3つのアプリを全部退会した日。私はいったい何から逃げたかったのか
Pairs・Tinder・with。全部退会するまでの1年間と、退会ボタンを押した夜のこと。
Pairs・Tinder・with。3つのアプリを全部退会した夜、私は吉祥寺の自室でひとり、スマホの画面をしばらく眺めていた。
退会完了、という無機質な文字列。
何かが終わった感じも、解放された感じも、正直よくわからなかった。ただ、喉の奥に小さな石が落ちていくような、そういう感触だけがあった。
マッチングアプリを始めた理由なんて、たいしたものじゃなかった
26歳の秋にPairsを入れたのは、職場の同期が「付き合った」と言ったからだ。「えー、アプリで?」と聞いたら「マジで普通だよ今」と返ってきて、その夜にダウンロードした。深い理由なんてない。
最初の1ヶ月は楽しかった。プロフィールを何度も書き直して、写真を撮り直して、「いいね!」が来るたびに少しだけ心が弾んだ。中目黒のカフェでお茶した人、恵比寿で夜ごはんを食べた人、渋谷のバーで終電を逃した人。会うたびに「この人かもしれない」と思って、違うとわかるたびに少しずつ何かを削られていく感覚があった。
それでも続けた。やめる理由がなかったから。
Tinderを入れたのは「もっと気楽にやりたかった」から
Pairsに疲れてきた頃、Tinderを入れた。「真剣交際を求めてないから楽かも」と思ったのが正直なところだ。実際、最初の数週間はそうだった。重くない会話、深夜のやり取り、なんとなく続くテキスト。
でも3ヶ月目に、ちょっと好きになった人が突然既読無視になった。5回メッセージを送った。返事は来なかった。
別にTinderだから傷つかない、なんてことはなかった。
「気楽なアプリ」を使っても、感情まで気楽にはならない。それを知ったのは、下北沢のドラッグストアでマスカラを買いながら急に泣けてきたときだった。なんで泣いてるのかわからなかった。疲れていたんだと思う。
withを入れたのは「相性重視なら違う」と思ったから
「心理テストで相性がわかる」という触れ込みに引きつけられてwithを入れたのは、Tinderを入れてから4ヶ月後だった。この頃には3つのアプリを同時に使っていた。
朝起きて通知を確認して、昼休みにメッセージを返して、夜は誰かとやり取りしながら眠る。そういう生活が「普通」になっていた。
withで出会った人と、6回デートした。背が高くて、話が面白くて、渋谷の映画館で肩が触れた瞬間に「あ、好きかも」と思った。23時のLINEが続いて、2ヶ月目に「会う頻度を増やしたい」と送ったら、「今ちょっと忙しい時期で」という返信が来た。
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そのまま自然消滅した。
喉の奥が痛かった。泣きたいのに泣けない、あの感じ。
マッチングアプリ退会を考え始めたのは、ある夜の自分の行動がきっかけだった
体験談として正直に書くと、退会を決めた直接のきっかけは劇的なものじゃない。
ある土曜日の夜、特に予定もなく、3つのアプリを順番に開いて、特に誰かに会いたいわけでもないのにスワイプしている自分に気づいた。手が勝手に動いていた。習慣になっていた。
「私、何してるんだろう」
声に出して言ったら、少し笑えた。でもすぐに笑えなくなった。
1年近くアプリを使って、数えていないけど20人以上とやり取りして、会ったのはたぶん15人くらいで、付き合った人は0人。数字だけ見れば「うまくいっていない」けど、それが問題なんじゃなかった。問題は、いつの間にかアプリを開くこと自体が目的になっていたことだった。
誰かに会いたくて開いているんじゃなくて、開かないと不安だから開いている。
その違いに、1年かかって気づいた。
退会ボタンを押した夜のこと
27歳になって2週間後の、火曜日の深夜だった。
Pairsの退会ページは少しわかりにくかった。with は比較的すっきり退会できた。Tinderはあっさりしていた。3つ全部が退会完了になるまで、たぶん20分もかかっていない。
画面を閉じて、天井を見た。
何かすごいことをした気がしなかった。解放感とか、達成感とか、そういうものを期待していたわけじゃないけど、それにしても静かだった。ただ静かだった。
次の朝、起きてスマホを見ると通知がなかった。当たり前なのに、少しだけ胸がちくっとした。
退会して3ヶ月後、気づいたこと
退会から3ヶ月が経った今、思うことがある。
あの1年間、私は誰かを探していたんじゃなくて、たぶん「選ばれる自分」を確認し続けていたんだと思う。いいねが来たとき、マッチしたとき、デートの約束が取れたとき。それを積み重ねることで、自分が「大丈夫」かどうかを測っていた。
恋愛じゃなくて、自己確認をしていた。
「もっと自分を磨いてから戻ってくればいい」とか「しばらく休んでリセットしたら絶対いい出会いがある」とか、そういうきれいなまとめ方はしたくない。正直、今もよくわからないから。また使う気がするときは使えばいいし、使いたくなければ使わなくていい。
ただ、あの火曜日の深夜に退会ボタンを押したのは正解だったと、今は思っている。逃げとか休息とかじゃなくて、単純に「今の自分にはいらない」とわかった瞬間があったから。
それだけで、十分な理由だった気がする。
やめどきがわかる人間は、始めどきもわかる。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。