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恋愛体験談with

タトゥーを見られた。反応が、予想と全然違った

withで知り合った彼女と、夏に初めて半袖で会った。左腕のタトゥーを隠す癖があったけど、気づかれた。彼女の反応は、私が10年間で一番想定していないものだった。

28歳・男性の体験
·橘みあ·5分で読める

7月の最初の週末、横浜で会った。


赤レンガ倉庫の近くで待ち合わせて、元町を歩いた。海からの風があって、午前中は日陰に入れば涼しかった。港の方から潮の匂いがして、元町の商店街はまだ人が少なかった。週末の午前10時。横浜の夏の朝は、東京より少し風が違う。


その日は白のTシャツを着ていた。半袖。


withで知り合って、彼女と会うのは4回目だった。1回目から3回目まで、ずっと長袖を着ていた。春先だったから不自然じゃなかった。3月、4月、5月と、薄手のシャツや長袖カットソーで来ていた。でも7月は、さすがに。東京の7月に長袖で来たら、それだけで不審に思われる。


左腕に、タトゥーがある。手首から肘の内側にかけて、羽根のデザインが入っている。20歳の頃に入れた。大学の友達と一緒に、ノリで入れた。下北沢にあるスタジオで、2時間かけて入れてもらった。値段は当時のバイト代3ヶ月分くらいした。でも今でも後悔はしていない。羽根の線が気に入っているし、20歳の自分があの衝動で入れたことも、なんか好きだ。


問題は、知られたくない状況があること。温泉、プール、バイト。そして、好きな人の前。


(どう思われるか、わからないから)


昔、入れているのを知られて気まずくなったことがある。「え、大丈夫なの?」という反応から始まって、なんとなく距離が置かれた。それからずっと、最初のうちは隠すようになった。2回、3回と会って、「この人なら大丈夫かもしれない」と思えてから、少しずつ見せる。そういうルーティンがいつの間にかできていた。


元町の商店街を歩きながら、気づいたら袖を少し引っ張っていた。Tシャツの袖は短くて、手首あたりまでしか覆わない。歩いているうちに少しずれた。肘の内側が見えていた、かもしれない。


「それ、隠してますか」


彼女が言った。


止まった。


「入ってますよね、なんか。ちらっと見えた」


商店街の人波が脇を通り過ぎていく。返事を考えた。1秒か2秒か。隠す理由は、もうない気がした。3回会って、彼女はずっとフラットだった。変なことで驚かない人だというのは、わかっていた。


「……入ってる」


「見せてもらっていいですか」


袖をまくった。羽根のデザイン、縦に15センチくらい。インクは黒一色。細い線が幾重にも重なって、羽根の繊維を表している。


彼女が覗き込んできた。黙って見ていた。3秒くらい。4秒かもしれない。商店街のざわめきが遠くなった気がした。


「線がきれいですね」


喉の奥が詰まった。


「……え」


「デザイン、どこで頼んだんですか?」


「下北沢のスタジオ。20の頃」


「へえ。ずっと入れたかったものですか?」


「ノリで入れたんですけど、後悔はないです」


「笑 それがいいんじゃないですか」


それだけだった。


責めなかった。「え、なんで隠してたの?」も聞かなかった。「就活大変じゃなかった?」も言わなかった。ただ、線がきれい、と言った。デザインの話を聞いた。後悔のない話に「それがいい」と言った。それだけだった。


元町のカフェに入って、コーヒーを頼んで、窓の外を見た。海が少し見えた。元町・中華街駅の方向に、山の手の家並みが続いていた。


「ずっと隠してた?」


「最初のうちは。長袖で来てた」


「笑 4月でも?」


「4月でも」


「寒くなかったの?」


「普通に寒かったです」


「馬鹿みたいじゃないですか、なんか」


「笑 馬鹿みたいでした。本当に」


「なんで今日半袖で来たんですか?」


少し考えた。本当のことを言おう、と思った。


「7月に長袖はさすがに不自然かなって。あと、そろそろいいかなって思ったんです。この人なら、と思ったんです」


彼女がコーヒーカップを持ったまま、少し沈黙した。


「ありがとうございます」


「え、なんで彼女がお礼言うの」


「なんか言いたくなったので」


港の方から船の汽笛が聞こえた。元町の古いカフェに、午前の光が差し込んでいた。彼女の横顔が、少し笑っていた。


帰り道、山下公園を歩いた。中華街でお茶と小籠包を食べた。タトゥーの話は、もう一度も出なかった。でも袖をまくったまま歩いた。


隠していたものを隠さなくていい人に出会うのは、思ったより突然だった。


「線がきれい」という一言が、3回分の長袖を脱がせた。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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