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恋愛体験談エッセイOmiai

同じ会社の先輩をOmiaiで見つけた夜、後悔しなかった話

朝9時の東京メトロでこっそりOmiaiを開いたら、隣の部署の先輩が出てきた。スワイプして、マッチングしないでくれと祈って、それでも午後2時に通知が来た。あの月曜から廊下の「お疲れさまです」の意味が変わった、職場恋愛体験談。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

正直に言う。先輩をOmiaiで見つけたのに、月曜の朝に会った。


吊り革を片手で掴んで、もう片手にスマホ。画面の明るさを落として、こっそりOmiaiを開く。これがここ数ヶ月の朝の習慣だった。誰かに見られているかもしれないとわかっていても、やめられない。満員電車の中の小さな画面の中だけに、何か別の世界への入り口があるような気がして。


スワイプ、スワイプ、スワイプ。


止まった。


胸の奥で何かが、音もなく落ちる感覚があった。見覚えのある顔。いや、「見覚えのある」なんてものじゃない。毎週2〜3回、廊下ですれ違う人の顔だ。名前だって知っている。隣の部署の、田中さん。たまにエレベーターが一緒になって、「お疲れさまです」「お疲れさまです」と言い合って、それだけで終わる。それだけの関係の人の顔が、今、私の右手の親指の前にある。


月曜の朝の電車で


左にスワイプしようとして、止まった。


なぜか読んだ。プロフィールを、最後まで読んだ。趣味:登山、読書、映画鑑賞。休日の過ごしし方:近所の公園を散歩、ときどき友達と鍋。「誠実な人が好きです」。


登山、か。知らなかった。


廊下で見るときは、いつもスーツを着ていて、少し猫背で、でも歩くのが早くて。休日に山に登る人だなんて、考えたこともなかった。そんな当たり前のことが、なんだか胸に引っかかった。人って、知らない顔を持っている。毎日すれ違っていても、全然知らないままでいられる。


右にスワイプした。


電車がゆっくりと大手町に滑り込む。扉が開いて、人の波に押し出される。改札を抜けて、地上に出たら、空は鉛色だった。今日は雨になるかもしれない。「どうかマッチングしないでくれ」と、灰色の空に向かって、声に出さないままで思った。


オフィスに着いて、パソコンを立ち上げて、メールを確認して、会議に出て、ランチを食べて、また会議に出て。


通知が来ていた


午後2時。


気がついたらOmiaiを開いていた。


通知が来ていた。


心臓が、跳ねた。文字どおり跳ねた感じがした。胸の中で何かがバウンドして、喉のあたりまで上がってくる。画面を閉じた。深呼吸した。もう一度開いて、また閉じた。


「どうする」


声に出すと、気持ちが現実になる気がして、心の中だけで繰り返した。どうする、どうする。同じ会社。廊下ですれ違う。「お疲れさまです」しか言ったことがない。それで十分だったはずなのに。十分だと思っていたのに。


退勤時間、エレベーターホールで先輩と目が合った。


「お疲れさまです」


「お疲れさまです」


どちらも、普通の顔をしていた。たぶん。でも、私は「たぶん」しか言えない。自分の顔が今どういう表情をしているのか、全然わからなかったから。エレベーターの扉が閉まってから、息を吐いた。知らないうちに、ずっと息を止めていたらしかった。


その夜、渋谷の自室で、ユニクロのパジャマを着たまま、1時間スマホを見つめた。


Spotifyでtofubeatsの「水星 feat.オノマトペ大臣」をリピートしながら、何度もメッセージの文面を書いては消した。「はじめまして」——違う、知ってる。「突然ですが」——唐突すぎる。「同じ会社だと気づきました」——そんなの向こうだってわかってる。


結局、送ったのはこれだった。


「突然で驚かれたかもしれないのですが」


送信ボタンを押したあと、スマホを伏せてベッドに倒れた。天井のシミを数えながら、この先起こりうるあらゆる最悪の展開を頭の中で上映した。無視される。月曜に廊下ですれ違ったとき気まずくなる。なんとなく噂になる。私が変な人だと思われる。好きでもない人にスワイプしてしまったことを後悔する未来。


翌朝の返信


翌朝、起きたら返信が来ていた。


「驚きました。でも、悪くないと思っています」


読んで、もう一度読んで、三回目に読んだとき、口の端が勝手に上がった。「悪くない」。そのぶっきらぼうな言葉が、すごく、その人らしかった。会ったこともないのに「らしい」と思ってしまった。プロフィールの「誠実な人が好きです」という一行と、この「悪くない」という返信が、頭の中でつながった気がした。


それで十分だった。


その後2週間、アプリのメッセージでやりとりした。映画の話をした。先輩がよく行く吉祥寺のミニシアターの話を聞いて、私が好きな監督の話をした。テキストの向こうに、廊下を歩く猫背の姿が重なって、でも廊下の先輩とアプリの「田中さん」は、なぜかまだ別の人みたいな感覚があった。


遠い駅のカフェ


初めて会ったのは、会社の近くじゃない駅のカフェだった。どちらともなく、遠い場所を選んだ。


座ってすぐ、先輩が言った。


「アプリで見たとき、どうしようかと思った」


「私も」


それだけで笑ってしまった。ふたりで。お互いが同じことを考えていたと知って、なぜか少し、楽になった。


3ヶ月後、付き合い始めた。


会社には誰にも言っていない。これからも、たぶん、しばらくは言わない。それでいいと思っている。廊下で目が合って「お疲れさまです」と言うとき、向こうの目の奥に何かが見える気がする。見えない、かもしれない。でも、私には見える。


先週、先輩が登山に行ってきたと言っていた。奥多摩。写真を見せてもらったら、山頂で猫背のまま立っていて、でもすごく遠くを見ていた。


その顔を、廊下では見たことがなかった。


まだ知らない顔が、きっとたくさんある。それが、続けていく理由になっている。


秘密は重さじゃないのに、ふたりだけの体温になった。

よくある質問

同じ会社の先輩とどんな状況でマッチングしたのですか?
通勤電車の中でOmiaiをこっそり開いていたところ、隣の部署の先輩が出てきたとあります。右にスワイプして、マッチングしないでくれと祈っていたとのことです。
午後2時に通知が来たとありましたが、その後どうなったのですか?
マッチングしてしまったとのことです。それ以来、廊下での「お疲れさまです」の意味が変わったと書かれています。
職場の先輩との関係はその後どう展開したのですか?
記事の詳細は書かれていませんが、アプリで先輩を見つけた月曜日から、廊下でのすれ違いに別の感情が生まれた関係の変化が描かれています。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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