ゼクシィ縁結びで出会った夜、後悔しないで7ヶ月で婚約した話
「婚活は惨めだ」と思いながら始めた。でも3人目に会った人が、7ヶ月後に指輪を持ってきた。マッチングから婚約までの、ほぼリアルな記録。婚約指輪を見た瞬間、最初に思ったのは「ゼクシィ縁結びで出会ったって、今後ずっと言えないな」だった。
正直に言う。7ヶ月で婚約したのに、最初は言えないと思っていた。
箱根の旅館の夕食後、彼が「渡したいものがある」と言って、ポケットから小さな箱を出した。中目黒の宝石店のロゴが入っていた。そのとき笑ってしまったのは、ゼクシィ縁結びで出会ったことへの照れと、「本当になるんだ」という実感が混ざったからだ。
ゼクシィ縁結びを選んだ理由
29歳の春、会社の昼休みに丸の内のファミマでおにぎりを買いながら、スマホでゼクシィ縁結びをダウンロードした。Pairsも使ったことはあるけど、2年使って「なんとなく会って、なんとなく消える」を繰り返して疲れ果てた。
ゼクシィ縁結びが違ったのは、プロフィールに「結婚に対する考え方」を選択式で表示できることだった。「2年以内に結婚したい」「相手が見つかればすぐにでも」みたいな項目がある。最初からお互いの温度感がわかるから、「この人は遊びなのか本気なのか」を探る必要がない。あの探り合いの時間が、一番消耗する。もう、あれはやりたくなかった。
マッチングから初デートまで
出会いは、登録して3週間後だった。プロフィールを読んで「読書が好き」という一点でいいねを送ったら、翌日返信が来た。メッセージは「どんな本が好きですか」から始まって、村上春樹の話で30往復が過ぎた。「あの、実際に会いませんか」と言ったのは私のほうだった。自分から言うなんて初めてで、送信ボタンを押した後、スマホを裏返しにしてデスクに突っ伏した。心臓がうるさくて、隣の席の同僚に聞こえてないか心配だった。
1回目は渋谷のカフェ。センター街を抜けた先の、路地にある静かな店。カプチーノの泡に描かれたハートが少し崩れていて、それを見ながら彼が「緊張してます」と言った。
「私もです」
2時間半話した。本の話から映画の話になって、休日の過ごし方になって、家族の話になった。アールグレイの香りがテーブルに漂っていた。窓の外を通り過ぎる人の影が、テーブルの上をゆっくり横切った。帰り際に「また会えますか」と聞かれた。声が少し低かった。緊張しているんだとわかった。「はい」と返したとき、自分の心臓も速くなっていた。
3回目のデート——温度が変わった瞬間
3回目のデートで、空気が変わった。
中目黒の川沿いを歩いていた。12月の夕方で、目黒川にイルミネーションの光が反射していた。吐く息が白くて、マフラーに顔を埋めていた。足元の落ち葉がかさかさ鳴る。
彼が突然立ち止まった。
「僕、結婚に焦っているわけじゃないけど、ちゃんと考えている人と会いたくてゼクシィ縁結びを選んだんです」
心臓がどくん、と鳴った。
「……同じです」と返した。2秒の沈黙があって、彼が少し笑った。そのとき、彼のダウンジャケットからふわっとシャボンみたいな香りがした。手を伸ばせば届く距離にいるのに、その数センチが妙に遠かった。
その日から、週に1〜2回会うようになった。代官山の蔦屋書店で本を選んで、中目黒のカフェでコーヒーを飲んで、恵比寿で夕飯を食べて。デートのたびに、手が触れる距離が近くなっていった。指先が触れたとき、背筋にぞくっと電気が走るのを必死で顔に出さないようにしていた。
プロポーズの瞬間——箱根の旅館で
5ヶ月目に「付き合いましょう」という正式な言葉があった。渋谷のカフェ、1回目に会ったあの同じ店で。窓際の同じ席。カプチーノのハートは、今度はきれいに描かれていた。あのとき崩れていたハートが、ちゃんと形になっていた。
6ヶ月目に両方の実家に挨拶に行った。彼の実家は川越で、お母さんが出してくれたほうじ茶が甘くて、手の中で湯呑みが温かかった。「読書が好きなの、聞いてるわよ」とお母さんが笑った。泣きそうになったのを、お茶を飲むふりで隠した。
7ヶ月目に箱根へ行った。紅葉が終わりかけの11月。旅館の玄関で靴を脱いだとき、畳と木の匂いが鼻を通った。部屋に入ると窓から山の稜線が夕焼けに赤く染まっていた。
夕食後、部屋に戻ったところで彼がポケットに手を入れた。
「渡したいものがある」
小さな箱が出てきた。中目黒の宝石店のロゴ。開けたら、シンプルなプラチナの指輪だった。
「一緒にいてくれますか」
彼の声が震えていた。私も震えていた。うなずくことしかできなくて、涙が畳にぽたぽた落ちた。温泉の硫黄の匂いが、窓の隙間から入ってきていた。彼の手が私の手を包んだとき、指先が冷たくて、でも手のひらだけ熱かった。遠くで鹿威しがかこん、と鳴った。
「ゼクシィ縁結びで出会ったって恥ずかしい」という気持ちは、3ヶ月目にはなくなっていた。恥ずかしいと思っていたのは自分だけで、彼は最初から堂々としていた。
正直な場所で正直な人に出会えたのに、最初は言えなかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。