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恋愛体験談エッセイ

料理教室でマッチングした人と、家で初めて料理を作った夜

「ぜひ教えてほしいです」と送ったのは完全にノリだった。でも彼女は金曜の夜、本当にエコバッグ二つ持って来た。キッチンで肩が触れたあの瞬間のことを書く。金曜日の夜、玄関のチャイムが鳴った瞬間、心臓が跳ねた。

26歳・女性の体験
·橘みあ·6分で読める

「今から行きます」のLINEで、全部が変わった。


ドアを開けたら、エコバッグを二つ持った女の子が立っていた。Pairsで知り合った咲、27歳。「料理教室に通ってます」というプロフィールに「ぜひ教えてほしいです」と送ったのは、完全にノリだった。でも彼女は本当に来た。


話を巻き戻す。


Pairsでのメッセージは最初の一言が全てで、どうせなら普通じゃないことを言おうと思った。「いいねありがとうございます」「プロフィール拝見しました」ではなく。「教えてほしいです、マジで。イタリア料理は難しくて自分では無理でした」という一文を送った。


返信は3時間後に来た。「難しいですか?笑 私が教えてあげましょうか」。


返事の「笑」に、少しほっとした。胸が少し緩んだ。真剣に受け取られすぎてもどうかと思っていたから。


カチャトーラを一緒に作る約束


彼女——咲、27歳——とのやりとりは最初から料理の話ばかりで、途中から本当に料理を教えてもらう約束になっていた。「どこかで会って」という流れではなく、「家で実際に作る」という着地点になったのは、お互い自然にそうなった感じだった。


「何が得意ですか?」と私が聞いたら、「最近はカチャトーラを練習してます」と来た。「肉の煮込みのやつですよね。それにしましょう」と言ったら「いいですよ。材料何が家にありますか」とすぐ話が進んだ。


食材は事前にリストを送ってくれた。「鶏もも肉、トマト缶、玉ねぎ、セロリ、オリーブオイル、ワイン(赤)、ローズマリーかタイム」。「全部買います」と返したら「私も追加で何か買っていきます」と来た。「いいですよ」「気になるので」。こういう返し方をする人、好きだと思った。


キッチンで肩が触れた夜


会ったのは金曜日の夜。


玄関で「いらっしゃいませ」と言ったら笑われた。エコバッグを二つ持っていて、「食材、追加で買ってきました」と言う。「え、私が持ってきましたよ」と言ったら、「私の方が安心なので」と平然と答えた。


靴を脱いで上がって、キッチンを見て、「広い」と言われた。そんなに広くない。でも彼女がそう言ったから、少し嬉しかった。


エプロンを2枚出した。自分のと、用意していたやつ。「気が利く」と言われた。「一応」と答えた。


料理が始まった。


彼女は手際が良かった。玉ねぎを刻む速さ、セロリの切り方、トマト缶を開けるタイミング。全部に迷いがなかった。私は言われた通りに動いた。「鶏肉、塩とこしょうで下味つけてください」「ワイン、これくらい入れて」。指示が具体的で、わかりやすかった。


キッチンは狭い。隣に立つと、肩が触れる距離だった。触れるたびに、耳が熱くなった。彼女の横顔が近かった。真剣な顔で鍋をかき混ぜていた。彼女の髪からシャンプーの香りがして、息が浅くなった。料理している人の顔って、こんな感じなんだ、と思った。集中していて、でも楽しそうで、ときどき独り言みたいに「うん、いい感じ」と言った。


トマトとワインの匂いが部屋に広がった。美味しそうな匂い。でもそれより、彼女がそこにいる、という感覚の方が強かった。


「少し煮込みます。15分くらい」


「ワイン、飲みますか」


「飲みます」


コンロの火を弱めて、2人でリビングに移った。赤ワインをグラスに注いで、向かい合った。


「料理、教えてもらってよかったです」


「まだ完成してないですよ」と彼女が言った。「でも雰囲気で」と私は言った。


カチャトーラの味と、その後


完成したカチャトーラは、本当に美味しかった。


トマトの酸味とワインの香り、鶏肉がほろほろで、セロリの香りが全体をまとめていた。「これ、自分で作れます?」と聞いたら「レシピ送ります」と言われた。「でも一人で作っても半分も美味しくない気がします」と言ったら、「また教えに来ます」と返ってきた。


食器を洗って、ワインの残りを飲んで、23時を過ぎていた。彼女が帰り支度を始めた。エプロンを外して、バッグを持って。玄関で「楽しかったです」と言った。「また来てください」と言った。


ドアを閉めた後、台所に残ったカチャトーラの匂いの中で、しばらく立っていた。手のひらがまだ温かかった。彼女がいた場所の空気が、まだそこにあるような気がした。


あの夜から3ヶ月後、付き合った。最初のメッセージから数えると、4ヶ月だった。料理を教えてもらうところから始まって、今は隣で寝ている。


ノリで送ったのに、人生が変わる一言になっていた。

よくある質問

どのアプリで知り合ったのですか?
Pairsです。「イタリア料理教室に通ってます」というプロフィールを見て「ぜひ教えてほしいです」とメッセージを送ったのが始まりで、相手が「私が教えてあげましょうか」と返してきたとのことです。
実際に家で料理を作ることになったのはどういう経緯ですか?
最初のメッセージをきっかけにやりとりが続き、実際に彼女の家で一緒にイタリア料理を作ることになったようです。「教えてほしい」という軽い一言が、そのまま本当のことになりました。
その夜、どんな料理を作ったのですか?
タイトルに「家で初めて料理を作った夜」とあり、イタリア料理を作ったことが示されています。慣れない料理を二人で作る緊張感と距離感が、この体験談の中心になっています。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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