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恋愛体験談エッセイ

同じシェアハウスで半年間すれ違い、ようやく気持ちを伝えた話

杉並区の古いシェアハウス、4人部屋。毎日顔を合わせるからこそ、半年間何も言えなかった。引越しの知らせを受けた夜、初めて「もう怖くない」と思えた——毎日すれ違い続けた後、気持ちをようやく伝えた告白の話。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。同じ家に半年住んだのに、気持ちを言えなかった。


古い一軒家を改装したシェアハウス。木の床がきしむ音、共用キッチンに残るだれかの料理の匂い、そういうものが最初から好きだった。4人部屋。入居前の顔合わせで初めてメンバーと会って、彼女は一番最後に来た。小さなボストンバッグと、段ボールが2箱。「よろしくお願いします」という声が少し上ずっていて、それだけで、なんとなく目が離せなかった。


重なっていく生活


生活というのは、気づかないうちに重なっていく。


他の2人は仕事が遅く、夜はだいたい私たちだけがキッチンにいた。「今日ご飯どうするんですか」「パスタ作るつもりです」「多めに作りますよ」「ありがとうございます」。そういう短いやりとりが毎日あって、気づいたら並んで火加減を調整して、ソファで同じバラエティを見て笑っていた。朝はコーヒーメーカーの前で少し話して、それぞれ仕事に出た。特別なことは何もなかった。でも、その何もなさが、毎日少しずつ積み上がっていった。


意識したのは、2ヶ月目の週末だった。


買い物から帰ってきた彼女が、玄関に荷物を置くなり「疲れた〜」と言いながらリビングに倒れ込んで、そのままソファで眠ってしまった。テレビはつけっぱなしで、夕方の光が窓から斜めに差し込んでいて、彼女の横顔がそこにあった。視線をそらせなかった。そらしたくなかった、というほうが正確かもしれない。


あ、好きだ、と思った。


思ったと同時に、胃のあたりがすっと冷えた。


住んでいる限り、毎日会う。振られたら、毎日顔を合わせる。台所に立つたびに、廊下ですれ違うたびに、その気まずさを引きずって生活しなければいけない。シェアハウスから出て行くのは私か彼女か、そういう話になりかねない。同じ屋根の下で暮らすということは、逃げ場がないということだった。怖かった。


だから言えなかった。


気持ちを隠したまま隣にいることの消耗は、思ったよりずっと大きかった。「今日の話し方、変だったかな」「目が合ったとき、何か気づかれた?」毎回そういうことを確認しながら、普通に笑って、普通に話して、普通の同居人でいようとした。それが半年続いた。WIRED TOKYOのトートバッグを彼女が使っているのに気づいたとき、同じブランド好きなんだと思ってうれしくなって、でもそれを言えなかった。そういう小さな「言えなかった」が、何十回も積み重なっていた。


引越しまでの1週間


10月の、雨の多い時期だった。


「引越しします」と言われた。仕事の都合で、会社に近い場所に移るつもりだと。


「そうか」と言いながら、奥歯を噛んでいた。「いつ?」「来月くらい」「そうか」。それしか出てこなかった。笑顔を作れたかどうかも、今になっても覚えていない。


その夜、自分の部屋に戻って天井を見ていた。言わないまま見送る自分の姿を想像した。タクシーが来て、段ボールが積まれて、「お世話になりました」で終わる。それが怖かった。気まずくなることより、このまま消えてしまうことのほうが、ずっと怖かった。


じゃあ、言うしかない。


翌日の夜、リビングに二人だった。テレビをつけていたけれど、何かのはずみで音を消した。静かになった。外から車の音だけが遠く聞こえていた。今だ、と思った。今じゃないかもしれない、とも思った。両方が同時にあった。


「実は半年間、好きでした」


声が少し震えた。「シェアハウスにいる間は言えなくて」と続けたら、彼女がこちらを向いた。


「え、本当に?」


「本当に」


「いつから?」


「2ヶ月目くらい」


「そんなに前から」


「ずっと言えなかった」


「なんで」


「怖くて」


「気まずくなるのが?」


「そう」


それだけ言ったら、なぜか泣きそうになった。泣きたいわけじゃないのに、体がそっちに引っ張られた。半年分の「言えなかった」がどこかに滞留していたのかもしれない。


引越しまでの1週間、毎日話した。今まで一番たくさん話した。好きなものの話、仕事の話、子どもの頃の話、なんで東京に来たかの話。半年間すれ違っていた時間を取り戻すみたいに、キッチンでもリビングでも話し続けた。なんでこれを半年間できなかったんだろう、と思いながら。でも半年間できなかったから、今これができているのかもしれない、とも思いながら。


引越し当日は晴れていた。


段ボールを玄関まで運んで、タクシーを一緒に待った。荷物が積まれて、乗り込む前に「付き合ってください」と言ったら、「はい」と言ってくれた。短い返事だったのに、そのあと玄関の空気が少し変わったのがわかった。私だけが緊張していたわけじゃなかったのかもしれない。


別々の家に住んでから、付き合い始めた。


あとから「もっと早く言えばよかった」と言ったら、「でもこのタイミングがよかったかもしれない」と返ってきた。「なんで」と聞いたら、「ちゃんと考えてから言ってくれた気がして」と言われた。


半年間、毎日顔を合わせながら言えなかったことを、彼女はそういうふうに受け取ってくれていた。あの半年が正しかったとは言えない。でも、黙っていた時間まで丸ごと受け止めてもらえたことは、今でも少し不思議だ。


遠回りだったのに、あの家のきしむ床の音まで含めて全部だった気もする。

よくある質問

なぜ半年間、何も言えなかったのですか?
毎日顔を合わせるシェアハウスの同居人だったため、関係がこじれることへの恐れがあったようです。近すぎるからこそ、踏み出せなかった半年間でした。
気持ちを伝えたのはどのタイミングだったのですか?
彼女の引越しの知らせを受けた夜、初めて「もう怖くない」と思えて伝えたとあります。いなくなってしまうという現実が、背中を押したようです。
ふたりはどこに住んでいたのですか?
杉並区の古いシェアハウスで、一軒家を改装した木の床がきしむ場所だったと書かれています。共用キッチンで夜に二人でいることが多く、そこから距離が縮まっていきました。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#ストーリー#シェアハウス#告白
このテーマを読む:告白体験談

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