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恋愛体験談エッセイPairs

3人同時進行がバレた夜。下北沢の居酒屋で、隣のテーブルに「もう1人」がいた

Pairsで3人と同時にやりとりしていた。倫理的にグレーだと思いながら、「まだ付き合ってないし」と自分に言い聞かせていた。あの夜、下北沢の居酒屋で隣のテーブルを見るまでは。

27・maleの体験
·橘みあ·9分で読める

3人と同時にやりとりしていた。全員Pairs。全員に「今週末空いてます」と送っていた。


言い訳をさせてほしい。まだ誰とも付き合っていなかった。1回目のデートが終わった人が2人、2回目まで進んだ人が1人。「付き合うまでは同時進行OK」——Twitterでそう書いてあるのを何度も見た。自分に都合のいい情報だけを集めていた。


27歳、IT企業のバックエンドエンジニア。平日はリモートワークで人と会わないから、週末のデート予定だけが生活に色をつけてくれていた。



「管理」し始めた時点で、たぶん終わっていた


iPhoneのメモアプリに、3人の情報を書いていた。


- Aさん(26歳・看護師):猫好き。スタバのカスタマイズに詳しい。1回目デート済み、下北沢のカフェ。

- Bさん(28歳・事務職):読書好き。村上春樹の話で盛り上がった。2回目デート済み、吉祥寺の古本屋→井の頭公園。

- Cさん(25歳・アパレル):1回目デート済み、渋谷のパンケーキ屋。インスタのストーリーをよく見てくれる。


メッセージを返すとき、メモを見返してから返信していた。「Aさんには猫の話を振る」「Bさんとは本の話題を忘れない」「Cさんにはストーリーにリアクションする」。


管理。完全に管理だった。恋愛じゃなくて、タスク管理。Notionで案件を回すのと同じ感覚になっていた自分に、あの時は気づいていなかった。



下北沢の居酒屋、土曜の夜


その日はAさんとの2回目のデートだった。下北沢駅の南口で待ち合わせて、路地裏の焼き鳥屋に入った。カウンター席が空いていなくて、奥のテーブル席に通された。


ハイボールを頼んで、Aさんの飼い猫の写真を見せてもらっている時だった。


隣のテーブルから、聞き覚えのある声がした。


心臓が止まるかと思った。


振り向けなかった。でも声でわかった。Cさんだった。別の男と来ていた。それ自体は別にいい。自分だって同時進行しているんだから、相手もしているだろう。問題はそこじゃなかった。


Cさんが席を立ってトイレに行くとき、こっちのテーブルの横を通った。目が合った。一瞬だけ。Cさんの目が、ほんの0.5秒だけ大きくなった。


焼き鳥の煙がもわっと立ち込める中で、Aさんが「どうしたの? 顔色悪いよ」と言った。



トイレの前で


5分後、「ちょっとトイレ」と言って席を立った。手のひらに汗がにじんでいた。


廊下でCさんが待っていた。腕を組んで、壁にもたれて。


「……ねえ、あの人誰?」


声は静かだった。怒っているというより、確認しているトーン。


「友達」


自分でも驚くくらい、すぐに嘘が出た。


「ふーん。友達ね」


Cさんはそれだけ言って、テーブルに戻った。俺も戻った。焼き鳥のつくねが冷めていた。味がしなかった。


Aさんは何も気づいていなかった。「つくね美味しいね」と笑っていた。その笑顔を見て、胃の奥が重くなった。



翌朝のLINE


日曜の朝9時。Cさんからメッセージが来た。


「昨日の人、Pairsの人でしょ。私のこと検索したら、あなたの足あとついてたの知ってる。同時進行してるなら最初から言ってほしかった。別にいいけど、嘘つかれたのがムリ」


スマホを持つ手が震えた。ベッドの上で、毛布を頭まで被った。27歳にもなって、こんな子供みたいなことをしている自分が情けなかった。


Cさんには正直に謝った。「同時進行していた。嘘をついてごめん」。返信は「わかった。もう連絡しないね」。ブロックはされなかった。でも、それきり。



Bさんにも伝えた


Cさんの件の後、Bさんにも正直に言った。吉祥寺のドトールで向かい合って座って、「実は他の人ともやりとりしていた」と。


Bさんは少し黙って、アイスコーヒーのストローを指で回していた。


「……知ってたよ。なんとなく。返信の時間が不規則だったから」


「同時進行がダメとは思わない。でも、2回目のデートまで来て言われると、ちょっとキツいかな」


帰り道、井の頭公園の池沿いを一人で歩いた。ベンチに座って、しばらくスマホを見つめていた。3人分のトーク画面。どれも、もう動くことはない。



同時進行は「悪」か


今でもわからない。「付き合うまでは同時進行OK」というルール自体は間違っていないと思う。マッチングアプリはそういう場所だし、相手だってしている可能性はある。


でも「管理」し始めた瞬間に、何かが壊れる。メモアプリで3人の特徴を整理していた自分は、誰のことも見ていなかった。目の前の人と向き合うことより、「3人を回す効率」を考えていた。


Bさんが言った「返信の時間が不規則だった」という言葉が、一番刺さった。バレたのは下北沢の居酒屋じゃなくて、もっと前——LINEの返信タイミングで、とっくにバレていた。


3人全員を失った。当然だと思う。


あれから半年経った。今はPairsで1人だけとやりとりしている。メモアプリは使っていない。返信は、思いついた時にすぐ返す。それだけで、メッセージの温度が全然違う。


同時進行が問題なんじゃない。目の前の人を「管理対象」にした瞬間に、恋愛は終わる。

よくある質問

マッチングアプリの同時進行は何人までが適切ですか?
やりとりは2〜3人まで、デートは同時期に2人までが現実的な上限です。それ以上になるとメッセージの管理が雑になり、相手にも不誠実さが伝わります。「目の前の人に集中できる数」が基準です。
同時進行していることを相手に伝えるべきですか?
聞かれたら正直に答えるのがベストです。自分からわざわざ伝える必要はありませんが、嘘をつくのは信頼を失う最短ルートです。「まだお付き合いの段階ではないので、他の方ともお会いしています」程度の伝え方で十分です。
同時進行がバレたときはどう対処すべきですか?
言い訳せず、正直に認めて謝ることが最善です。「友達」などの嘘は状況を悪化させます。相手が許してくれるかは相手次第ですが、誠実に対応した事実は自分の中に残ります。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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