恋のアーカイブ
マッチングアプリ攻略攻略ガイド

早めに気づいたはずのサインを、見逃し続けた話

1回目のデートで、店員への態度が一瞬だけ変わった。私はそれを飲み込んだ。「まあこういう日もある」と。でもあの「ちょっと気になる」は、全部サインだった。早めに気づいていたはずのことを、なぜ見逃し続けたのか。

27歳・女性の体験
·橘みあ·7分で読める

1回目のデートで、店員への態度が一瞬だけ変わった。


消えないはずだった、「ちょっと気になる」


最初に気になったのは、1回目のデートだった。


恵比寿のイタリアンで、彼がワインを注文するとき、店員さんへの声のトーンが明らかに変わった。さっきまで私に向けていた穏やかさが、すっと引いていくような感じ。注文が終わるとまた戻ってきて、「ここのカルボナーラ、マジでうまいんだよ」って笑顔で言った。


私はその一瞬を、飲み込んだ。


「まあ、こういう日もあるよね。仕事で疲れてたのかも」


そうやって、自分の感覚にふたをした。初めての夜だった。



「でも」という名の消しゴム


2回目のデートで、前の彼女の話が始まった。


中目黒の川沿いを歩きながら、気がついたら1時間、元カノの話を聞いていた。「俺は悪くなかったんだよ、向こうが急に変わって」「俺のこと全然わかってくれなかった」——そんな言葉が、桜の木の下でずっと続いた。


「傷ついてるんだな」と思った。正直そう思っていた。同時に、胸のあたりがじわりと重くなっていたのも事実で。でも私は「過去を話してくれるくらい、信頼されてるってことかも」と解釈した。


3回目に会う予定だった日曜日の朝11時、「今日やっぱり無理。ごめん」とLINEが届いた。待ち合わせ2時間前。すでに下北沢に向かう電車の中だった。スマホを持つ手が、少しだけ強張った。


「なんかあったんだろう。仕方ない」


そう返信して、そのまま一人でレコード屋を回った。楽しくなかった。楽しくなかったのに、「大丈夫、気にしてないよ」と彼に送った。


気になることが出てくるたびに、私は「でも」をつけた。「でも優しいところもある」「でも一緒にいると楽しい」「でも気が合うから」「でも私が好きだから」。


「でも」は消しゴムだった。「ちょっと気になる」という感覚を、そのたびにきれいに消してしまう。消えた気になっていたけれど、実際は消えていなかった。ただ、見えなくなっていただけで。



4ヶ月目に変わったこと


付き合い始めて4ヶ月が過ぎた頃、私はOmiaiのアプリをこっそり開いていた。別れようとしていたわけじゃない。なんとなく、のぞきたくなっただけ。でも「なんとなく」なんて理由でマッチングアプリを開く人は、たいてい「なんとなく」じゃない何かを感じている。


彼との会話は続いていたし、週に2回は会っていた。でも私は毎回、何かを少しだけ我慢していた。


「この話、もう少し聞いてほしいな」と思っても言えなかった。

「それはちょっと傷ついた」と思っても言えなかった。

「当日キャンセルはきつい」と思っても言えなかった。


言えなかった理由は、怖かったから。「そんなこと気にするの?」って思われたくなかった。「重い」って感じさせたくなかった。「この子とは合わないな」って思われたくなかった。


好きだったから、全部飲み込んだ。飲み込み続けた。



半年後の、たった一言


別れる2週間前の夜、23時のLINEで彼から「最近どう?」と来た。「元気だよ、どうしたの?」と返したら、既読がついて、返信が来たのは翌朝だった。


別れ話は吉祥寺のカフェで、5回目のデートの帰りだった。「俺たち、なんかうまくいってなくない?」という言葉から始まった。


「あなたはいつも我慢してるよね」と彼が言った。


それはそうだ、と思った。喉の奥に何かがつかえた感じがして、でも泣けなかった。我慢させたのはどっちだ、とも思ったけど、言葉にならなかった。


27歳の秋に始めて、28歳の春に終わった関係。最後まで、私は「ちょっと気になる」を声に出せなかった。



サインは積み重なっていた


別れてしばらく経ってから、友達に「なんで言わなかったの?」と聞かれた。


「えー、言えなかった」としか答えられなかった。


でも本当は、「言ったら嫌われる」じゃなくて、「言って確かめるのが怖かった」んだと思う。サインに気づいていたけど、確認することで「やっぱりそういう人だ」とわかってしまうのが嫌だった。知らないままでいれば、まだ好きでいられると思っていた。


「ちょっと気になる」は、消えるものじゃない。積み重なるものだった。


1回目に飲み込んで、2回目に飲み込んで、3回目に飲み込んで——そのたびに、関係のどこかが少しずつ削れていた。彼への信頼が削れるんじゃなくて、自分の感覚への信頼が削れていった。「私が気にしすぎなのかな」「こんなことで不満に思うのはおかしいのかな」って、自分でジャッジするようになっていた。



今の私が試していること


あの経験のあと、Pairsで出会った人と今も連絡を取っている。まだ付き合ってはいないけど、先週初めて「あのLINEの返し方、ちょっと気になったんだけど」と正直に送ってみた。


「マジで?ごめん、どういう感じで気になった?」とすぐ返ってきた。


それだけで、ずいぶん違った。


気になることを声に出せる相手かどうか、気になることを言ったときにどう反応するか——これが今の私の、最初の見極めポイントになっている。


具体的に試しているのは、こんなことだ。


1. 「気になること」が出たら、その場でメモする。LINEの下書きでもいい。頭の中だけで処理すると、「でも」で上書きしやすくなる。

2. 「気になる」と「嫌い」を分けて考える。気になることがあっても、その人が嫌いなわけじゃない。でも、気になることを伝える価値はある。

3. 相手の反応を怖がらない練習をする。「重いと思われたくない」は自分の都合で、相手がどう思うかは言ってみないとわからない。


「正直に言ってみる」という行為が、相手を信頼することだと今は思っている。黙って飲み込み続けるのは、相手を信頼しているんじゃなくて、自分の感覚を信頼していなかった。



---


「気になる」に気づいた瞬間が、関係を変えられる唯一のタイミングだったかもしれない。全部が終わってから気づいても、もうそこには戻れない。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

この記事が刺さったら、シェアしてください

あなたへのおすすめ

学び」に興味があるあなたへ

第一印象で「違う」と思った人と付き合った話
マッチングアプリ攻略

第一印象で「違う」と思った人と付き合った話

Pairsで出会った彼のプロフィールを見たとき、悪くないけど「ピンとくる」感じはなかった。なんとなく「まあ会ってみるか」で恵比寿のカフェへ行った。第一印象で「違う」と思った人と付き合った話、3回会って全然違う人だとわかるまで。

女性27歳
7
喧嘩の後72時間連絡できなかった夜。後悔して仲直りを変えた話
マッチングアプリ攻略

喧嘩の後72時間連絡できなかった夜。後悔して仲直りを変えた話

withで知り合って4ヶ月の彼と喧嘩して、72時間連絡できなかった。プライドより関係が大事だとわかっていたのに、謝るのが遅すぎた。喧嘩の後の仲直りが下手だった私が変えたこと——カップルが関係を壊さずに立て直す方法。

女性27歳
7
3年続いた関係で学んだ夜。後悔しないためにしていたこと
マッチングアプリ攻略

3年続いた関係で学んだ夜。後悔しないためにしていたこと

Omiaiで知り合って最初のデートは三軒茶屋のカフェだった。3年間付き合い続けた。マンネリを乗り越えて長続きできた理由を「相性がよかったから」では終わらせずに、実際にしていたことを体験から具体的に振り返る。

女性27歳
4
期待しすぎて後悔した夜、消化できていない話
マッチングアプリ攻略

期待しすぎて後悔した夜、消化できていない話

「誕生日くらいはサプライズしてくれるだろう」と思っていた。当日、普通の夜ご飯だった。傷ついてから気づいた——サプライズしてほしいと一度も伝えていなかった。期待しすぎて傷ついた経験から、期待のコントロールを学んだ話。

女性27歳
4
両思いのサインを夜中に後悔しながら分析した話
マッチングアプリ攻略

両思いのサインを夜中に後悔しながら分析した話

深夜1時、LINEのトーク画面を上から下までスクロールして、既読の速さとスタンプの数を数えていた。「両思いかどうか」を確信する方法。Pairsで見落としやすい本当のサインと、わかりやすいサインを信用しすぎる落とし穴。

女性Pairs|27歳
4
自己肯定感が低かった夜、後悔した恋の話
マッチングアプリ攻略

自己肯定感が低かった夜、後悔した恋の話

Pairsで初めて告白された夜、嬉しいよりも先に「なんで?」が頭を占領した。笑顔で「ありがとう」と言いながら、喉の奥に何かがつかえた。自己肯定感が低かった頃の恋愛がなぜうまくいかなかったか、27歳の私が辿り着いた答え。

女性27歳
6

マッチングアプリ攻略」はまだ 397 本あります

次の記事

クリスマスの夜、予告なしで花を持ってきた人。後悔しそうで、してない