき返事しなかったら」と、ときどき考える。


コンビニで昼ごはんを食べていたあの日、「元気です」の五文字を打たなかったら。そのまま彼の名前は、LINEの画面の奥で埋もれていた。


怖いのは、「なんか違う」という感覚が、完全な嘘じゃなかったことだ。あのとき確かに、そう感じた。でも今思うと、それは「今この瞬間は」という意味でしかなかった。人を知るには、一回の一時間は短すぎた。


それに、人はちゃんと変わる。環境で、時間で、少しずつ。彼も変わっていたかもしれないし、私が変わっていたのかもしれない。どちらかというと、たぶん両方。


彼は今でも、私の話を最後まで聞く。それが好きだと、最近ようやく言葉にできた。


---


今でも迷うことがある。でも、戻りはしない。

よくある質問

どこで再会したのですか?
アプリで一度会って自然消滅させた相手から、半年後に突然LINEが届きました。断る理由もなく、恵比寿で2時間ほど話したとのことです。
なぜ一度「違う」と思ったのですか?
初回に会ったとき「話が合わない気がした」「見た目がどうも」といった曖昧な理由で消えていったようです。当時は週に2〜3人と会って、なんとなく違うと感じたら画面から消えるという機械的な動きをしていたと振り返っています。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#ストーリー#セカンドチャンス#再会

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