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マッチングアプリ攻略

優しくされることに慣れていなかった、という話

「どうして私にこんなに優しくするんだろう」と疑ってしまった。優しさを受け取ることも、練習がいる。

·橘みあ·6分で読める

疑うことが、癖になっていた


Pairsで彼と話し始めたのは、去年の11月のことだった。


マッチングして最初のメッセージが「プロフィールの吉祥寺の写真、どこで撮ったんですか?」だった。変なナンパ文句でも、コピペの定型文でもない。ちゃんと私のことを見てくれたんだ、と思った。その時点で、ちょっと構えた。


3回のデートを経て、5回目に「もう少し会う頻度増やしたいんですけど、どうですか」と言われた。嬉しかった。嬉しかったはずなのに、家に帰ってから「なんでだろう」とずっと考えた。なんで私に、そんなに会いたいんだろう。何か目的があるんじゃないか。


おかしい話だとは、わかってる。



誕生日を覚えていてくれた


付き合って3週間が経ったころ、彼からLINEが来た。


「今日、誕生日ですよね。おめでとうございます」


23時のLINEだった。私のプロフィールのどこかに書いてあったのか、以前の会話で出てきたのか、もう覚えていない。でも彼は覚えていた。それだけで胃のあたりがぎゅっとなった。


次に会った時、「今日しんどそう」と言われた。仕事でちょっとごたごたしていたことを話した記憶はあるけど、「顔に出てたんですね」と苦笑いしたら、「そういうの、ちゃんと気づきたいです」と言われた。


「何か食べたいものある?」と聞いてくれた。


嬉しかった。嬉しかったのに、どこかでずっと「何か裏があるんじゃないか」と疑っていた自分がいた。優しさを受け取るたびに、その裏側を探していた。



昔の話をすると、少し恥ずかしい


前の彼氏の話をすると、今でも喉の奥に何かつかえる感じがする。


26歳の時に2年付き合った人がいた。悪い人ではなかった。でも、誕生日を忘れることは当たり前で、私が「しんどい」と言えば「みんなしんどいじゃん」と返ってきた。「何が食べたい?」なんて聞かれたことは、たぶん一度もない。どこに行くか、何をするかは、だいたい彼が決めた。


それが「普通」だと思っていた。


正確には、それが「私に与えられるもの」だと思っていた。誰かに優しくしてもらうことへの期待を、いつからか手放していた。期待しなければ、傷つかないから。


だから彼みたいな人が現れた時、その優しさを素直に受け取るルートが、自分の中になかった。代わりに「どうして?」「なんで私に?」という疑問符が自動的に立ち上がった。受け取る前に、疑う。それが癖になっていた。



「信じてもらえますか、とは言えないけど」


ある日、中目黒を一緒に歩きながら、思い切って言った。


「優しくされることに慣れていなくて、疑ってしまうんです。ごめんなさい」


ちょっと沈黙があった。川沿いの風がうるさかった。


「そうなんですね」


怒らなかった。呆れた顔もしなかった。少し間を置いて「どんな経験があったか、教えてもらえますか」と聞いてくれた。


歩きながら話した。前の人のこと、「普通」だと思っていたこと、期待を手放した話。彼はほとんど口を挟まずに聞いていた。


「それはしんどかったですね」


その言葉だけで、ちょっと目が熱くなった。「えー、泣かないよ」と笑ってごまかしたけど、声がかすれた。


「でも」と彼が続けた。「私はそういうことをしないです。信じてもらえますか、ってことは言えないけど、見ててもらえたら、と思います」


言えないけど、見ててもらえたら。


その言葉が、妙にリアルだった。「絶対に傷つけない」じゃなくて、「見ててほしい」。証明しようとするんじゃなく、時間の中で見せていくと言っている。そういう誠実さを、私はそれまで受け取ったことがなかった。



「ありがとう」と言う練習


それからしばらく、意識的にやっていることがある。


優しくされた時に「なぜ?」と考えるより、先に「ありがとう」と言う。口に出す。


最初はすごく不自然だった。「ありがとう」と言いながら「でも裏があるかも」と考えている自分がいた。口と頭が一致していなかった。それでも続けた。言葉を先に出すと、少しずつ感情がついてくる。そういうものらしい、と気づいた。


具体的にやったのはこういうことだ。


1. 優しくされた瞬間に、まず「ありがとう」と声に出す。考えるのは後でいい。

2. 「なんで優しくしてくれるの?」という疑問が浮かんだら、「この人はそういう人なんだ」と一回置き換えてみる。

3. もし不安が続くなら、その不安を相手に正直に話す。「疑ってしまっている自分がいる」と言える関係かどうか、それ自体が相手を測るひとつのヒントになる。


3つ目が、私には一番しんどくて、一番効いた。



怖くて、安心


今は、優しくされることが少しずつ「普通」になってきた。


誕生日を覚えていてもらうことが、当たり前に嬉しい。「しんどそう」と気づいてもらうことが、ありがたい。「何食べたい?」に、ちゃんと「カレーが食べたい」と答えられる。


それが怖い、と思う時もある。こんなに誰かに慣れてしまっていいのか、という感覚。「普通」が崩れる時のことを、たまに考えてしまう。


でも同時に、ちゃんと安心している。


優しくされることに慣れていなかったのは、私の問題だった。過去の経験が作った、私の中の回路の問題だった。でもそれに気づけたのは、疑っている私に対して、怒らずに「見ててほしい」と言ってくれた人がいたからだ。


受け取ろうとする相手がいなければ、受け取る練習はできない。


優しさは、差し出されるだけでは完成しない。受け取る側が、手を開かないといけない。

よくある質問

優しくされることに慣れていないのはなぜ?
幼少期の環境や過去の経験により、親密な関係で優しさを受け取ることへの抵抗感が生まれることがあります。無意識に相手の優しさを疑ったり、理由を探したりする心理的パターンが形成されている場合が多いです。
優しくされると疑ってしまう心理は治せる?
はい、練習と認識で改善できます。相手の優しさを意識的に受け入れる練習、自分が優しさに値する存在だと認める認知の転換が重要。カウンセリングも効果的です。
優しさを素直に受け取るにはどうしたらいい?
小さな優しさから受け取る練習を始めましょう。相手の優しさの動機を疑わず、「ありがとう」と言葉で受け取り、自分の価値を信じることが大切。段階的な慣れが効果的です。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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