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優しくされることに慣れていなかった夜の後悔

Pairsで最初のメッセージが「プロフィールの吉祥寺の写真、どこで撮ったんですか?」だった彼。ちゃんと見てくれたと思った瞬間、なぜか構えた。優しくされることが怖くて疑ってしまう——優しさを受け取ることにも練習がいると気づいた話。

27歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

「プロフィールの吉祥寺の写真、どこで撮ったんですか」


疑うことが、癖になっていた


Pairsで彼と話し始めたのは、去年の11月のことだった。


マッチングして最初のメッセージが「プロフィールの吉祥寺の写真、どこで撮ったんですか?」だった。変なナンパ文句でも、コピペの定型文でもない。ちゃんと私のことを見てくれたんだ、と思った。そのときは、ちょっと構えた。


3回のデートを経て、5回目に「もう少し会う頻度増やしたいんですけど、どうですか」と言われた。嬉しかった。嬉しかったはずなのに、家に帰ってから「なんでだろう」とずっと考えた。なんで私に、そんなに会いたいんだろう。何か目的があるんじゃないか。


おかしい話だとは、わかってる。



誕生日を覚えていてくれた


付き合って3週間が経ったころ、彼からLINEが来た。


「今日、誕生日ですよね。おめでとうございます」


23時のLINEだった。私のプロフィールのどこかに書いてあったのか、以前の会話で出てきたのか、もう覚えていない。でも彼は覚えていた。それだけで胃のあたりがぎゅっとなった。


次に会った時、「今日しんどそう」と言われた。仕事でちょっとごたごたしていたことを話した記憶はあるけど、「顔に出てたんですね」と苦笑いしたら、「そういうの、ちゃんと気づきたいです」と言われた。


「何か食べたいものある?」と聞いてくれた。


嬉しかった。嬉しかったのに、どこかでずっと「何か裏があるんじゃないか」と疑っていた自分がいた。優しさを受け取るたびに、その裏側を探していた。



昔の話をすると、少し恥ずかしい


前の彼氏の話をすると、今でも喉の奥に何かつかえる感じがする。


26歳の時に2年付き合った人がいた。悪い人ではなかった。でも、誕生日を忘れることは当たり前で、私が「しんどい」と言えば「みんなしんどいじゃん」と返ってきた。「何が食べたい?」なんて聞かれたことは、たぶん一度もない。どこに行くか、何をするかは、だいたい彼が決めた。


それが「普通」だと思っていた。


正確には、それが「私に与えられるもの」だと思っていた。誰かに優しくしてもらうことへの期待を、いつからか手放していた。期待しなければ、傷つかないから。


だから彼みたいな人が現れた時、その優しさを素直に受け取るルートが、自分の中になかった。代わりに「どうして?」「なんで私に?」という疑問符が自動的に立ち上がった。受け取る前に、疑う。それが癖になっていた。



「信じてもらえますか、とは言えないけど」


ある日、中目黒を一緒に歩きながら、思い切って言った。


「優しくされることに慣れていなくて、疑ってしまうんです。ごめんなさい」


ちょっと沈黙があった。川沿いの風がうるさかった。


「そうなんですね」


怒らなかった。呆れた顔もしなかった。少し間を置いて「どんな経験があったか、教えてもらえますか」と聞いてくれた。


歩きながら話した。前の人のこと、「普通」だと思っていたこと、期待を手放した話。彼はほとんど口を挟まずに聞いていた。


「それはしんどかったですね」


その言葉だけで、ちょっと目が熱くなった。「えー、泣かないよ」と笑ってごまかしたけど、声がかすれた。


「でも」と彼が続けた。「私はそういうことをしないです。信じてもらえますか、ってことは言えないけど、見ててもらえたら、と思います」


言えないけど、見ててもらえたら。


その言葉が、妙にリアルだった。「絶対に傷つけない」じゃなくて、「見ててほしい」。証明しようとするんじゃなく、時間の中で見せていくと言っている。そういう誠実さを、私はそれまで受け取ったことがなかった。



「ありがとう」と言う練習


それからしばらく、意識的にやっていることがある。


優しくされた時に「なぜ?」と考えるより、先に「ありがとう」と言う。口に出す。


最初はすごく不自然だった。「ありがとう」と言いながら「でも裏があるかも」と考えている自分がいた。口と頭が一致していなかった。それでも続けた。言葉を先に出すと、少しずつ感情がついてくる。そういうものらしい、と気づいた。


具体的にやったのはこういうことだ。


1. 優しくされた瞬間に、まず「ありがとう」と声に出す。考えるのは後でいい。

2. 「なんで優しくしてくれるの?」という疑問が浮かんだら、「この人はそういう人なんだ」と一回置き換えてみる。

3. もし不安が続くなら、その不安を相手に正直に話す。「疑ってしまっている自分がいる」と言える関係かどうか、それ自体が相手を測るひとつのヒントになる。


3つ目が、私には一番しんどくて、一番効いた。



怖くて、安心


今は、優しくされることが少しずつ「普通」になってきた。


誕生日を覚えていてもらうことが、当たり前に嬉しい。「しんどそう」と気づいてもらうことが、ありがたい。「何食べたい?」に、ちゃんと「カレーが食べたい」と答えられる。


それが怖い、と思う時もある。こんなに誰かに慣れてしまっていいのか、という感覚。「普通」が崩れる時のことを、たまに考えてしまう。


でも同時に、ちゃんと安心している。


優しくされることに慣れていなかったのは、私の問題だった。過去の経験が作った、私の中の回路の問題だった。でもそれに気づけたのは、疑っている私に対して、怒らずに「見ててほしい」と言ってくれた人がいたからだ。


受け取ろうとする相手がいなければ、受け取る練習はできない。


差し出されたのに、受け取る手を開かなかった。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

#学び#優しさ#自己受容

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