恋のアーカイブ
マッチングアプリ攻略

「なんで私が好きなの?」と3回聞いた夜、彼はもう答えてくれなかった

愛されるたびに怖くなった。信じたいのに信じられなくて、先に傷つけることで自分を守った。3年間の恋愛を振り返って気づいた、あのころの私にできた唯一のこと。

·橘みあ·6分で読める

渋谷のスクランブル交差点を、手をつないで渡ったことがある。


人混みの中で彼が少し強く握ってきて、私は「あ、はぐれないようにしてるだけだ」と思った。あとで「あそこ好きなんだよね、ふたりで歩くの」って言ってくれたのに、その言葉も素直に受け取れなかった。


そういう3年間だった。


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付き合い始めて最初の数ヶ月は、終わりを探していた。


LINEの返信が少し遅いと「冷めてきたのかな」と思う。誘いを断られると「本当は会いたくないんだ」と解釈する。褒められると「お世辞だ」と処理する。褒められなくても「やっぱり魅力がないんだ」と落ち込む。どっちに転んでも、答えはいつも「私はダメだ」に着地するようにできていた。


彼は優しい人だった。怒鳴ったり、無視したりするタイプじゃない。だからこそ、私の中の「どうせ」が行き場をなくしてぐるぐるした。


「なんで私が好きなの?」


初めて聞いたのは付き合って2ヶ月のとき。代官山のカフェで、向かいに座りながら。彼は少し驚いた顔をして、それでも「一緒にいると楽しいから」と言った。


私は「ふーん」と相槌を打って、心の中では「楽しいだけか」と思っていた。


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自分が信じられないと、相手のことも信じられない。


これ、頭ではわかってたんだと思う。でも当時の私は「これが普通の感覚なんだ」と信じていた。むしろ疑わない人のほうがおかしい、警戒心が薄いだけ、くらいに思ってた。


付き合って1年が過ぎたころ、彼の友達と4人で飲む機会があった。そのとき彼が私の話をしていて、「こいつほんと面白いんだよ」って笑いながら言ってくれた。


友達は「いい子じゃん」と言った。


私はトイレに立って、鏡の前でしばらく自分の顔を見た。泣きそうになってた。なんで泣きそうになってるのか、自分でもわからなかった。誰かに面白いって言ってもらえることがこんなに怖いとは思ってなかった。


期待させてしまう、みたいな感覚だったのかもしれない。


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2年目に入って、私は先に距離を置き始めた。


意識してやってたわけじゃない。ただ、「このまま好かれ続けたら、いつか本当の私を見てがっかりされる」という予感がずっとあって。それなら先に少し冷たくしておけば、傷が浅いうちに終わる。そういうロジックが体に染み付いてた。


返信を意図的に遅らせた。会う約束を曖昧にした。「最近元気?」と聞かれて「まあ」とだけ答えた。


彼はそれでも連絡してきた。何度か「なんかあった?」と聞いてきた。私は「なんもないよ」と返して、「でもやっぱり気にしてくれてる」と安心して、次の日にまたそっけなくした。


ひどかったと思う。本当に。


「なんで私が好きなの?」


2回目に聞いたのはそのころ。彼は「前も聞かれたよな、それ」と言った。


「また聞きたくなったんだよ」


「……俺じゃ答えになんない?」


その言葉が、今でも頭に残ってる。


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3年目の秋、Spotifyで「YOASOBI」の「もし君が泣くなら」がたまたまかかって、私は運転中に急に視界がぼやけた。


曲のせいじゃなかったと思う。ただタイミングだった。


信号が赤になって、ハンドルに額をつけて、「私ずっと彼のこと好きだったんだな」ってやっと気づいた。好きだから怖かった。好きだから終わりを探してた。愛されることへの恐怖と、愛されたいという渇望が同じくらい大きくて、私はその間でずっと立ち止まってた。


気づいたところで、何かが変わったわけじゃない。


「なんで私が好きなの?」


3回目を聞いたのは別れる少し前。


彼は今度は少し時間をかけて、「……わかんなくなってきた」と言った。


私は「そっか」と言って、それ以上何も言えなかった。


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別れてから1年以上経った今、あのころの自分を責める気持ちは薄れてきた。最初はずっと責めてた。なんであんな態度をとったのか、なんで素直にできなかったのか。


でも最近は少し違う角度から見られるようになった。


あのころの私は、愛されることの重さに耐えられなかっただけだ。自分を好きじゃない人間が「好きだ」と言われ続けるのは、想像よりずっとしんどい。「あなたは価値がある」という言葉を受け取る器が、私の中にまだなかった。


だから疑って、距離を置いて、先に傷つけた。


そうするしかなかったんだと思う。あのときの私には、それしかできなかった。


彼のことは今も好きだったし、傷つけたことも申し訳ないと思ってる。でもあのふたつの気持ちは、どちらかを消さなくてもいい気がしてる。


自己肯定感って、急に高くなるものじゃない。誰かに「あなたは素晴らしい」と言われて翌日から変わるわけでもない。代官山のカフェでの「楽しいから」が、スクランブル交差点の手の握り方が、あの「俺じゃ答えになんない?」という言葉が、全部ゆっくりと積み重なって、今ようやく少しだけ受け取れるようになってきた気がする。


あのころを後悔するより、あのころの私を抱きしめてやりたい。


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愛される練習を、誰も教えてくれなかっただけだ。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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